私が「生サバ」を食べないのは

食品化学新聞 食品技術士リレーシリーズ 2018年6月21日号掲載
  木幡 守 技術士(生物工学部門)木幡技術士事務所

 私はサバの塩焼きや味噌煮など加熱処理したものはよく食べるが、唯一食べないのが「生のサバ」である。これには刺身も、しめサバも含まれる。それはこれまで生のサバによるジンマシンを数回体験したからで、それはヒスタミンに起因し、ヒスタミンは加熱処理で効果が無くなるから、と勝手に思い込んでいた。

 だいぶ前の食品技術士センターの講演で、ヒスタミンは加熱では失活しないことを聞き、これまで信じていた根拠がなくなり、調べて見ることにした。
サバジンマシンはサバを食べて必ず起こるというものでなく、体調の悪い時に起こる。サバを食べてジンマシンが出た場合は、次の4つが考えられている。①サバアレルギー、②魚アレルギー、③ヒスタミン食中毒、④アニサキスによるアレルギー。

サバアレルギー
 生サバや加熱調理したサバを問わずサバを食べたときだけジンマシンが出るが、他の魚を食べてもジンマシンが出ない場合は、純粋なサバアレルギーの可能性がある。これはサバに特異的なアレルゲンの存在を思わせるが、調べた範囲ではそれが本当に存在するのかどうか分からない。

魚アレルギー

 魚種にかかわらず共通に含まれる主要なアレルゲンは、魚の筋肉に含まれるパルブアルブミンとコラーゲンである。日本人には魚アレルギーは多くないとのこと。アレルギーが起きやすい魚は、アジ、イワシ、カレイ、サケ、サバ、タラ、サンマ、マグロなど。また、魚の部位で異なり、頭部に多く、尾部にかけて低下する。パルブアルブミンは分子量1.2万の脊椎動物特有の水溶性タンパク質で、加熱に対して非常に安定である。

ヒスタミン食中毒
 サバアレルギーに似た症状を引き起こすのがヒスタミン食中毒である。これまで食物アレルギーを起こしたことがなければ、サバアレルギーでなくヒスタミン食中毒の可能性が高い。

 サバのような赤身魚の筋肉にはアミノ酸のヒスチジンが多く含まれている。魚の保存温度管理が悪いと、増殖したヒスタミン産生細菌によりヒスチジンはヒスタミンに変えられてしまう。このヒスタミンを100ミリグラム以上摂取した場合、サバアレルギー症状と似たアレルギー様食中毒を引き起こすことがある。これは厳密には細菌性食中毒というべきだが、症状が似ているためアレルギー様食中毒と呼ばれている。ヒスタミンは熱に安定で、加熱調理しても消滅しない。

 このアレルギー様食中毒はサバが有名だがサバ以外の魚でも起きる。ヒスチジンは赤身魚(マグロ、ブリ、サンマ、サバ、イワシ等)に多く含まれ、白身魚には少ない。

アニサキスによるアレルギー

 サバアレルギーと似た症状が、寄生虫アニサキスの存在により生じることが多いとのことである。
 サバにはアニサキス幼虫がほとんど寄生しており、そのほか海の魚(アジ、サンマ、カツオ、サケ、イカ)などの内臓部分にも寄生していることがある。食卓でアンコウの肉から生きたアニサキスが出てきたのを見たことがある。
 岐阜大学粕谷研究室のHPによると、サバジンマシン患者の原因の大部分はアニサキスと考えてほぼ間違いないとのこと。
 アニサキスが入った魚を生で食べ食後数時間で、激しい胃痛、吐き気、嘔吐などが見られることが特徴である。
 アニサキスはマイナス20℃で24時間以上の冷凍保存か、または70度以上の加熱で死亡するため、適切な処置をしてから食べれば問題はない。ただし、加熱処理してもアレルギー活性はなくならないとのこと。
 私の場合、「生のサバ」だけが問題で、加熱処理したサバやほかの魚介類は生で食べられる。従って、私のアレルギーは、アニサキスによるアレルギーであった可能性が高いようである。胃痛、吐き気などがあったかどうかは覚えていない。
改めて、「生のサバ」に再挑戦してみようかとも思っている。

食品化学新聞より許可を得て掲載しております