東京海洋大連携講演会その2「食品にかかわる学生との意見交換会」

食品技術士センター 講演会報告書

「食品にかかわる学生との意見交換会」

  食品技術士センターから会長が小プレゼンしたのち、3人の修士コース修了予定の学生が、この春の学会で発表予定している研究成果をプレゼンした。参加した技術士からの質問を受けて、学生達は学外の意見を意識した応答をするという他流試合の演習ともなった。研究発表した学生3名の他に、学生十数名が参加して、会場設営のお手伝いからクイズ回答、そして懇親会での交流とにぎやかに参加してくれ老若入り交じった貴重な会となった。東京海洋大学との交流には、湯川剛一郎教授の定年退職に伴い、本年度から食品生産科学部門の濱田奈保子教授を中心としたメンバーに受け継がれた。今回は本年度2回目のジョイント交流会となった。

  当センターを代表して浅野会長から「社会に出る学生に技術士から送る3つのメッセージ」を小プレゼンして会を始めた。次が概要だ。メッセージ1)JABEE校修了者となられる皆さんは、技術士の1次試験が免除になる。将来の目標として2次試験を突破して技術士になることを目標の一つとすべし。2)学生が企業を思い浮かべるときはBtoCの企業ばかりだ。でもBtoBの企業も知ろう、と10の企業名を出して知名度クイズをした。一般には見えにくいがBtoBにも重要な動きがあり、特に技術屋が興味を持つ企業はBtoBが多いのが特徴。3)「食材が変わりつつ」ある。美味しさ栄養素などの解析が進んだだけでなく、狙って育種改変した特徴的な食材が続々出てきた。これに応じて、食の設計、調理加工も進化しつつある。「栄養学」が変わりつつある。種々の栄養成分についてのヒト試験が活発に行われている。良いと言われていた「栄養バランス」も中身が変わりつつある。前項も合わせて「食文化が進化しつつある」ことが食産業のおもしろさだ。

  学生からの発表は、学会発表前なので詳細は記載できないが、アンジオテンシン1変換酵素阻害剤に関する研究が2題、食品企業での排水処理の状況が1題であった。前者の課題では、それぞれ食材を微生物処理して、さらに加工工程も加えての血圧上昇抑制活性を高血圧自然発症ラットを用いて投与試験を行った。例えば、日高昆布を納豆菌で発酵させた加工品での血圧上昇抑制効果、さらにアワビ内臓を麹菌によって発酵させた食材での血圧上昇抑制効果も測定され、抑制物質も特定されていた。そして、排水処理の課題では、耐塩性の糸状菌Pestalotiopsis属を用いた環境浄化。合成染料の脱色が特徴で、セルロースも分解できるので古紙を炭素源として菌をセレクトし育成した。セルラーゼやラッカーゼの酵素活性を測定した。表面形態も走査型電子顕微鏡で調べた。それぞれの発表に対して活発な質疑応答となった。

Q:なぜ日高昆布になったのか?A:えりも町の方からの申し出があったので。Q:アワビ内臓の発酵物に活性があるのはおもしろい。他の貝は?A:まずはアワビを扱った。アワビの廃棄物の内臓が増えている。食品としてすぐ利用できる段階にはなく、まだアワビ内蔵の匂いがすることと、重金属が気になる。技術士からは、内容に対する技術的観点からのたくさんの質問に加えて、かつて機能性食品を開発製造、販売した苦い経験なども披露され、もりあがった。あるいは、血圧降下剤を病院からもらえば月千円くらいなので、これに対して、手間をかけて販売価格が高くなりやすい機能性食品を使用することへの対応を考えないといけない。技術者とマーケットのつながりを考えるようになるだろう。現場を説得する方法は、類似食品と差別化せねばならない、などの視点も述べられた。大学との交流に当たっては、学生は卒業に向けて、まだ詰め切れていないところもあるが、時間で切った部分もある研究発表であることも視点として必要である。学生達が、社会へ出て、当センターへ参画してくれる日を楽しみにして交流会はお開きとなった。