フードサプライチェーンにおけるフードロス削減と利害関係者の役割

2018年7月21日講演会記録

~食料・資源・エネルギー・廃棄物への挑戦~

田中技術士事務所代表 田中 好雄氏 (技術士:経営工学、農業部門 当センター会員)

 田中 好雄氏は、APEC エンジニア、IPEA国際エンジニアとして、JICA事業に長く関わってこられ、東南アジア諸国、南米、アフリカ諸国に対する技術援助で数々の実績を残された。それらの経験をもとに幅広い視野でフードロス削減問題を語られた。

 諸外国と比較し圧倒的に低い日本の食料自給率(39%)。食料の60%を輸入に頼っているにも関わらず、世界の食料支援量約300万トンの2倍の約600万トンを廃棄している実態。このロスが減れば、もっと効率的に消費されることで食料自給率は上がるともいえる。

 世界の総人口が、現在の75億人から2055年に95億人に増加し、食料需要の増加が予測される一方で、9億の人々が飢餓に苦しむ。世界では、年間13億トンのフードロスが発生。この4分の1が削減されるだけで、9億人の栄養不足は解消されるという。国連ではSDGs(持続可能な開発目標)で2030年までにフードロス半減を目標に、フランスの食品廃棄禁止法、イタリアの売れ残り食品寄付に税制優遇、アメリカの持ち帰り食品での食中毒に対して、飲食店側を保護する法律施行など、世界各国でフードロス削減の取組が進んでおり、日本のフードロス削減は、世界から突き付けられた課題である。

 フードロスの現状を見ると、2014年度には食品関連事業者から、規格外品、返品、売れ残りなどで 339万トン、一般家庭からは食べ残し、買い過ぎによる廃棄などで282万トン、合計621万トンのフードロスが発生している。フードサプライチェーンで見ると、表示や品質の基準不適合、食中毒などによる製品回収事故なども含む各段階での様々な要因によりフードロスが発生している。

 加工食品、生鮮食品、日配品、利害関係の4つのマトリックスが、フードロスにおける大きなウエイトを占めているというのが田中氏の持論。加工食品では、3分の1ルール、過度の鮮度志向、リコールなどによるムダが発生。生鮮食品では、生鮮三品の鮮度保持技術向上、開発途上国での生産流通段階でのロス削減がカギ。日配品は、消費期限切れ、需給アンバランスによる売れ残り。利害関係者は、ここでは主に消費者を指していると思われるが、飽食の時代の名残り、「もったいない思想の欠如」などなどが組み合わさって、フードロスを招いていると言い、ここが最も重要だと強調された。

 そもそも田中氏のバックグラウンドは、包装技術であり包装を設計する立場で、賞味期限延長などフードロス削減に貢献できる技術を紹介された。
・チルドビーフに適用されたハイバリア包材(UVCでの殺菌効果について詳述されたが省略)
・青果物から発生するエチレンガスを制御するMA(Modified Atmosphere)包装
・レーザー光線でフィルムに微細な穴をあけて包装体内の湿度をコントロールする防曇フィルム
・レトルト殺菌することでバリア性が向上するフィルム
・逆止弁付き醤油パウチ、ボトル
・撥水性コーティングによるヨーグルトふたフィルム(製品の付着残留防止)
・スライスハム等のリシール容器(食べきりサイズで食べ残し減)
・からし・ワサビチューブの肩部の軟質化(絞り残し減)
などの容器・包装技術が紹介された。

最後に、上図のように、利害関係者それぞれの役割を示された。