成功・失敗事例から学ぶ商品開発、市場開発とそのポイント⑩ 最後発からの販売と提案型営業 (成功事例・パーム油の販売その2)

食品と科学 VOL.56.NO.8 平成26年8月10日発行

鈴木修武  鈴木修武技術士事務所

1.パーム油の販売における技術的な取り組み 

 第3回提案型営業における技術マニュアルの作成

 これまで業務用営業と技術部門はそれぞれの販売や販売促進であったが、社長が代わり、提案型営業、全社的な取り組みになり、社内の技術教育に重点を置き、座学と調理試験、各種性能試験を行うなどより現場を重視にした。

 技術者も営業的なマインドを求めて講義をし、顧客へのプレゼンの能力を高めた。営業も油の基礎及び現場の技術的な知識を習得した。

(1) 技術者、営業員の相互理解

 技術者が講師になり、営業員が生徒になった。技術者は人前でしゃべる機会がなく苦手な人が多かった。また、営業員は商品説明に技術的なことば、例えばトリグリセリド(油脂の構造)やモノグリセリド(乳化剤)など科学的な語意になじみがなかった。生物や化学などを高校・大学で学んでいなかったことにもよることが多かった。

 現場的な現象で加熱劣化して酸価が上昇すれば、揚げ種の肉汁やパン粉などにより色度が上がり、着色する現象や発煙点が着色物質などにより低下する現象など、技術者では説明しなくても分かることが理解されていなかったのは驚きであった。

(2) 支店・営業間の人的な交流と情報交換・・・省略

(3) 営業員の基礎、現場の技術的な理解と実習

 食用植物油の一般性状、調理実習、揚げ中における油の性状変化、ガス、電気、電磁フライヤーやその当時使われ始めたろ過機の実習を行った。

 営業員の中には揚げ物をしたのは初めてと言う人がいた。また、ろ過機は
話に聞くが実物を見たのが初めてという人もいた。

スーパー惣菜や外食産業などで使用していた一斗缶(16.5 kg)や3 kg張り込みフライヤーを使って天ぷら、コロッケ、から揚げ、豚カツなどを揚げて生産現場を知ってもらい、そこで起こった技術的な問題点を技術者へ伝えて、適切な技術支援ができる体制にする。

 当時、現場でデジタル温度計を初めて使って揚げ温度や揚げ種による温度変化も行った。普及し始めていたろ過機を実際に作業終了後に試して、メリットとデメリットも解説した。食用油の使い方の業種別マニュアルを作成して、営業員や若手技術者の教育に使った。

(4) 新商品、売りたい商品の技術マニュアルの作成

 パーム油以外にその後、発売された炊飯油、花咲油、オリーブ油、ハイオレック菜種油(オレイン酸が多い菜種油)の販売に大きく貢献した。

2.営業員への基礎技術教育

 パーム油と液状油の比較をして、営業員に分かり易く説明した。また、試験方法を考え、パーム油と液状油の特徴を説明し、顧客別にパーム油配合品を作り提案した。

(1) パーム油と液状油の比較

 営業員と議論してパーム油と液状油の比較表を表1に示した。

表1 パーム油と液状油の違い
  パーム油 液状油 備考
耐熱性試験 × 加熱安定性
油切れ(油じみ) × トレー・皿・袋の汚れ
保形性 コロッケ・豚カツ等の形崩れ
酸化安定性 保存性食品の酸化安定性
おいしさ × 油のうまみ
食感 × 口融け性・食感等
低温固形 × 主に冬季・冷蔵における作業性
価格・供給 液状油に相対比較
相対比較 良い ◎>○>△>×
大量調理における食用油の使い方 幸書房(2010)より

 パーム油は耐熱性が良く、トレーなどに付着せず、油切れや油じみが良かった。パーム油は固型脂のために保形性が良かったが低温において固形になるので冬季は斗缶から出にくく、残る場合があり作業性が悪い。その反面液状油は油のうまみやおいしさ、口どけ性や食感などが良かった。

