テーラーメイド賞味期限

食品化学新聞「食品技術士リレーシリーズ」2013.08.29掲載

横山勉  技術士(農業部門)横山技術士事務所

世界では、食料総生産の3分の1に当たる13億トンが、毎年廃棄されている。開発途上国は少ないが、先進国ではサプライチェーン全体で大量に発生する。日本は、10数kg(1人1年当り)と決して多くない。それでも、カロリーベースで6割の食料を輸入に頼る国として、無駄を少なくする必要がある。食料自給率向上にもつながるのである。

 わが国で廃棄される年間1,800万トンの食品には、喫食可能な部分が含まれる。これを食品ロスという。500~800万トンと試算され、削減すべきターゲットとなる。食品ロス削減には、農林水産省が中心となって取り組んできた。努力が実りつつあり、社会全体が好ましい方向に向かって動き出した。

2009年6月、大手コンビニの値引き販売制限に対して、公正取引委員会の排除措置命令があった。2010年3月、牛丼吉野家が小盛をメニューに加え、すき家・松屋と並んだ。同時期、ドギーバッグ普及委員会が「お持ち帰りガイドライン」を制定している。2013年6月、大手スーパー等が大きな課題だった「3分の1ルール」を見直し、「2分の1ルール」の試験導入を開始した。上記は、食品ロス削減に貢献するに違いない。

 食品ロス削減に大きく関わるのが、賞味期限である。おいしく食べられる期限であり、期限後も問題なく食べられる期間が存在する。期限後は、食べることを避けるべき消費期限と明確に異なる。賞味期限への対応は、関係者間で異なるが、それぞれ重要である。

 賞味期限を設定するのは、基本的に製造者自身である。科学に基づいた適切な期限を設定する必要がある。食品の特性を代表する客観的な項目に配慮して保存試験を行い設定する。これに1以下の安全係数を乗じて、最終的な賞味期限とする。2008年8年11月改正の「加工食品の表示共通Q&A」で、「0.8」以上が望ましいと明記された。

 これを受けて、賞味期限を延長する動きがある。従来は、0.8を大きく下回る安全係数を採用していた例が多かったのだ。2009年2月、とらや羊羹は安全係数を見直し、賞味期限を9から12カ月に延長した。同時に賞味期限後も1年間は問題なく喫食可であることを公開した。2012年11月、CGCはPB製品の飲料水を24から36カ月、パック詰ご飯を8から10カ月と賞味期限を延長した。永い賞味期限を設定できるのは、製造者の衛生管理が的確であり、高い技術力の証なのである。

 賞味期間が3カ月以上の食品であれば、年月表示が可能である。2013年5月、大手飲料5社が、従来の年月日を年月表示へ改めた。従来は、1日でも日付が前であれば納品できなかったのである。複数の納品ルートがあれば、納品不可の商品が発生し、食品ロスにつながった。平均すると、賞味期間は半月短くなるが、社会全体では食品ロス削減になる。

 賞味期限に関して重要なのが、消費者である。食品ロスの約半分が家庭由来とされる。3大要因が、過剰除去・食べ残し・期限切れである。期限前の未開封食品であっても、相当量廃棄されている。どのような対応ができるだろうか。

 食物への感謝の気持ちを改めてアピールしたい。「食に関する感謝の念と理解」は食育基本法に盛り込まれている。「いただきます」と「ごちそうさま」の意味を子ども達に伝えなくてはならない。給食費を払っているから、これらは不要と主張する親がいると聞く。このような大人にならないように子どもたちを導きたいものである。

 大人の考え方を変えるのは難しいが、賞味期限の意味を理解いただくことは可能だろう。期限前の消費が原則だが、期限後も相当期間は問題なく食べられる。嗅覚などの5感で食品の状態は把握できる。食品を無駄にしないことは気持ちがよく、金銭的にもお得なのである。消費者庁もパンフレットを製作して、啓蒙を進めている。

おいしさの感じ方には個人差がある。賞味期限は標準的な人を基準としている。従って、期限間際でもおいしいと感じる人がいれば、まずく感じる人もいる。前者であれば、表示期限よりさらに伸ばしてよい。反対も然りで、個人に合った賞味期限を考えてよいのである。テーラーメイド賞味期限といえる。おいしさを感じる能力は生まれつきの能力による部分もあるが、訓練によって高められる。体調・文化・環境・情報等も関与する。おいしく食べて食品ロス削減を進めたい。

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