世界初 カフェインゼロ緑茶飲料

食品技術士センター 講演記録 2018年8月18日

塩野貴史氏 キリン株式会社 
R&D本部 酒類技術研究所 主任研究員、技術士(生物工学部門)

 「デカフェ」という言葉をご存じでしょうか?まだ知名度15%です。カフェインを除くこと、そして除いた飲料のことです。いまデカフェの市場は伸びています。
 コーヒーや茶からカフェインを除くのに、従来技術では、コーヒー豆や茶葉からカフェインを抽出していました。しかし、これでは美味しさも一緒に抜けてしまうので、新技術を開発したのです。それは、コーヒーやお茶として抽出した飲料からカフェインを除く技術で、しかも1mg/100ml以下に減少でき、美味しさは損なわないという技術です。

 社内では、商品シリーズとして一方でカフェインが入っているコーヒー、紅茶、濃いお茶などを販売しているのに他方でカフェインゼロを販売するのはいかがなものかという意見もあったが、マーケットが広がっている、さらに妊婦さん、夜に甘くない飲料を飲みたいがお茶を飲むと眠れなくなるという方々もおられる。「カフェインゼロ」を求めている消費者は確実に存在するとなり、カフェインゼロ技術開発に取り組みました。キリンのモットーは、「飲み物を進化させる、驚きを与える商品を作る」なので、まさに線に乗っています。
 ドーパミンは、シナプス前膜から放出され硬膜に伝わって興奮を伝達します。ドーパミンとともに放出されたATPはその後分解されてアデノシンとなりこれがシナプス前膜に結合して、ドーパミンの放出を抑制するシグナルを発生させて、ドーパミンの放出が減少し、興奮を抑えます。アデノシンは、睡眠誘発物質といえ濃度が上がると眠くなるのです。一方、カフェインは、アデノシンに似た構造の化合物で、アデノシンに拮抗して受容体に結合して機能を阻害するので、アデノシンがあってもドーパミン放出抑制作用を起こせなくなり興奮が持続するのです。受容体が遺伝的に異なった人がいることがわかっており、日本人は欧米人よりカフェインに過敏なタイプの遺伝子を持つ人が多く、少しのカフェインでも眠れなくなる人口も多いのです。

 カフェインの覚醒作用の半減期は、成人で4~8時間とされています。統計では、日本人のカフェイン摂取量は、約250mg/日で半分をコーヒーから、残りをお茶から摂取しています。お茶のカフェイン濃度はコーヒーより低いが、お茶を飲む量が多いので半々となっています。ちなみにキリンの缶コーヒーFireは、1本で259mgのカフェイン(一番高いタイプ)も販売しています。
 カフェインそのもの味は、渋みに関連しています。また、お茶を冷やして保存すると濁りを発生させる原因になります。

 カフェインだけを取るには、加熱によって結晶として取れます。茶葉をアルコールランプなどでゆっくり加熱すると針状結晶として純品が析出する。しかし、これでは茶葉は痛みお茶としては使えません。
  カフェインは除去するが、茶のうまみは損なわない種々の方法を日夜探して、試して、ついにモンモリロナイトにたどり着きました。シリカ層とアルミナ層でできている粘土鉱物の一種で日本でも良質のものが採掘できる。微量物質の吸着によく使われる活性炭と比較して、モンモリロナイトは、カフェインは吸着するが、香りやうまみカテキンを吸着することはなかった。 

 モンモリロナイトを上手に使うために含有される不純物に着目しました。お茶は、鉄やカルシウムが共存すると色濃くなり、濁ったりします。モンモリロナイトの含有されている鉄やカルシウムを除く工夫をしました。これらのカチオンを他のカチオン、K、Mg、NH4などで置換することによって、カルシウムと鉄の影響を排除することに成功して、放置しても濁らないお茶を達成できました。

 モンモリロナイトを上手に使うためデカフェの条件をいろいろ実験した結果、カフェインの吸着速度は速いこと、飲料のpHや温度の影響も受けずに吸着され、さらにカフェインを含む飲料が紅茶であっても緑茶効率よく吸着することもわかり、工業化を達成しました。

 食品表示において、「デカフェの表示」は、コーヒーでは90%以上のカフェインを除くことによって記載することができる基準ありました。しかし、お茶においては、基準そのものがなかったのです。そこで、カフェイン濃度を絶対値でとらえて、100mlあたり1mg以下の濃度の時に「カフェイン・ゼロ」の表示をすることにした。今後これが基準値となるように働きかけていきたいと。

 講演者は、幼稚園でもプレゼンをされているとのことで、いろいろな方々、消費者となる方々との直接的なコミュニケーションの機会を作っておられるようだ。わかりやすい楽しい講演会でした。

(文責:食品技術士センター)