 優位性があったのはパーム油で価格安く供給量も豊富にあった。これらの長所や短所を説明し、ロットがまとまれば顧客別に特注品を作った。

(2) 耐熱性試験(加熱安定性試験)

 なんとかして差別化しないと販売できないので耐熱性に注目した。揚げ物用油脂は、加熱されても安定な油脂が求められる。一般的には泡立ちが起こり難く、酸価、粘度の上昇のあまりない、着色しにくい油が必要である。

 油業界では加熱で疲れた油の品質の良否を泡立ちで表現し、カニ泡と言っている。実験室では耐熱性を行う方法が色々ある。以前から2日間でやる試験があったが、実験日数が長くなり到底できないと考えた。

 シリコンの有無を調べる3時間の実験を思い出した。この方法は180℃に加熱してジャガイモに衣を付けて泡立ちを見て、220℃に温度を上昇させて1時間加熱する。この操作を3時間行い、泡立ちの出る面積で表現する。また、試験前後の油の酸価、粘度、色度の変化を調べて耐熱性を調べることができる。

 シリコン無添加油は3時間加熱で泡立ちが激しく、シリコン添加は、ほとんど泡立ちがない。この方法を5時間に伸ばして実験をし、理論は実際と良く一致した。その資料を図1に示した。図1より、大豆油は5時間後の泡立ちが約90%と、この中では最も弱く、次に菜種油の泡立ちは約60%でやや弱く、ハイオレ菜種油やパームオレインは5時間後でも約5%で強いと言える。220℃の耐熱性は、通常のフライ温度約5倍の劣化速度で、180℃で約25時間の揚げ時間相当である。耐熱性の良い油は、ハイオレ菜種油(従来よりもオレイン酸が多い油)とパームオレインである。次にコーン油、菜種油、大豆油であった。この資料を使い、ある外食産業のチェーン店の攻略を試みた。提案油としたパーム配合油(菜種油、コーン油、パームオレイン)と既存使用油、大豆油の3者の比較資料を作成した。本部の了解を得て、代表的な3店舗で、既存の使用油と比較試験を1週間した。酸価、粘度、色度、泡立ち等の分析をした。この耐熱性試験と同じような結果が出てパーム配合油は採用になった。

図1

図1 各種植物油の耐熱性(泡立ち黒部分)

 3.基本的な食用油や使われるフライヤーやろ過機の営業員への説明

(1)揚げ物用植物油と揚げ素材との相性

 風味・作業性・フライ適性・素材との相性などを含めたまとめを表2に示した。

表2 揚げ物用植物油と揚げ素材との相性
油種 風味 作業性 フライ適性 素材との相性
酸価 着色 泡立ち 天ぷら フライ から揚げ
大豆油
なたね油
なたね油
(ハイオレイン酸)
コーン油
パーム油
相対比較 ◎:非常に良い ○:良い □:普通 △:やや劣る
     鈴木修武:技術資料(ホーネンコーポレーション)より    

 サラダ油と天ぷら油(白絞油)の違いについての問い合わせが多いので若干説明する。炒め物や揚げ物はもちろん、ドレッシングなど生で冷やして食べるにも適しているのがサラダ油である。精製を念入りに行い、低温で凍らない(濁らない)ように作った軽く淡白な風味が特徴である。一方、揚げ物に向くように作られた油が、天ぷら油(白絞油)である。加熱した時に劣化しにくい性質を持ち、コシが強い油で、うま味の有るのが特徴である。

(2) 火力の違いと温度ドロップ

揚げ物をするときに火力が弱いと、揚げ種を投入した後、揚げ温度が低下し温度の復帰が遅れることがよく見受うけられる。そこで、3.5 kgの油を張り込んで電気フライヤーとガス鍋で揚げた時の温度の変化を図2に示した。使用材料は、豚肉130gで、揚げ油の量は同一であるが火力の違いにより温度ドロップが違うことが分った。

