食品期限表示(賞味期限)の課題

食品技術士 リレーシリーズ 食品化学新聞2019年10月24日掲載

跡部昌彦 技術士(農業・総合技術監理部門)
跡部技術士事務所(食品開発コンサルタント)

はじめに

 消費者の方々が食品を購入される際、よく確認される表示のひとつに期限表示(消費期限、賞味期限)がある。このうち、賞味期限についての課題を、製造者・販売者、流通、消費者の観点からまとめてみたい。

製造者・販売者の課題1:賞味期限設定の決め方に正解がない。

 2005年に厚生労働省と農林水産省が定めた「食品期限表示の設定のためのガイドライン」はあるが、一般的な内容である。それを受けて各食品業界団体が業界としてのガイドラインを示しているが、一般的な域を脱していない。各製造者・販売者は、それぞれが考えた方法で期限表示を設定することになるのだが、正解はない。

製造者・販売者の課題2:賞味期限を早く決めたい。

 1年ほどの賞味期限を見込んでいる新商品を開発した場合、開発後1年間以上の品質を確認してから、その賞味期限を表示して市場で販売するという訳にはいかない。賞味期限を早く設定するための方法に加速試験法があるが、これも各製造者・販売者のノウハウになっている。

製造者・販売者の課題3:賞味期限を延ばしたい

 売れ残りなどによる商品の廃棄ロスを防ぐため、製造者・販売者は賞味期限を延ばしたいと考えている。その方法には、品質劣化の少ない原材料の使用、製造方法の改良、容器包装からのアプローチなどがあるが、技術革新が必要なテーマである。

製造者・販売者の課題4:賞味期限表示を偽った表示もできる。

 数年ほど前、賞味期限の偽装表示という問題が起きた。返品された商品に対して賞味期限を表示し直して販売した、賞味期限が切れている原料を使って商品を製造した、故意に長めの賞味期限を表示したなどの問題である。故意による改ざんは少なくなった感じだが、誤って表示した例は時々見られる。

流通の課題1:「3分の1ルール」という流通の問題がある。

 食品流通業界の商習慣として、食品の製造日から賞味期限までを3分割し、「納入期限は、製造日から3分の1の時点まで」、「販売期限は、賞味期限の3分の2の時点まで」とするという「3分の1ルール」がある。従って、賞味期限が6カ月の商品の場合、賞味期限が2カ月を過ぎたら、製造者・販売者としては売り先がなくなっていまい、多くは廃棄せざるを得ない。そこで、食品業界としては、納入期限を2分の1とする「2分の1ルール」への移行を検討している。

消費者の課題1:賞味期限が長く残っている商品の方がよいという心理がある。

スーパーマーケットなどの棚で、奥にある商品は製造が新しい(賞味期限が長く残っている)ので、それを取り出して購入したいという消費者心理がある。こうされると、棚の手前にある製造が古い(賞味期限まで短い)商品が売れ残ってしまう。そこで、食品業界では、賞味期限の「年月日表示」から「年月表示」への移行を検討している(法律上、賞味期限が3ヶ月以上のものは「年月表示」も認められている)。そうすると、現表示で賞味期限が「2019年10月26日」や「2019年10月2日」の商品も、新表示では「2019年9月」となるので、同じ賞味期限の商品として取り扱われることになる(「2019年10月」では10月31日までOKになるので不可)。この場合、賞味期限が最大で30日短くなるので、製造者・販売者としては前述の「賞味期限を延ばしたい」への対応が必要となる。

消費者の課題2:賞味期限は目安にすぎないのに…。

 賞味期限が過ぎた商品は廃棄するという消費者の方が多くみえる。賞味期限を過ぎたら、即、品質が悪くなるということはない。賞味期限は目安であり、食品を食べるときは、色を見る、香りを嗅ぐなど、五感で食べられるかどうかを判断することが大切である

まとめ

 以上のうち、「3分の1ルール」と「年月表示への移行」の問題は、製造・流通・販売が一体となって進める必要のある課題である。食品ロス削減や、働き方改革(特にトラックドライバーの働き方)に繋がるテーマなので、農林水産省からの支援がなされている。


 専門は食品の研究開発で、商品開発、食品加工技術、食品素材開発、食品機能研究、おいしさ評価、設計品質管理、研究開発マネジメントなど。

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