真空技術・プラズマ技術の基礎と食品製造への応用

2018年9月15日講演録

「真空技術・プラズマ技術の基礎と食品製造への応用」
坪井秀夫氏 
合同会社 坪井技術コンサルタント事務所代表社員
 (技術士応用理学部門)

 演者は、真空技術では先端企業のアルバックに長く勤務され、真空技術やプラズマ技術の最先端開発を担当された。退職後関連のコンサルとして国内外に活躍されている。ご講演では、真空技術やプラズマ技術に関し、基礎から応用までの概要を話された。真空産業の技術発展の歴史から、プラズマへの利用へと展開された。食品産業においては凍結真空乾燥とアルミ蒸着等の話でした。ご講演の要旨をまとめました。

「真空」の定義にJISがあることをご存じでしょうか?「大気圧より低い圧力の気体に満たされた囲われた空間の状態」です。大気圧より少し低いだけでも囲われた空間だと「真空」と定義されるのです。

 真空技術が飛躍的に発展したきっかけは、イオンビーム加速器の建設でした。イオンを高速で走らせるための超低圧の長いトンネルです。大きな体積を超低圧に保つ技術、すなわち高性能ポンプ、チューブ素材と構造そして壁の加工技術、チューブ素材の連結のためのシール技術とたくさんの新技術が投入されて大型真空装置が作れるようになったのです。

 大気圧の中で大型真空装置を作る困難さは、具体的に考えてみるとよく理解できます。大気圧は、1平方センチあたり1Kgがかかっています。面積が1平米だとすると、体重70Kgの人が143人乗っていると同じ重さにあたります。これに耐える構造物を作る技術なのです。

 その構造物の中の気体を抜くためには、メカニカルポンプを使いますが、可能なのは低真空までです。高真空にするためには、さらに分子ロータリーポンプによってさらに吸引します。そこでは空気を引いているのではないのです。分析してみると、すでに空気はなく、水を引いている。内壁の表面および中にある水なのです。さらに真空度が上がると水素を引いていることがわかりました。高真空に達するには吸引能力の高いポンプが必要なのです。
 シジミの味噌汁の真空乾燥が出来るまでにはこのような技術革新に支えられねばならなかったのです。

プラズマ技術の開花
 プラズマは、原子のなかの電子、中性子、陽子がばらばらになって動ける状態のことを言い、稲妻のように高電圧がかかると大気中でも起こるが、発生させやすいのは真空中です。高真空を保てる環境が達成されプラズマ技術が発展することとなった。さらに磁化プラズマは、磁力をかけることによって磁力線にそってイオンが流れる現象で、プラズマの精密なコントロールを可能にした。

プラズマ技術は、応用方法を開発するのが勝負なのです。
プラズマでもっとも有名なのが、工作機械としての利用で、極小の穴でも開けることが出来る技術で半導体製造にはなくてはならない技術となっている。

プラズマでの工作は次の3つのパターンとなる。①積層する。箔層作成技術。②削る。エッチング技術。③変える、変質させる。イオン注入して電気的特性を変える技術。これらの仕掛けは同じなのだが、加工面の電気レベルの相違によって達成できる。
① は、比較的弱い電位差をつけると加工面の上に箔層を作ることが出来る。
② は、より強い電位差に設定するとエッチングとして表面を削ることが出来る。
③ は、もっと大きな電位差をつけると加工面の内部までプラズマが突き進んで行くことから加工面の深くから性質を変える化学変化を起こすことが出来る。

ポテトチップスなどのパッケージにはプラズマ技術が使われている。酸素と光による油の酸化を防ぐため包装資材の内側にアルミ蒸着が行われている。これは高真空の中でプラズマを発生させて蒸着している。1万枚くらいつながっている包装資材全体を大きな真空室に入れてプラズマを発生させて製造している。

CMA図これは、Clemmow-Mullaly-Allisの3人の名前の頭文字を題名にした図です。いわゆる冷たいプラズマ中の波動の伝搬を総合的に表現したものです。この図が腑に落ちると感じられるようになって、やっとプラズマの世界で仕事がしていけると自信が持てたことを思い出すとのことでした。

 真空にしなくとも大気圧プラズマというのもある。空気では稲妻のようなプラズマしか飛ばない。空気を酸素やアルゴンに置き替えるとプラズマを発生させられる。酸素を流し続けてプラズマを発生させるとオゾンを作ることが出来る。農産物の滅菌や殺菌に使用できる。

(文責:食品技術士センター)