私が「生サバ」を食べないのは(続)

  食品化学新聞 食品技術士リレーシリーズ 2018年12月6日号掲載

木幡 守   技術士(生物工学部門)木幡技術士事務所

 前回、「私が生サバを食べないのは」と題して投稿した。今回はその続編である。私はサバの塩焼きや味噌煮を食べても問題ないが、生サバを食べてジンマシンを数回体験したのが食べない理由である。岐阜大の粕谷教授らによると、サバによるジンマシン患者の大部分は、アニサキスによるものが原因と考えてほぼ間違いないとのこと。
正直に言うと、生きたアニサキス幼虫を食さなければアニサキスアレルギーは起こらないものとの勘違いしていた。アニサキスはマイナス20度で24時間以上の冷凍保存か、70度以上の加熱で死亡するので、調理法に気をつければ問題ないと思っていたのである。
   ところが、国立感染症研究所などの報告などによると、アニサキスアレルギーは生きた虫体によるアニサキス症(典型的な胃アニスサキスでは、激しいみぞおちの痛み、悪心、嘔吐)に伴って起きる場合と、虫体が死んだ状態の魚介類の摂取による場合があると解説している。

1.アニサキスアレルギー

   アニサキスアレルギーによる疾患は、ジンマシンや血管性浮腫、気管支けいれん、アナフィラキシー(全身の発疹、呼吸困難、血圧低下、おう吐)などである。
   アニサキス症に伴うアレルギーの発症は、生きたアニサキスの消化管への侵入までの時間に依存して、発症までの時間は生食後数分から数時間と幅が広い。それに対して、死んだ虫体によるアレルギーは、食物アレルギー同様、食べてから速やかに発症すると考えられている。

2.アニサキス抗原の特徴

   アニサキスのアレルゲンのコンポーネントは単一でなく、15種類の分子種が同定されているが、これらの臨床的意義はほとんど解明されていない。
   アレルゲンとなりやすい分子量2万以上と、それ以下の成分に分画して熱耐性(100℃、15分)を見ると、分子量2万以上の成分は耐熱性であった。一方、分子量2万以下の成分は、熱処理で抗原の強度が有意に減るが消滅はしなかった。すなわち、サバを完全に加熱調理しても、耐熱性のアレルゲンが食品の中に残る可能性があるということである。
   また、アニサキスのアレルゲンコンポーネントのある成分は、回虫のアレルゲンとアミノ酸配列で約60%の相同性を有する分子量1.5万の耐熱性の蛋白で、交差反応を示すとのこと。このことは、肉類の内臓料理(ホルモン焼きなど)の摂取後にサバアレルギーと同様のジンマシンを発症することもありうるので要注意というわけである。

3.アニサキスへの予防・治療方法

   アニサキスアレルギーへの治療は、急性の場合はステロイド剤、慢性の場合は抗アレルギー・抗ロイコトリエン剤、抗ヒスタミン剤が有効という。

4.アニサキス食中毒の発生状況

   日本には海産魚介類の生食を好む食習慣があるため、諸外国に比して圧倒的に多数のアニサキス食中毒患者が発生している。厚生労働省の集計で、アニサキス食中毒の患者が、2010年には29名であったが、13年89名、15年133名、2017年240名と激増している。専門家によると、アニサキス食中毒が急増したのではなく、その認知度が高まったためであり、年間の患者は約7千人と推定しているとのこと。
   アニサキス幼虫が寄生する魚介類は、サバ、ホッケ、キンメダイのほか、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなど近海で漁獲されるものでも160種を超えるそうである。

食品化学新聞より許可を得て掲載しております