食品または微生物検査における遺伝子検査

講演記録 2018年12月15日

食品または微生物検査における遺伝子検査
~リアルタイムPCRを応用した最近の知見について~
中筋 愛氏
タカラバイオ株式会社 営業部


 
ご講演は、DNAそしてPCRの原理から始まって、特異的な遺伝子の増幅によって特定の微生物やウィルスあるいは動物種を見分けると言うPCRの技術そして、定性だけでなく定量も可能となったリアルタイムPCR技術、そしてPCR反応がとても使いやすくなって、利用用途も広がってきたことをわかりやすく説明された

PCRの原理
 検出したい生物のDNA上の特定の場所に相補的に吸着するDNAをプライマーとよび、それに続くDNAを複製する反応を起こし、その結果、特定の遺伝子を2倍に増幅するのがPCRの1回の反応で、この反応をねずみ算式に最大40回繰り返して反応させると、もとの100万倍の遺伝子量にもなる。イメージとしては小さな点だと見えないが、小さな点でも100万個もあるとはっきり見えてくる、という感じだ。
 
増幅された2重鎖DNAを検出するのに当初は、蛍光を発する試薬を用いるインターカレーター法が使われ、この発色法は試薬が安価な方法である。伸張した2重鎖DNAに非特異的に結合して蛍光を発する。コストは安いが、区別がつかないので用途が限られる。特定のプライマーには、特定の色の傾向が出るようにした試薬を入れて反応させると複数のプライマーを同時に入れて反応させても、それぞれの反応を蛍光色で区別して測定することができる。
 
今日、話題にしているリアルタイムPCRは、DNA増幅の40回の反応を連続的にモニターして増幅の過程を図示してS字状のカーブを描かせる。資料中に遺伝子量が多ければS字は早く立ち上がる。これによってもとの遺伝子量を定量する技術だ。
 リアルタイムPCRを使うことによって定性的ではなく、定量的に対象微生物の存在量を測定することができるようになった。しかもそれが簡単にできるようになったことが最近の特徴である。

 
図1 リアルタイムPCRでの蛍光の立ち上がり

便利なオールインワン試薬キット  
 「簡単になった」部分は反応に使う試薬類がキット化されて単純化され、反応容器に入れて反応を始めれば良い!と言うような簡単さんのレベルまで達している。
 
例えば、糞便中のノロウイルスを測定するキットの前処理の簡素化は驚くべき進歩があった。従来は糞便に含まれる反応阻害物質を除く洗浄を行い、RNAを調整して逆転写酵素でDNAにしてそれからリアルタイムPCRをすることによってノロウイルスの個数を測定することができていた。今や洗浄工程も不要でいきなり反応することが可能になった。前処理技術の間簡素化が進み、いきなり反応キットに入れるだけで測定ができるレベルにまで簡素化されたことは、前処理技術の上手下手に関係なしに測定が可能となったことを意味している。リアルタイムPCRが使いやすくなって、PCRの活用範囲が広がっている。
 
リアルタイムPCRの機械は、PCR反応器の上に蛍光検出器が乗った形となり単純な組み合わせ。初心者でも簡単に取り扱えるように操作性の改良や操作プログラムの使いやすさ、日本語ソフトなどを用意してユーザーフレンドリーである。値段も下がってきている。

                     
図2 PCR反応器

生菌だけ検出するための技術 
 生菌だけ検出するためには、PCRの反応に入る前に生菌と死菌とを分ける操作をする。サンプルにEMA(Ethidium Mono Azide)を入れる。EMAは、膜が壊れた細胞(死んだ細胞)なら細胞内に入ってDNAと結合してPCRの反応が起こらないようにすることによって、死菌と生菌を区別している。しかし反応には注意も必要で、死菌が多い資料には、EMAの量を増やさないとならないし、一方、高濃度すぎると生菌でのPCR反応を阻害するので、添加濃度の調整が必要となってくる。

 
図3 EMA PCR

 厚生労働省は、昔は培養法が公定法として推奨していたが、最近はPCRを積極的に利用するように通知しており、腸管出血性大腸菌では、種々のO(オー)抗原に対応する検査法の通知、ノロウイルスおよび寄生虫のクドア、水質管理部門でもレジオネラおよびクリプトスポリジウムについてもPCR検査の通知を出している。 
 一方で、いくら簡単にPCRができる様になったからといって、どこかで操作を間違う可能性も考慮して、必ず反応するインターナルコントロールを必ず入れて偽陰性をチェックすることも通知されている。

一般生菌数をその日のうちに定量できる 
 菌種別ではなく、すべての菌の数を測定するための検査法も開発された。菌種別で用いる16SrRNA遺伝子は、菌種間でコピー数が異なる特徴があり使えない。そこで、菌種間の保存性が高く、染色体上に低コピー(1または2コピー)存在しているタンパク質伸張因子Tu(tuf)遺伝子を検出対象として、一般生菌数の定量を可能としている。

米の品種識別
 コシヒカリが入っていたら検出できるというキットだ。コシヒカリ以外の60種の米とは反応せず、コシヒカリのみと反応して定量する。

動物種の識別もできる
 肉の動物種の識別のために6種類の動物種を識別できる反応キットも販売している。ミートホープの食肉偽装が話題になった頃(2002)は、肉識別プライマーキットがよく売れた。工場のアレルゲン管理の観点から、製造ラインの切換に伴う洗浄が十分に行われているかを判定する方法の一つとしても使用されている。


図4 動物種を区別するリアルタイムPCR

(文責:食品技術士センター)