HACCP導入は、原則1,2,4から始めよう

HACCPを解きほぐす(6) 食品化学新聞2019年7月4日掲載

浅野行蔵 技術士(生物工学/総合技術監理部門)

米国でのHACCP誕生の歴史を自社のHACCP導入の歴史へ重ね合わせよう

 HACCPというと7原則が出てきて、その全てを適応することがHACCPだと一般に信じられているようだ。導入を考えている会社にとってこれが高いハードルとなっている。HACCPが誕生した米国には、この点でも学ぶべきことがある。HACCPの誕生した時には、7原則があったわけではない。

HACCPの歴史をひもといてみよう。西川研次郞氏論文2011から引用する。

米国のHACCP元年(1959年)は、ピルスベリー社のボウマン博士がNASAの宇宙開発計画に参加し、抜取検査では宇宙食の100%に限りなく近い安全性を保証できないことに気付いた。そして、ボウマン博士はNASAのプロジェクトにおいて100%に限りなく近い安全性を保証する手段としてHACCPの基本的な考え方を開発した。

ボウマン博士が、日常での食品の安全性確保のための優れた衛生管理手法としてHACCPを提案したのは、1971年4月の全米食品保護会議であった。会議の主テーマは食品の微生物汚染に対する包括的防御方法の開発であったが、提案は直ちには受入れられなかった。

しかし、HACCPを活用することになる契機はその年の夏にやってきた。ボンビバン社製のビシソワーズスープ缶詰を原因とするボツリヌス中毒が発生した。また、キャンベル社やバンキャンプ社の缶詰にもボツリヌス菌に関する不適切な管理が判明したのだ。米国の缶詰会社全体の衛生管理とFDAの指導に対して米国民の信頼を失った。

不信感を払拭するため、FDAはピルスベリー社にFDAの検査官16人を派遣し、HACCP手法の訓練を委嘱した。その訓練の成果としてFDAは、HACCPの考え方を導入した「低酸性缶詰食品規則」(規則の中にはHACCPの5文字は出てこないが)を1973年に公布した。

当時の原則は、【原則1】「危害要因分析の実施」HA、【原則2】「必須管理点の決定」CCP、そして【原則4】「モニタリング」の3原則のみであった。

 歴史から学ぶことが有効というのは、これからHACCPを始めようとしている、あるいは始めてみたがどうなるか不安な企業においては、まずは、この3つの原則を製造工程で実施できることを目標とすれば良いであろう。ここができていなかったらその後の原則を実施することの意味はなくなってしまう。

まずは、原則1の第1回線に勝ち残ることがHACCPでは大切である。HACCPは高校野球のようなトーナメント戦だ。これら3つの原則の実施により缶詰の安全性が飛躍的に向上したので、缶詰会社は米国民の信頼を取り戻した。

その後、HACCPの考え方が浸透していく過程で、次に【原則3】「許容限界の設定」CL と【原則5】「是正措置の設定」の2原則が追加されました。そして、HACCPの7原則がそろうのは、最初の公示から16年後の1989年になってからである。1989年に米国科学アカデミーの勧告で設立されたNACMCF(米国食品微生物基準諮問委員会)により、【原則6】「検証」と【原則7】「記録」の2つが追加されて7原則となった。

歴史から学べることは多い。米国でのHACCP誕生の歴史を自社のHACCP導入の歴史へ重ね合わせようではないか。FDAだって、最初は【原則1】【原則2】【原則4】の3つから始めたのである。これら3つを実施することで安全性は飛躍的に向上する。3つの原則体制に慣れてきたら【原則3】と【原則5】をやってみまよう。そして、最後は【原則6】と【原則7】をいれて7原則とされると良いであろう。そう、原則7の記録は16年後くらいに入れれば良い、という気持ちでも良いのである。まずは、原則1,2,4から始めよう。HACCPの歴史が教えているのである。

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