ビール造りにおける安全・衛生・品質の管理について

ビール造りにおける安全・衛生・品質の管理について
-安心しておいしくお飲みいただくために-

2018年6月5日例会講演会記録

キリンビール株式会社 取手工場 副工場長 技術士(農業部門/総合技術管理部門)
高橋裕二

 ビールの基本形は、麦芽・ホップ・酵母で造ることができる。シンプルな原料であるが、製造条件によって様々な風味を持ったビールの製造が可能である。これに副原料として、麦、米、とうもろこし等が使えるので、組み合わせによって風味の多様性は広がる。さらに2018年9月30日の法改正によって、麦芽比率が67%以上から50%以上に、そして果実や一部の香辛料が使用できるようになり、その多様性は一段と広がり、ビール好きの楽しみは広がる。

 ビールの製造から販売までの工程には、原料選別、麦芽製造、仕込み、発酵、貯蔵(熟成)、濾過、充填、流通、店頭陳列や飲食店での提供がある。原料選別にはカビ毒や農薬などの安全リスクが存在する。仕込みでは混濁、発酵と貯蔵(熟成)では酵母の死滅と異臭の発生、濾過では有害微生物の汚染と炭酸ガスの分離による噴き、流通及び店頭・飲食店での販売では酸化臭・日光臭・害微生物の汚染などのリスクや品質影響を与える因子がそれぞれの工程で存在する。

 麦芽の製造から仕込み工程までを例に取ると、麦に水分を与えて最初に根が出て、次に芽が出たところで乾燥することにより、ビールの製造に必要な澱粉やたんぱく質などの成分を効率よく、そしてアミラーゼやプロテアーゼ等の酵素を得ることができる。さらに乾燥後の焙煎の程度で色や香ばしい香りが決まり、次の仕込みの工程では、プロテアーゼとアミラーゼの至適温度に温度を多段階に変えることによってたんぱく質や澱粉を発酵に適した成分に変える。同じ原料でも製造条件によって中間成分が異なり、結果的に最終製品の品質が異なったものになるということになる。

 高橋氏の経験によると品質は仕込み4割、熟成4割、濾過2割の割合で決まるとのことである。ビールは複雑でデリケートな飲み物で、製造から販売まで安全・衛生・品質に影響するリスクが存在する。私たちがビールを美味しく安心して飲めるのは、これらのリスクが顕在化しないよう幾重にも工程管理のハードルが設けられていることによるものである。いつもおいしくビールを飲むだけであったが、改めてビールが複雑でデリケートな飲み物であることを認識した。

(文責:食品技術士センター)