瑞穂の国の米とイネを考える!!  

食品化学新聞 技術士リレーシリーズ 2019年11月7日掲載

  鈴木修武 技術士(農業部門) 鈴木修武技術士事務所 

 江戸時代から継続する水呑み百姓の倅として、このテーマには関心がある。日本の食糧・食品産業に大きく影響からである。講談社+α新書窪田氏よる著書(2017年)によれば、国内の農業総産出額1984年11.7兆が2014年8.4兆になっている。特に米は3.9兆円から1.4兆円と衰退産業である。農業従事者が70歳以上となり、大転換期を迎えているが、代替わりは戦後最大の好機かもしれない。農業に関する先進的なセミナーに参加したので、その様子を報告する。

1.米農家の先端技術を聴講した。

農林・食品産業技術振興協会の講演会で、埼玉のA農業法人代表が話した。この法人は、他分野からの新規参入で水田90ha(生米540t)品種5種類で農業MOT(技術経営)を目指している。マネジメント、技術、科学とスマート化(ICTとIOT、センシングやロボッテクス化:以下略)を取り入れての技術経営農業を行っている。

理由は人材不足、田圃の350か所の分散という非効率、最近の異常気象などである。労力や熟練の経験などの人為が3割、スマート化7割(将来1:9が目標)である。スマート化により品質向上と大幅なコスト削減である。農業MOTは、スマート化バージョンアップ、開発の短期化とローテクを使った新技術でシンプルと低コストを目指す二つの流れにある。スマート化の例としてGPSを使い農機具で5m幅の代掻きを行うことで大幅なコスト削減ができる。

低コスト化は、水位センサーを使いGPSで水位の遠隔測定で青黄赤と色分けし、水不足の赤の田巡りはだれでも水調整ができる。コンバインの収量計で圃場の1枚ごとの収量を自動記録し、管理結果から土壌と品質を合わせた施肥と水管理である。これらにより昨年、埼玉県の一等米の約半分を勝ち取った。スマート管理することにより収量と等級を向上させた。稲作農家の米原価は農林統計で60Kg約11851円(目標9600円)でこの法人は8000円の実績である。将来の売上高の増大と原価低減により利益率35%の数字を目指している。

スマート化の問題点は初期投資の増大、メーカーの乱立と複雑化で選択の戸惑い、データの活用方法を挙げている。これが最先端の農業技術かと驚いたが、国内稲作の大きな問題は中山間地をどうするかでなかろうか。

2.「転機に立つ日本のイネ育種」とはどんなものか

バイオインダストリー協会のセミナーを聴講した。以前からイネについては、佐藤先生(静大元助教授)の講演や「イネの文明」(PHP新書)から学んでいる。カンボジアのトンレサップ湖や周辺に野生のイネが生育している情報を得て、今年現地に行き、田圃の畔、日陰の休憩場所で野生のイネ様を見た。

■静大富田教授・技術士(生物工学部門)による「新・緑の革命:グローバル化時代と地球温暖化に適した超多収・大粒・早晩生コシヒカリの次世代シーケンス解析に基づく開発」を聴講した。ゲノム分析により有望遺伝子を同定することにより気候変動に対する頑健性を持ち、低コスト多収化を開発した。今後各地域に求められる有用遺伝子型を持つ品種に役立つのではないかを思った。異常気象が問題になることが予想され農家にとって実際に有益な研究である。

■農業・食品産業技術総合機構 小松上級研究員による「イネのゲノム編集はこれからどうなるか~実用化と普及の鍵を考える」

ゲノム編集で開発した多様な作物の品種が動き出しているが、明確なルールがない。編集技術で作り出された“シンク能改変イネ”の開発及び国内初の野外栽培試験が行われた。より良い技術の使い方に生産、研究、消費者、行政、メディアを含めて議論が必要。隔離田圃への苗移植の報道を毎日、日経、日本農業新聞などが報道している。この機構は最先端技術の普及活動に気を使っていた。

東京慈恵医大 斎藤教授による「食べる免疫療法「スギ花粉米」の今後

ある海外医薬企業が、19年3月に世界に先駆けて抗体医薬を利益がでる日本で販売した。年間対処療法の費用は、保険料3割負担で5万円強、対象者が200~300万人おりおいしい市場らしい。舌下免疫療法費は年間3万である。効果が得られるには3~5年かかり、みんな途中で治療を断念する。食べる花粉米は毎日5gまたは20gで効果と安全性がわかり、市販したいが手段と方法が不明である。花粉症患者から質問があり早期発売の要望が出された。ネット販売を考えているが医者のチェックが必要である。先生もPM2.5アレルギーなど他の症状と混同されて効果なしになることを危惧している。

米もイネも技術開発が進んでいるので、これらの技術を武器に世界へ羽ばたける確証を得た。がんばれ日本の米とイネと思った聴講であった。

食品化学新聞社の許可を得て掲載しております