ヨーグルト効能の再考

「食品技術士リレーシリーズ」       食品化学新聞2018年7月19日掲載分

足達哲也   千里金蘭大学生活科学部食物栄養学科/技術士(生物工学−細胞遺伝子工学)/
NR・サプリメントアドバイザー

 発酵食品は麹菌、乳酸菌、酵母などを食品加工に活用した微生物利用食品で優れた香りや特徴ある呈味性だけでなく、近年、栄養性や機能性についても健康の維持増進への活用が注目されている。また、その中で乳酸菌により生成された乳酸菌発酵食品、特にヨーグルトは、トクホ登録による一般的な認知度も高まるとともに、新規機能性の研究報告やそれに関連した商品の増加し、食文化の一翼を担っている。ヨーグルト市場は成長著しく、2014年では、5130億円と言われている(チェーンストエエイジより引用)。本稿では、一部ではあるが、ヨーグルトに使用されている乳酸菌の種類に注目し、効能について再考してみる。

 LG21は酸性下で増殖することが可能である乳酸菌であり、胃の粘膜細胞に付着性が高い乳酸菌であることが知られている。胃は消化に関わる胃液は強い酸性なので一般的な微生物は生育が困難であるとされている。しかしながら近年、胃に生息可能なピロリ菌(Helicobacter pylori)が胃の疾患を引き起こすと言われており、胃検査項目にも含まれてきている。酸性環境下の胃において、ピロリ菌は自らの酵素反応で胃酸を中和することで生息が可能であり、生存・増殖するピロリ菌の生成物により炎症を引き起こし、胃潰瘍、進行すると胃がんのリスクが高まるとされている。LG21は酸性環境下で生存が可能であり、胃の粘膜細胞に付着して、乳酸が生成される。ピロリ菌は乳酸に弱いため、ピロリ菌の増殖を抑制することができる。LG21は消化器系の中でも胃に効能を示す乳酸菌である。また、腸の粘膜細胞にも同様に付着し、胃と同様十二指腸潰瘍を引き起こす原因とされるピロリ菌による障害抑制に関与する可能性が言われている。

 ビヒダスBB536は、酸や酵素に対した耐性を示し、生菌状態で腸管まで到達できる乳酸菌である。生菌状態での到達により、腸管内で増殖することによって、悪玉菌の増殖を抑制し、腸内環境の改善に効果を発揮するとされている。また、大腸がんのリスク因子といわれるETBF菌を排除する。さらに、BB536は腸管上皮保護作用があるため、私の研究グループでの研究において、腸管細胞HT29の酸化ストレスにからの保護作用を認めることができた。

 R-1は、OLL1073R-1という種類の乳酸菌である。OLL1073R-1は発酵の過程で多糖類を産生することで、粘性のあるヨーグルトが生成される。OLL1073R-1は乳酸により腸内環境を整える作用があるとともに、多糖類による免疫力を向上する作用があると言われている。
ソフールは、乳酸菌のうちL.シロタ株を主とし、BB536と同様、酸や酵素に対した耐性を示し、生菌状態で腸管まで到達できる乳酸菌である。腸内の乳酸菌を増殖させることによって、大腸菌群(特に悪玉菌)を減少させることが可能であり、腸内細菌環境の改善に効果があると考えられている。

 ガセリ菌(Lactobacillus gasseri: SBT2055)も、上述乳酸菌と同様、酸に強く、生菌状態で腸管内まで到達することが示されている。腸内環境改善化については、他の乳酸菌と同様の機能であるが、近年の臨床研究において、コレステロールを下げることによる動脈硬化のリスクを軽減する働きや、内臓脂肪を減らす役割があることも示されてきている。ガセリ菌による乳成分の発酵により得られるさまざまな物質によって、コレステロールの吸収抑制や吸収された発酵成分が内蔵脂肪の燃焼に関わっているものと考えられているが、詳細な機能性については今後明らかになってくるものと思われる。

 このように一口にヨーグルト・乳酸菌といえども、さまざまな機能性が言われ、特定保健用食品などの健康食品として、国内に出回っている。今後、多種の乳酸菌について、次世代シークエンサーなどが駆使されて、各種機能性に関わる遺伝子が明らかになるなど、さまざまな研究が進められることによって、身近なヨーグルトに多種多様な機能性が付与されていくと考えられる。その研究開発の発展には大いに期待したい。また同時に、消費者目線においてヨーグルトの機能性のあり方や表示についても、各社において検討していただきたい。

(食品化学新聞社の許可を得て掲載しております)