図2

図2 火力の違いによる温度ドロップ
◆電気 ▲ガス鍋

 ガス鍋は、豚カツ1枚入れて最も低くなっても約176℃であったが、電気フライヤーは約163℃まで低下した。電気フライヤーの低下した理由は、ヒーターの火力が弱く、温度低下しても供給カロリーよりも水分による蒸発カロリー(消費カロリー)が多いために低下していると考える。その反面、ガス鍋は、温度低下はするが、供給カロリーが多いためにあまり温度が低下しない。揚げ物は、温度低下が激しいと美味しい揚げ物ができない。豚カツでは肉汁が揚げ油へ染み出して油の劣化の原因になる場合もある。また、衣のパン粉は香ばしくなく、油とパン粉の風味も出ず油臭い風味になる。
 揚げ種にもよるが、温度ドロップを少なくするためには、油量と火力が必要である。

(3) 業務用フライヤーによる温度ドロップの違い

 前項で豚カツによる電気とガスフライヤーの温度ドロップの違いを述べたが、ここでは外食産業やスーパーの惣菜で通常使われている斗缶張り込みの電気、電磁、ガスフライヤーで製造者と加熱能力を表3に示した。

表3  小型フライヤーの部所と体積 
            
  電気(E電気製) 電磁(E電気製) ガス(T製)
EF-19L 200V 6kW NSF-053J 
200V 5.2kW
有効油量(kg) 14.1(65%) 10.0(42%) 11.1(51%)
ヒーター上部
ヒーター部分 4.7(21%) 4.5(18%) 2.0(14%)
ヒーター下部 3.0(14%) 9.4(39%) 4.8(22%)
合計 21.8 23.8 18.9
大量調理における食用油の使い方 幸書房(2010)より

 また、冷凍コロッケと冷凍ポテトの揚げによる温度変化を図3と図4に示した。これは同一の揚げ重量であり、同じ斗缶張り込みであり、加熱方式による違いとヒーターより上の有効油量の違いによる温度変化である。冷凍コロッケと冷凍ポテトの揚げ種による違いの温度変化も並列した。

図3

図3 フライヤーの違いによる温度変化(コロッケ2kg)

図4

図4フライヤーの違いによる温度変化(ポテト2kg)

 温度変化の図3より、冷凍コロッケ2 kgを揚げた時に温度ドロップはガスフライヤーが一番激しく、次に電磁フライヤーで、電気フライヤーが少なかった。この違いの要因は大きく分けて二つある。一つは、有効油量(ヒーター上部の加熱により温められる油量)が多ければ、温度ドロップが少ない。表3より電気フライヤー:電磁フライヤー:ガスフライヤーにおける有効油量はそれぞれ14.1:10.0:11.1であった。もう一つは、加熱方式すなわち電気フライヤーは加熱ヒーターであり電磁フライヤーは電磁を熱源とした加熱ヒーターで、ガスフライヤーは中間加熱ヒーターであるための供給熱カロリーの違いと考えられる。

(4) 揚げ種による温度ドロップの違い

 上記で各フライヤーの違いによる温度ドロップの違いを述べたが、揚げ種の違うによる温度ドロップもある。図3と図4を比較すれば、同じ冷凍食品、2 kgを揚げているが、揚げ種により違う。例えば、ガスフライヤーでは、冷凍コロッケは180℃で揚げ始めて、最も低下した温度は約163℃である。一方冷凍ポテトは、180℃で揚げ始めて、最低温度は約135℃である。この両者の違いはなにか。それは、蒸発水分量と考える。

 冷凍コロッケと冷凍ポテトの水分、油分、重量と蒸発水分の物質収支を表4に示した。両者を比較した場合、蒸発水分(g)が問題である。冷凍コロッケは、311gの水分が蒸発しているが、冷凍ポテトは、522gと差し引き211g多く蒸発している。このために温度ドロップするためと考える。水分が1g蒸発するためには、539キロカロリーのカロリーが必要であるために、蒸発水分は211gであるので、水分の蒸発だけでも211×539=113729キロカロリーが必要となる。

