ごま油の製法とその香味特徴

「食品技術士リレーシリーズ」       食品化学新聞2018年8月16日掲載

中谷明浩   技術士(農業部門) (株式会社J-オイルミルズ商品開発研究所)

1.はじめに
 中華料理にはもちろんのこと、和食にも欠かせない「ごま油」。一般的に「ごま油」といえば「焙煎ごま油」のことをいうが、焙煎香味のしない「太白ごま油」もあり多彩な品揃えを見せる。「揚げ油」から食欲を刺激する香ばしい「香味油」まで様々な調理用途性を持ち、調理場には必ずといってもよい程に備えられている「ごま油」について、本稿では「焙煎ごま油」の「焙煎と風味」について述べてみたい。

2.焙煎ごま油の風味と製法
 焙煎ごま油には、ごま種子の焙煎度合いが強い濃口タイプ、焙煎度合いの弱い淡口タイプ、またはそれらの配合調製されたタイプのものがあり、これらの香味特徴も様々である。一般的には、熱風処理により品温を180℃~210℃程度に加熱し※1、以降、エキスペラ等による圧搾法により採油され、不純物等を除去した後に製品となる。一方で、上述の焙煎法では淡い色調で淡白な風味である焙煎ごま油を製造することが難しく、この課題を解決する方法として「遠赤外線」を用いた焙煎法がある※1。
 このようにして、焙煎度合いに違いや製法の違いにより様々なタイプの焙煎ごま油があるが、それらの違いにより具体的にどのような香気成分がどのように変化するのだろうか。

3.焙煎ごま油の製法による香気成分の違い
 中田ら※2によれば、市販品、熱風焙煎品、及び遠赤外線焙煎品合計29品の分析、及び関連する研究結果により、ごま油の特徴香気成分としてアルデヒド類、ケトン類、アルコール類、ピリジン類、及びピラジン類等である37成分が関与していると述べている。さらに上記29品間の香気特性の違いに寄与していると考えられる成分としてethanol、pentanal、hexanal、2-propylpyrazine他8成分等が確認され、pentanal、hexanal等の油脂の劣化臭気成分が比較的多く挙げられていることが興味を引くところである。さらに、熱風焙煎と遠赤外線焙煎には香気成分の挙動にも違いがあり、熱風焙煎の場合は、4-dimethylthiazole、2-ethyl-6-methylpyrazine 他14成分等がその焙煎度合いが強くなるにつれ相対的に増大するのに対し、遠赤外線焙煎では焙煎度合いが強いほどheptanal、2,5-dimethylpyrazine 他2成分が増大する一方で、焙煎度合いが弱いほど逆にethanol、pentanal 他7成分が増大していると報告している。これらの違いが遠赤外線焙煎におけるごま油の「淡い色調で淡白な風味」となる理由の一つと想像することができ、焙煎の奥の深さを感じるところである。

4.おわりに
 ごま油の特徴のひとつとして、他の油脂にはないセサミン等の機能性成分を含み、栄養学的にも注目される食材であることを付言しておきたい。本稿ではごま油の「焙煎風味」に注目をして述べたが、焙煎によって特徴を醸し出す食材は他にもあり、例えばコーヒー豆、茶葉(ほうじ茶)、玄米、大麦、ピーナッツ、アーモンド、及びマカダミアナッツ等があげられる。これらはいずれも製品ごとにそれぞれの特徴を有し品揃えも豊富である。焙煎によって醸し出される風味は人それぞれの嗜好性にもよるが、やはり食品のおいしさに寄与していることは間違いないといえる。このような点からも「焙煎と食」の奥の深さを感じつつ、今後の展開に期待したい。

参考文献
※1:特開平3-41194号公報
※2:中田勇二・林寿一・下田満哉・筬島豊(1998) ごま油香気成分のGCデータの多変量解析 日本油化学会誌 第47巻 第3号257-261

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