食品衛生管理にふき取り検査の活用を!

食品化学新聞 2014年4月3日掲載

白兼孝雄 技術士(生物工学部門) 白兼技術士事務所

 消費者の食品に対する安全・安心志向の高まりから、食品企業における食品衛生管理の強化が希求されている。
 食品危害には、残留農薬等の有害化学物質による化学的危害、金属片などの異物による物理的危害、微生物等による生物学的危害の3種類がある。中でも、食品の腐敗や食中毒といった微生物危害は健康影響や重篤度が格別に高いため、食品企業では両方の観点から微生物危害の管理を行う必要がある。
①食品の微生物危害のうち、特に食中毒に関連するニュースは枚挙にいとまがないが、食中毒を引き起こす主な原因は、細菌とウイルスである。
 細菌が原因となる食中毒は夏場に多く発生しているが、その原因となる細菌の代表的なものは、腸管出血性大腸菌O-157やカンピロバクター、サルモネラ菌などである。一方、代表的なウイルスであるノロウイルスは、調理者から食品を介して感染する場合が多く、特に冬場にはノロウイルスによる食中毒が毎年多く発生している。
 細菌性やウイルス性の集団食中毒により、食品の自主回収、飲食店の営業禁止や製造所の廃業につながるような事例も年間を通して報告されているが、何れにしても食中毒は、製造者にも消費者にも、甚大な被害や経済的な損失が生じることは間違いないことであり、食中毒の発生防止の対策が重要な課題となっている。

 ②食中毒の元々の汚染源は何なのか。土壌にはO-157がいる場合があるので、野菜の洗浄、殺菌不足かもしれない。あるいは、牛肉など別の食品から手やまな板などを介して感染する交叉汚染か、従業員に健康保菌者がいた可能性があるのだろうか。悩ましいのは、感染していても症状が出ない不顕性感染があり、気付かれないうちに、感染源になる恐れが、誰にでもあることである。

 食中毒予防の3原則とは、食中毒の原因を「つけない」「増やさない」「やっつける」ことであり、食品衛生の3原則とは、清潔・迅速・冷却/加熱の徹底である。また、「自分の施設は自分で守る」という自主管理の実施が基本になる。
 製造や調理現場では、作業員の手洗い励行と効果の判定、使用される器具・設備・機械類や場内の汚染状況の把握、そして製造や調理後の清掃状況や改善確認などが重要視される。

③食品衛生管理における様々な清浄性評価の指標として、有機物指標(化学物質)と微生物指標(一般生菌、衛生指標菌および食中毒菌)が挙げられるが、食中毒菌を簡便かつ短時間に検出する方法は未だ存在していない。そこで代替法として、検査したその場で効果が判明し、結果に基づく改善をその場で行い、再検査により改善効果をその場で確認できて、しかも短時間で結果が得られる簡便迅速な検査法が望まれている。
 現場の要求に応える検査法として、食材そのものの検査はできないが、有機物を汚染指標とし、製造現場で手軽に試料採取と結果判定が可能なふき取り検査が実用化されている。食品残渣由来の汚染指標の物質(タンパク質、デンプン、脂肪、ATP、ATP+AMPなど)が検査対象に付着しているかどうかを試料採取も含めて数分以内に判定できて、汚染指標の多寡をもって清浄性の判断のよりどころとしている。如何なる有機物でも汚染指標になり得るが、例えばATPやAMPは、生命活動がおこなわれている所には必ず存在する有機物であり、「ATPやAMPが存在する」ということは、「生物あるいは生物の痕跡が存在する」証拠となる。ATP+AMPふき取り検査は、微生物・体液・食物残渣等の汚染指標として「食品残渣+微生物汚染の全体」を見逃すことがなく、清浄度検査のスタンダードになっていると考える。
 製造や調理現場では、ふき取り検査により、汚染部位、汚染の程度が把握でき、衛生管理のポイントが明確になることから、効果的で効率的な衛生対策が可能となる。また、ふき取り検査は、「わかりやすい」「汚染部位が確認できた」「清掃、消毒の重点ポイントがよくわかった」など、現場で短時間に結果が得られる有力な検査法になっている。
 先ずは、食品衛生管理の自主検査にふき取り検査を大いに活用してみよう。

〔追記〕              2018年12月29日
 本稿で紹介した「ATP+AMPふき取り検査」は、「食品残渣+微生物汚染の全体」のATP、ADP、AMPを全て測定できる。ATP+ADP+AMPふき取り検査(A3法)」に改良されている。ATPに加えてADP、AMPも測定することで、より幅広い種類の汚れを高感度に検出することが可能になった。ATPふき取り検査は、「食品衛生検査指針 微生物編」に収載されている。
参照先は、以下のサイトです。
http://biochemifa.kikkoman.co.jp/products/kit/atpamp/

食品化学新聞より許可を得て掲載しております