表4 冷凍コロッケ、ポテトの揚げ前後の物質収支
           
    冷凍コロッケ2kg 冷凍ポテト2kg
(野菜コロッケ:極洋) (フレンチポテト:日本水産)
電気フライヤー   フライ前 フライ後 フライ前 フライ後
水分(%) 67.6 51.1 71.7 53.1
油分(%) 1.3 14.8 2.6 9
重量(g) 2020.9 1967.6 2000 1485.4
蒸発水分(g) 1365(2020.9×0.676) 1434(2000×0.717)
-1005(1967.6×0.511)=360 -789(1485.4×0.531)=645
ガスフライヤー   フライ前 フライ後 フライ前 フライ後
水分(%) 67.6 50.3 71.7 57
油分(%) 1.3 16.9 2.6 8.8
重量(g) 2013.5 2086.8 2017.4 1657.5
蒸発水分(g) 1360(2013.5×0.676) 1446(2017.4×0.717)
-1005(2086.8×0.503)=311 -944(1657.5×0.570)=522
電磁フライヤー   フライ前 フライ後 フライ前 フライ後
水分(%) 67.6 57 71.7 52.7
油分(%) 1.3 14 2.6 8.9
重量(g) 2020 1933.9 2000 1556.3
蒸発水分(g) 1365(2020×0.676) 1420(2000×0.717)
-1101(1933.9×0.570)=264 -820(155.63×0.527)=600
鈴木修武、加藤昇:豚カツ製造と植物油 杉山産業化学研究所年報(2002)より

(5)  揚げ油の管理:揚げ物の酸価とさし油

 酸価上昇とさし油を示した慨念図を図5に示した。この図は多くの外食産業の基礎資料を基に作った図である。品質基準として弁当・そうざいの衛生規範の酸価2.5にすれば、A、B店では3日で廃油にしなければならない。C店では9日で廃油に、D店では廃油をしなくても良い店舗である。A、B店は、郊外型洋食のファミリーレストランで、揚げ物はフレンチポテト、カラ揚げ、エビフライ、コロッケ、メンチカツなどの一般的な外食店である。C、D店は豚カツ専門店でC店はオフィス街の昼食中心の店舗で、D店は商店街の中心にあり近接の住宅街の顧客も多い店売りと持ち帰り弁当・豚カツも販売できる店舗である。

図5

図5 酸価とさし油の概念図 ●A店 ▲B店 ■C店 ◆D店

 長年の経験から豚カツは、どこかで廃油にしなければならない。どんなに繁盛している店舗でも、顧客は時間帯により変動があるので、カラ加熱がさけられない。そのために時間当たりのさし油が減少して、その結果 、酸価が上昇する。唯一豚カツでも廃油がでない店舗として持ち帰り用の豚カツと店舗内喫食の併設している場合は平均的にさし油があり廃油が出ない。

(6) 過機を使った時のメリット、デメリットと注意点

 長年の顧客の要望に応えてフライヤーとろ過機をセットで説明をしている。ろ過機の製造と販売は専業、フライヤーとセット販売、異業種の機械メーカー、食品業者からの参入もあり、多種多様なろ過機がある。また、ろ過に必要なろ布、ろ紙やろ過助剤、脱酸剤等の選択が必要であり現場はかなり困惑していた。効果効用も当初は疑問視されていたが、表5に示したように一定の効果がある。しかし、長期間利用した現場での科学的な効果を示すデータもあまり無く、若干大学や公的な機関で調査を行っているが満足できる資料が無いのが実情である。筆者も顧客と共同で実験を行ったが、その現場でのみ通用するデータで、普遍的に説明できる結果が得られなかった。その理由は揚げ種、業種、フライヤーの種類によって、ろ過機、ろ布、ろ紙、ろ過助剤も違ってくるからである。

表5 ろ過機の効用
  ろ過機の効用
メリット デメリット
効用 外観改良 ランニングコスト増大
異物混入改善 設備投資増加
風味改良 作業量増大
鈴木修武:技術資料(ホーネンコーポレーション)より

