SDGsを知って、取り組もう

食品化学新聞 食品技術士リレーシリーズ  2018年10月11日掲載

田村 巧    技術士(生物工学部門・総合技術監理部門)

CSR、ISO、HACCP、IoTやAIのように、英単語の頭文字をつなげた略語のことを「アクロニム(頭字語)」と言うのだそうだ。こうした略語のおかげで、知っておくべきビジネス用語が増えて仕方がない。NHKが放送局の名前だったり、AKBが秋葉原のことだったりするのは、正確に知らなくても困ることはない。しかし冒頭の用語のような、ビジネスシーンで重要な類となると、知らないうちに常識のレベルになっていることもあり、慌ててしまう。いっそ禁止になれば余計な知識を習得する必要がなくなるので良いとも思うが、ときにホームページのことをHPと書きたくなる自分がいるから、厄介である。

・SDGsとは
SDGsという略語をご存じだろうか。「エスディージーズ」と読む。アクロニムに略す前の言葉は「サスティナブル・ディベロップメント・ゴールズ」という。訳すと、「持続可能な開発目標」となる。どうにも分かりにくいためか、いまだに認知度は低い。2017年の調査では、企業の経営陣にSDGsが定着していると回答した日本企業はわずか36%、中間管理職では9%にとどまっている(グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンと地球環境戦略研究機構の共同調査、図1)。

図1 組織における認知度
(SDGs日本企業調査レポート2017年度版「未来につなげるSDGsとビジネス~日本における企業の取組み現場から~」より引用)

・17の目標
SDGsは、2015年の国連サミットで採択された。世界で解決すべき課題を17の目標として設定し、さらに169項目の具体的なターゲットを挙げている。それらの目標には2030年までの15年間を一区切りとし、それまでに到達すべき基準となる数値「ゴールズ」が設定されているものが多い。これを国連加盟国全体で取り組み始めた。17の目標は、以下の通りである(図2)。①貧困ゼロ②飢餓ゼロ③健康と福祉④質の高い教育⑤男女平等⑥清潔な水とトイレ⑦クリーンなエネルギーを供給⑧働き甲斐と経済成長⑨産業と技術革新⑩不平等の撲滅⑪持続可能なまちづくり⑫責任ある消費と生産⑬気候変動対策⑭水中の生命⑮陸上の生命⑯平和と公正⑰目標に向けたパートナーシップ

図2 SDGsの17の目標

 ・取り組むメリット
企業がSDGsに取り組むメリットとしてまず挙げられるのは、株主の満足度向上である。昨今、投資対象の評価条件として、ESG(環境貢献、社会貢献、企業ガバナンス)が重要視されている。こうした背景を好機と捉え、いち早くSDGsに取り組むことで、他社との差別化を図ることもできる。むしろ、取り組まないことで、ビジネスチャンスを喪失するリスクは大きい。

・食品企業として取り組む
企業、特に食品会社としてどのように取り組めばいいのかを考える。まずは、17の目標と自社の取組みをマッチングさせることから始めることが推奨されている。たとえば、筆者が勤務する工場は、酵素の製造がコアビジネスである。当社の食品用酵素を使用した製品を摂取することで、健康維持につながっているならば、健康と福祉に貢献していることになる。ほかにもバイオエタノール生産に供する酵素は環境保護に、また酵素を使用することで電力や熱エネルギー削減に寄与する事例もある。これらはいずれも二酸化炭素排出削減と関係している。あるいは食品工場においては、食品残渣低減や、容器包装の簡素化などは、環境保護と結びつく。このように、新しいことを考える前に、すでに取り組んでいることを省みることが、SDGsへの対応の第一歩である。次のステップとして、この枠組みを利用して、さらに利益を生み出す仕組みを戦略的に考える。SDGsへの取り組みは決して難しいことではない。

・身近な課題から取り組む
日本が直面している男女共同参画、働きかた改革、省エネ、健康寿命伸長などの課題も、SDGsの守備範囲である。これらについて、政府のSDGs推進本部は「SDGsアクションプラン2018」として公表し、取り組んでいる。こうしてみると、地球社会とわれわれの生活とは、共通する課題が多いことがわかる。これは、必ずしも世界に目を向ける必要はなく、身の回りの問題を解決することも、SDGsにつながる行動であることを意味している。

・古来の哲学に通じる
SDGsのスローガンは「誰一人取り残さない」である。SDGsは、自分一人だけではなく、みんなが心地よく生きるために、行動しようと呼びかけているように思える。こうした考え方は、日本には昔から存在した。それは近江商人の有名な哲学「三方よし」である。「売り手よし、買い手よし、世間よし」はまさに企業活動とSDGsをつなげる概念ではないか。サッカーワールドカップを観戦しながら、世界の中の自分を見つめて、世間よしを考えることも、ときにはいいと思った。

食品化学新聞より許可を得て掲載しております。