GMPとSCP、そしてHACCP

食品化学新聞 リレーシリーズ  No.239 2006年2月23日掲載

西川研次郞 技術士(水産/総合技術監理部門) 西川技術士事務所

GMP (Good Manufacturing Practice ) は適正製造基準(または規範)と訳され、昔から食品製造工場における衛生管理の基準とされてきた。我が国にはGMPの名称のついた規則は無いが、GMPに相当する規則としては、昭和47年(1972)制定の管理運営基準を平成16年(2004) 2月9日に改正した「食品等事業者が実施すベき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」がある。このガイドラインは、食品衛生法第50条第2項に基づき都道府県等が営業施設の衛生管理上講ずべき措置を条例 (遵守義務がある) で定 める場合の技術的助言を示したものであるから、我が国のGMPといえよう。

ガイドラインもそうであるように、 GMPは基準であるため、「…すること」という遵守すべき要件の記述になっている。しかし実際の製造作業で必要なことは、どのような手段で要件を遵守するかである。食品製造業者は、GMPを遵守していることを第三者に証明しなければならないので遵守記録の作成が必要となるが、GMPは記録作成の具体的やり方までは示していないため、ほとんどの食品製造業者のもとにある記録は、実行した本人のチェック記録 (証明にならない)ではなかろうか。証明となる記録は、GMPを遵守していることを、実行した本人以外の人が確認してチェックしたものでなければならない。

製造現場におけるGMPの中心はサニテーションである。サニテーションがどのように実施され、 GMPを遵守しているかを証明する手順を示したSCP (Sanitation Control Procedures 衛生コントロール手順) である。即ちGMPは基準であり、その基準を満たす方法を示したのがSCPであるから、GMPとSCPは表裏一体のものである。

SCPという用語は我が国ではなじみが薄く、なじみがあるのはSSOP (Sanitation Standard Operating Procedure 衛生標準作業手順) という用語である。
SCPとSSOPはよく似ているので、混同されることが多いが、以下に示すようにSSOPはSCPの構成要素の一つなのである。即ちSCPは ―(1) コントロールする衛生分野についてSSOP を作成する。 (2) SSOPに従ってサニテーションを実施する。(3) 実施された後の衛生状態をモニタリングする。(4) モニタリングの結果をチェックリストに記録する。―の4 手順から構成されている。

コントロールする衛生分野とは、いわゆる一般的衛生管理として古くから我が国の食品工場で実施されてきたものであるが、具体的にうまくまとめてあるのは米国FDA の規則に示されている8 項目の衛生分野である。
我が国の食品工場においてもこの8分野について SCPを実施することを推奨したい。それは、前述のガイドラインの中のサニテーションに関する要件を満たすことになると考えるからである。

食品の安全性は、食品工場におけるGMPとHACCPの実施で担保される。よく見かけるGMPとHACCPの関係を示した三角形の図では、土台の部分がGMPで、 頂上の部分がHACCP になっている。そのため、GMPは HACCP導入のための前提条件と誤解し、GMPが実施されないとHACCPに 進めないと思っている人が多い。しかし、GMP とHACCPの関係はそのような上下関係にあるのではなく、同一レベルにあってSCPを介して互いに手をつないでいるものなのである。即ち、GMPと HACCPは互いに補完しあって食品の安全性を確保しているのである。

2006年1月1日からEUではすべての食品に対しHACCPが義務になった。世界の趨勢は HACCPの義務化に向かっていると思う。GMPとSCP、そしてHA CCPとの相互関係を正しく理解して実行することが安全な食品の製造につながるのである。

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専門分野は、食品工場が衛生管理を正しく行い、利益を生み出す方策の指導。

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