メタボローム解析技術の食品・健康分野への活用展開

山領 佐津紀氏
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
  ヘルスケア事業部ヘルスケアセールス部部長  

 

 本日の講演者は、とっても個性的なすてきな演者でした。名刺の裏には、踏破した山の名の名前がずらり。経歴も個性的で、大学では農学部でウイルス学をしていたが、しゃべるのが好きで、研究職より営業職を選んで、最初に入ってしまったのが大田市場野菜のセリ人、こんなはずではなかったと思いながらも毎朝元気に競りをこなしていた。そこへ縁あって、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社(以下HMT)から声がかかった。

 HMT社は、慶応大学発のベンチャー企業で山形県鶴岡市に拠点を持つ。この地は、慶應義塾大学鶴岡タウンキャンパスとして大学とともに発展しつつあるところだ。HMT社は、2003年に東証マザーズに上場した。営業拠点として東京、ボストン、EUに置いている。現在従業員数約80名。
 社名にもある「メタボローム」とは、生体内の比較的低分子の定量解析をすることで、基本的には、質量分析器(LC-MSとCE-MS)を用いて測定し、物質の特定、定量を行いデータ化する。
 最大ターゲットは、ヒトの疾患のバイオマーカーとなる物質の特定であるが、この技術の利用範囲は広く、メタボロミクスは医薬品、食品、植物、化粧品、発酵、運動、栄養分野など幅広い研究分野で活用されている。
 特に食品研究における試験数は年々伸びており、食品の成分分析からヒト試験における機能性メカニズム探索まで様々な活用の実績がある。本講演ではメタボロミクスの成分分析としての活用から食品、そして腸内細菌叢とメタボロミクスの関係について具体的な事例を紹介する。
 メタボローム解析を具合的に話すと、生物が生きていると種々の代謝が起こっており、その結果、代謝産物が生成される。有機酸とか糖類とかシグナル物質とか多々存在する。このような低分子の化合物を網羅的に解析することを行っている。対象は、人、植物、微生物など生物なら何でも。例えば、ヒトが自ら作れる代謝物質は5000程度といわれている、一方、植物では、数万におよぶ。
 当社のお客様は、1番は医学部、2番は食品企業。今日のセミナーでは、食品の成分分析と腸内細菌についてです。

食品の例では、

  • 山形のコメの特徴を知る。「つや姫」の成分分析では、コシヒカリと明確な差異が出た。具体的な物質では、つや姫はグルタミン酸などが多かった。雑誌投稿済み
  • 青汁も一斉分析を行った。15社16品目を分析し、202成分を検出した。その結果、成分が似ている会社とばらつく会社があった。多くは大麦若葉を原料としていたが、理由は不明だがカフェインが多い飲料もあった。そのほか、パプリカの色の違いで成分の相違があるのか?などの分析を行った。

腸内細菌の活動とメタボローム分析 
 腸内細菌へのメタボロミクスの活用が盛んになってきた。腸内細菌も種々の代謝物があるが、健康に良い代謝物も悪い代謝物もある。プラスの作用がある物質では、短鎖脂肪酸は腸管のエネルギー源になるとか免疫細胞を賦活化するなどがあるが、一方で腸内細菌は発がん物質を作ることも知られている。
 協同乳業(松本市)と行った共同研究は、ビフィズス菌の入ったヨーグルトを摂取することで腸管環境はどのように変化するかであった。
 ヨーグルトは、2割か3割のヒトにしか効果がないとこが知られている。腸管内でポリアンミンをもっと多くの人で産生させたいという狙いの研究であった。アミノ酸類をヨーグルトに添加して、ポリアミン類を作らせるという試みを行ったところ、添加するアミノ酸としては、GABAおよびアルギニンに生成増強の効果があった。アルギニンは、プトレシンの前駆物質でもある。
 ネズミの試験では、寿命伸長が、確認できた。記憶力も向上した。
 乳酸菌LK512の入ったヨーグルトでは、アトピーに対しても試験を行っている。重症のアトピー患者を対象にして行った実験では、かゆみが顕著に改善した患者が2割ほど出た。その際、キヌレニン酸が増えた、これはトリプトファンが前駆体である。
 がんと肥満と腸内細菌に関しても研究を行っており論文化もしている。高脂肪食で肥満のマウスにおいてがんが起こる物質を合わせて食べさせるとデオキシコール酸濃度が上昇し、クロストリジウム属の腸内細菌が増加した。肥満が悪いのか?高脂肪食が悪いのか?研究が続いている。

ヒトの病気のバイオマーカーの研究
 パーキンソン病の早期診断マーカーの探索を順天堂大の服部先生らと共同研究を行った。ヒト血液のメタボローム解析を進めて、アシルカルニチンの濃度が初期において少なくなる。脂肪酸をミトコンドリアに取り込んで代謝する際のカフェイン濃度が低い。パーキンソンの進行度のマーカーと物質との関係は、統計学的に有意差ができるという結果をまとめ、長鎖アシルカルニチン群が早期パーキンソン病診断のバイオマーカーになりうることを報告した。

メタボローム分析の受託サービス
 当社にメタボローム分析を依頼いただくと、
検体を送ると、前処理は当社で行い、メタボローム分析を実施してデータを返す、というかたちとなる。
 食品関連もたくさんの種類を分析した経験がある。分析に必要なサンプル量は、数十ミリグラムと微量で十分。というか、リンゴ丸々1個などはできないのです。
 成果のデータは、いくつかの形として返送します。物質名とその濃度。図解したヒートマップ。設定した実験系における主成分分析のグラフ、そして代謝マップ。そこから先の解析が必要な場合は、有償の解析サポートも用意しています。
 腸内細菌に関しては、今までの分析経験を基に新サービスを用意している。47個の物質に焦点を当てた分析で、より低料金、短時間で結果を出せるようにしている。

(文責:食品技術士センター)