水産加工業における変化の必要性と連携の意義

第7 回 東京海洋大学・日本技術士会登録食品技術士センター 産 学 連 携 講 演 会 6月5日

「水産加工業における変化の必要性と連携の意義」 

        東京海洋大学海洋政策文化部門 准教授 中原尚知氏

画期的大ヒットの「レモンイカ天」が誕生した現場と社会環境、地域の中小企業が何を考えて行動したか!興味ある売れ筋の解析。そのとき、曲がり角のM社をコンサルしたのは、当センター会員だったことも明らかになった。

 水産加工業は、川上(原材料供給、労働力)と川下(流通構造、市場)の不確実性の高い狭間にあって、資源、市場、環境の変化に対応し続けることが求められている。今回は、尾道のイカ加工メーカーM社の事例をとりあげ、マーケティングや事業システムの観点での分析から、競争優位性の獲得条件について考察した。尾道は、北前船の流通拠点であったことからイカ加工品の生産が盛んで、その生産額が日本一である。市内のメーカーは、イカ加工品をバルク品として卸売するところがほとんどである。

 近年のイカの不漁や消費者ニーズの変化、コンビニなどの進出による流通の変化により、イカ加工品メーカーは厳しい状況下に置かれている。M社もその1社であり、バブル期を頂点に生産、販売が減少の一途をたどっていたが、平成25年にレモンイカ天がヒットし、主力商品となっている。

 このヒット、競争優位性には、製品の差別化と事業システムの差別化によるものと考えられる。製品の差別化では、女性をターゲットにしたマーケティングの4P(女性に受け入れられるProduct、高Priceで販売、川下(Place)からの受注生産、SNSやネット、雑誌等によるPromotion)に基づき製品の企画、販売を行っている。DCFの観点から、M社は、変化に対応した生産力、商品企画・開発力と外部資産(他企業、地元観光協会との連携)による事業システムの差別化を行っている。製品の差別化は、模倣性が高いという欠点があるが、事業システムの差別化は、模倣性が低いため、製品および事業の双方の差別化を行うことで、競争優位性を保つことができると考えられる。さらにこの事業システムを更新し続ける一連の取組が行われ、正のスパイラル効果がもたらされている。