講演記録「食品工場における『水処理』のあれこれ」

2019.8.24 例会記録

原田篤史氏 オルガノ株式会社 技術士(衛生工学部門)

世界の水資源には限りがあって、その限界が見えるようになってきた。そこで産業に利用される水についても種々の要求がなされるようになり、やがては明確な形で各企業へも求められることになるだろう。

1)食品工場においても排水をゼロにする技術が求められ始めた。

 いずれ全ての食品工場においても排水ゼロ=ZLD(Zero Liquid Discharge)が要求されるだろう。既にインドではほとんどの地域でZLDが求められている。ZLDの実現には工場の大幅な改善が必要となる。

 2018年には、明治、日清、カルビーの各食品工場の新設があったなど、ここ数年、工場新設ラッシュである。しかし、更新やプロセス効率化がメインで既存の改修が42.2%と高く利益率は低い。

 食品企業は、中小零細企業が多く、今後も大幅な設備投資が見込めない状況とみている。企業規模が、小さいと現状設備の改修のように前向きでない投資が多くなってしまう。逆に小さいところは、無駄な水をより多く使っていることも判っている。水の使用量が伸びてきて、世界的には水は、不足している。

 食品工場のマーケットは、33.4兆円、そして、消費者向け74.6兆円、1次産業は7兆円と言われている。食品市場は30兆円前後の安定市場で問題点は、経常利益が「低値」安定で食品は利益率が低いことだ。 

2)ウオーターフットプリントの考え方、測定方法が話題になっている。

 実際に計算してみると、食品工場の水を減らしても、節約して大した量にならことがわかる。「肉じゃが」を例にとって水の総使用量をみてみると、容器にかかわる水は、ほとんどない。そして、農作物100g作るために水の量に対して、牛肉を100g作るのに、1.5Lの水が必要と計算されるので、農作物より10倍多くなる。というわけで食品工場での水の使い方よりも、どんな原材料を使ったのかということが使用した水の総量により大きな影響を持っている。

3)水のリサイクル

 水循環基本法(2014)から、水を循環させて節約しよう、という動きになってきた。水の再利用率は業界全体では、78%に達しているが、食品ではまだ28%と低い。立ち止まって、率だけでなく量を見るとが必要だ。水使用量は、鉄鋼業、化学工業がずば抜けて多い、そして、これらの再利用率は高い。これが統計数値を押し上げている。一方、パルプと紙の再利用率が低い。食品製造業も水の使用量が多く再生率は低い。小さな会社が多いと投資が追い付いていない。

 食品企業が使っている水は75%が洗浄水、次に冷却のための水となっている。単に循環ではなく、再生の段階化を行って、前の工程の洗浄水を次に使うという水の清浄度のレベルを変えた使い方が節約法につながる。

 業種によって異なるが、水リサイクル率を開示する企業も増えてきている。水再利用およびZLDは市場的に拡大すると考えられている。すなわち市場要求が増える社会背景がある。段階的な水の利用と併せて、種々の処理法、例えば、建機生物処理法、グラニュール法、油今後は水回収率が要求されることは必須ともいえる。処理方法など改良進化してゆくだろう。純粋を作るRO膜処理の市場も拡大すると見込んでいる。

 水利用をトータルに考えれば、まだ回収できる排水はあるはずだ。排水の質、量、時間変動を把握した排水再利用設備の選択が重要といえる。生産プロセス以外にも水が使われている箇所はたくさんある。工場全体でトータルに削減できるか?を考える事が肝要だろう。

 水リサイクルに予想される問題点は、消費者のトレンドが移り変わりやすいことにも忌諱する。製造品目が変われば排水も変わる。排水が変われば回収方法も変わる。変わりやすいトレンドに対応しつつ、工場を安定的に稼働させることは、困難も多いと予想される。