メタボ健診より朝ごはん!

食品化学新聞 2014年10月23日掲載

白兼孝雄 技術士(生物工学部門) 白兼技術士事務所

 生活習慣病の発症や進行には、普段の生活習慣(偏食、運動不足、喫煙、ストレスなど)が深く関わっている。今年前半、メタボ健診(正式には「特定健康診査及び特定保健指導」という)に関する話題が新聞・テレビ・週刊誌を大いに賑わしたが、メタボ健診の制度や目標、そして健康習慣についていま一度考えてみたい。

 ①いわゆるメタボ健診は、40歳~74歳までの公的医療保険加入者全員を対象とした保健制度で、2008年4月より開始された。
 高血圧・脂質異常症・糖尿病・肥満は死の四重奏と呼ばれ、生活習慣病の中でも代表的なものである。メタボリックシンドローム(代謝症候群、単にメタボとも)は、内臓脂肪型肥満(内臓肥満・腹部肥満)に高血圧や脂質異常症など複数の生活習慣病を合併したもので、健康診断や人間ドックなどで検査してみなければ診断がつかない。

 メタボ健診では、腹囲の測定・BMIの算出、血糖・脂質(中性脂肪又はHDLコレステロール)・血圧の測定、そして喫煙習慣の有無から危険度によりクラス分けをし、クラスに合った保健指導(積極的支援あるいは動機付け支援)をすることになる。
 すなわち、メタボ健診の目的は、生活習慣病の発症を未然に防ぐために、メタボの該当者や予備軍を見つけ出し、対象者に生活改善をみっちりと指導することにある。

 ②メタボ健診は、実施率の目標(特定健康診査は70%、特定保健指導は45%)を掲げてスタートした。2011年度のそれぞれの実施率は45%及び16%で、2012年度の受診率は46%であった。制度の開始以来、対象者・受診者数・実施率とも年々増加しているが、当初の目標からは、まだ相当開きがあるのが現状である。
 積極的に保健指導を受けた対象者には、体重や血圧などの値が改善し、脱メタボに成功した事例も多数ある。国民健康保険の赤字が膨らむ中、生活習慣病の重症化を防げることから、メタボ健診の受診率アップが図られているが、医療費抑制効果はまだ見えていない。

 そうしたさなかに、今春、日本人間ドック学会は、血圧や中性脂肪などについて、健康診断で異常なしとする基準範囲を大幅に緩和した。これに対して、日本動脈硬化学会は、「誤解を生じる可能性があり、日本国民の健康に悪影響を及ぼしかねず危険」という見解を示し、日本高血圧学会も、「正常という値が複数存在することで、メタボ健診の受診者にも大きな不安と混乱をもたらす」と声明を発表した。
 専門家の間で意見が分かれることはよくあるが、受診者の健康が大事なのか、はたまたメタボ健診の継続そのものが大事なのか、本末転倒の議論のようにも見受けられる。

 ③メタボの診断基準はともかくとして、生活習慣病の予防に健康的な生活習慣は欠かせない。ここで思い浮かぶのが、貝原益軒(江戸時代の儒学者)の「養生訓」である。
 養生法の第一は、自分の身体をそこなうもの(内慾と外邪)を除去することである。内欲(飲食の欲、好色の欲、眠りの欲、言語をほしいままにする欲や喜び・怒り・憂い・思い・悲しみ・恐れ・驚きの七情の欲)をこらえて少なくし、外部からくる邪気(風・寒・暑・湿の天の四季)を恐れて防ぐことができれば、絶えず健康で元気はつらつとして、病気にかからず天寿を全うすることができようと説いている。3百年を経た現在でも、日本人に適合した深い味わいを持つ教訓である。

 ④現代風に言うなら、池田義雄(日本生活習慣病予防協会理事長)の6つの健康習慣(無煙、少食、少酒、多動、多休、多接)といった指針もある。予防医学の進歩と共に、医食同源が見直され、食育に関する情報も豊富になった。これからは、各自が「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、毎日の食事に気をつけることで体の内側から健康にしていきたいものである。

 そういうわけで、筆者は朝食をきちんと取ることを習慣にしている。いいことずくめ(脳の働きをアップ、よく噛む、血流が良くなる、体温が上がる、便通が良くなる、胃が働く)なので、是非ともお試しあれ。

食品化学新聞より許可を得て掲載しております