 使い方も難しく、ある現場責任者は一日に4~5回もろ過したため、揚げ油が空気中の酸素により著しく酸化し、酸価上昇、粘度上昇が起こり、揚げ物から極度な酸化臭を発生させてしまった。現在では一日一回のろ過が適当である。

4.パーム油を販売するために具体的な技術マニュアル(豚カツ編)

 パーム油を大量に売るために食品業界の中より販売先を明確にした。いろいろな業種からスーパー惣菜、外食産業から豚カツをターゲットにした。
そこで、揚げ条件、揚げ温度と内部温度、パン粉やバッター粉などを実験して分析や調査をした。これらの資料を豚カツの上手な揚げ方や基本的な配合油などとして技術マニュアルを作った。その一部を紹介する。

(1) 豚カツの揚げ条件と一般性状

 豚カツにおける揚げ温度と一般性状を表6に示した。揚げ条件は家庭用ガスコンロで温度140~180℃、時間4~7分で、衣の外観、食感、油っぽさの官能試験と中心温度や水分油分を測定した。ここでの最適条件は、170℃、6分で官能試験でも良好な結果であった。これより揚げ時間が短くても、揚げ温度が低くても官能試験で評価が悪かった。豚カツの揚げ条件がかなり狭い範囲と考えられる。

 

 

(2) 豚カツの揚げ温度と内部温度

 揚げ物を揚げるときに最も重量な点は揚げ温度である。揚げ温度により内部温度が違って豚カツの外観も変わるので揚げ温度が非常に重要になる。豚カツでの揚げ温度と内部温度を図6に示した。この図より揚げ温度が違えば揚げ時間も違うが、160℃の適温付近では揚げ時間がそれほど違わないことが分かった。すなわち140℃、160℃、180℃でも同じ揚げ時間は3分間であった。しかし、豚カツの内部温度は、同じような傾向で上昇した。3分後では140℃、47℃で、160℃、65℃であり、180℃では72℃であった。微生物的な殺菌温度75℃、15秒以上とすれば、揚げの各温度とも殺菌温度ではない。それ以降、フライヤーから取り出せば、徐々に温度上昇し、殺菌温度になる。120℃でも殺菌温度と時間になるが、揚げ時間が7分と長く、色付きも悪いので揚げ温度としては不向きである。

図6

図6 揚げ温度と内部温度

(3) 豚カツの揚げ枚数とリン脂質

 豚カツに卵入りのバター粉を使用して、豚肉の肉汁から溶出してくるリン脂質の溶出量の試験をし、その結果を図7に示した。
この試験は揚げ油になたね油を1 kg使い、豚肉約100gに平均卵約8.7gと小麦粉約3.6gを付けて約180℃で揚げ、溶出したリン脂質を測定した。その結果、揚げ油のリン脂質は1枚から29 ppm溶出し、2枚では53 ppmと増え、10枚で133 ppmになり、レシチン特有の大きな泡立ちが見られた。また、特有の細かな持続性のある泡立ちは4枚ではあまり目立ないが、10枚では約1分間油面の約5%が残った。油の劣化や泡立ちなどは油量と比例するので、斗缶張込のフライヤーでは約150~200枚くらいで泡立ちが見られ、リン脂質も多く検出されると思われる。

(4) パン粉の種類とその特徴

 パン粉とはパンを粉砕して篩に掛けて粒子を揃えたもので、原料は小麦粉、イースト、塩、糖類、油脂、イーストフード、色素などが使われている。

 食パンを作るときと同じ直だね法で、常法で発酵させて外側が焦げないように低温で焼くものとオーブンで焼かずに電極法で加熱する方法もあり放冷、粉砕、乾燥、粒度別に分けて製品とする。製品はフレーク、ソフト(生パン粉)、ドライパン粉などがあり、乾燥状態が良く、白くつやがある吸油率の少ないパン粉が良いとされている。パン粉のうまさは、豚カツに代表されるように、肉のうまさをパン粉で包んで食感と揚げ油のうまさで食べるので、パン粉の品質と種類が重要因子である。パン粉が立って食べるときにサクサク感を出すには、生パン粉を使う必要があり、豚カツなどフライした直後にすぐ食べるものは、食感や風味の良い焙焼式の生パン粉が良い。生パン粉は水分が多くカビが生えやすいので冷蔵するか、酸素を絶つ目的で脱酸素剤を使うのも一つの手法である。ボリーム感を出し、サクサク感を強調するには、粒度分布が重要で豚カツ用の生パン粉は2~6メッシュ(6.6~12.7 mm)くらいの比較的に大きなパン粉が良いと思われる。パン粉の揚げ色は、澱粉などの多糖類の150℃以上、熱分解による徐々の分解と、200℃以上の激しい分解が起こる褐変する現象と、パン粉の中に残存するアミノ酸と糖類が多くなると着色するアミノ・カルボニル反応が重要な役目をすると考える。

(5) 豚カツ用バター液

 フライ類の製造法は種物に小麦粉などをまぶし、卵を水でといた液を浸してパン粉を押し付けながらまぶす方法で作っている。近年、調理冷凍食品の発達によりてんぷらの手法を加味したバッター液を用いることが多くなった。このバッターは、小麦粉、卵、牛乳、加工澱粉などの混合したものである。
業務用でバッター用市販粉が手に入れば揚げ後の外観、食感、断面の結着性が良い豚カツができる。バッター液の中の全卵は外観、断面の肉とパン粉の剥がれが防止でき、食感のサクサク感もでる。市販粉には澱粉の種類や添加量を変えて食感を改良した製品が多くなってきている。

(6) 豚カツ用油の基本的な配合

 豚カツについて技術的な実験や市場調査をしたが、揚げ油の配合の一例を表7 に示した。これらの基本配合を提案し、後は個別に話し合って試作品を作り、風味試験をした後に現場試験をした。

表7 フライ類・豚カツ用揚げ油
配合例 配合割合
フライ食品 大豆油:パーム油       5:5
菜種油:パーム油       7:3
菜種油:コーン油:パーム油  4:3:3
ハイオレ菜種:パーム油    6:4
ハイオレ菜種:大豆油     6:4
菜種油:大豆油:パーム油   4:3:3
豚カツ 菜種油:コーン油:パーム油  4:3:3
ハイオレ菜種:パーム油    6:4
ハイオレ菜種:大豆油     6:4
菜種油:大豆油:パーム油   4:3:3
菜種油:パーム油:ラード   60:35:5
鈴木修武:大量調理における食用油の使い方 幸書房より

5.おわりに

 豚カツは調理から言うと非常に難しい揚げ物で、豚肉、パン粉およびバッター粉と揚げ油でこの三者でいかにして揚げるかである。ここで重要になるのはフライヤーを含めた調理機器である。油の説明に行った訪問先で、フライヤーの選択の話になり、訪問時間の三分の二くらいとなり、最後にフライヤーメーカーでないので説明できないと苦し紛れに言った苦い経験がある。

 油の現場試験後に、適切なフライヤーの選定や揚げ方などの試験にもパスし油が納入されたので、提案型営業の成功例であったと考えられる。

フライヤーとろ過機は豚カツのチェーン店舗も難しい問題であるが参考になれば幸いです。

 豚カツ以外にスーパー惣菜、外食産業など得意分野を提案型営業で販売した結果、パーム油商品は、当初数百トンから15年後、一万五千トン前後になり成功したと言える。その後、油脂業界は統合され二大勢力になった。

食品産業は徐々に変化するので画期的な技術は生まれないが、絶えず変化しないと競争に負けてしまうのではなかろうか。時代に合った変化こそ企業繁栄への道と思われてならない。

参考文献
1) 鈴木修武、加藤昇:豚カツ製造と植物油 杉山産業化学研究所年報(2002)
2) 鈴木修武:大量調理における食用油の使い方 幸書房(2010)
3) 鈴木修武:技術資料(ホーネンコーポレーション)