抗老化に妙薬なし、幸齢者を目指せ?

食品化学新聞 2015年3月19日掲載

白兼孝雄 技術士(生物工学部門) 白兼技術士事務所

 2013年の日本人の平均寿命は、女性86.61歳、男性80.21歳であった。2014年には、65歳以上の総人口に占める割合は約26%となり、まさに、8人に1人が75歳以上という高齢化社会である。
 高齢者予備軍の著者も、生活習慣(偏食、運動不足、ストレスなど)の改善と抗老化(アンチエイジング)食品素材に関心を寄せるようになってきた。
 古くは、秦の始皇帝が、方士の徐福を東の海上にある蓬莱の国に遣わし、不老不死の仙薬を求めさせたという故事もある。無論、仙薬は探し出せなかったわけだが、果たして、現代版若返りの妙薬はあるのだろうか。 

①老化とは
 そもそも、老化(エイジング)とは何なのだろうか。老人性疾患には、骨粗鬆症、認知症、動脈硬化性疾患、白内障などがある。喫煙、糖尿病、高血圧などは老化を促進するが、スポーツ習慣や適量の飲酒は老化を遅らせることが報告されている。
ただし、老化は病気ではなく、老化のスピードには個人差があり、誰にでも起こる肉体的・精神的な機能低下である。
 老化の要因としては、糖化ストレス、酸化ストレス、生活習慣、免疫機能、心身ストレスなどがある。なかでも、生体内のタンパク質が非酵素的に糖と結合し老化物質(終末糖化産物、AGE)を形成する反応(糖化反応)は、老化の主要因子の一つとして注目されている。

②糖化反応とは
 食品の加工や貯蔵の際に生じる、製品の着色、香気成分の生成、抗酸化性成分の生成等に関わる糖化反応は、メイラード反応とも呼ばれ、食品業界では非常に重要とされている。
 糖化反応は、食品中だけでなく生体内でも起こっている。例えば、老化現象と深い関わりを持つコラーゲンの糖化反応は、肌の張りと弾力性を失わせ、骨強度を劣化させる。また、AGEの蓄積が白内障や動脈硬化の進行(高血圧症)となって表れるなど、老化の顕著な特徴と直結している。
 糖尿病の治療領域でも、糖化アルブミンや糖化ヘモグロビンが血糖コントロールの指標に応用されてきた。さらに近年、糖化反応は、糖尿病だけでなく、アルツハイマー病、ガン、動脈硬化など多くの疾患にも関与していることが解明されつつある。

③抗糖化を考える
 生体内の糖化反応を阻止することは、糖尿病合併症や加齢に伴う動脈硬化、心筋異常などの発症・進展を防ぐ効果が期待される。しかし、日本国内において、糖化反応阻害薬として臨床応用されている医薬品は報告されていない。
 一方、ビタミン類、混合ハーブエキス、食用紫菊花粉末などは、ヒトでの作用と体感性が確かめられた糖化反応抑制食品素材である。また、シソ葉茶、柿の葉茶、グアバ茶などの健康茶は、コラーゲンの糖化に対して強い抑制力を示す。
 抗糖化ケアは、摂取カロリーの適正な調整を行い、急激に血糖値を上げないグリセミックインデックス(GI)に留意した食生活をおくることによって実現される。手近な例では、食事の際に野菜を最初に食べるベジタブルファーストによっても、食後の血糖値の急上昇を抑制し肥満や糖化リスクを低減できる。

④健康長寿を目指す
 残念ながら、万能の抗糖化医薬品や食品素材は見つかっていない。そこで筆者は、糖質をひかえ、健康茶を飲み、健康マラソンでストレス解消に努めている。また意識して、腸管免疫を活性化するために乳酸菌を多く含む発酵食品を摂取し、骨量と筋肉量を維持するために良質で適切な量のタンパク質とカルシウムを摂取している。
 いたって平凡な策ではあるが、そもそも、不老不死を追い求めるのでなく、平均寿命よりも健康寿命を延ばすようにしたいものである。そして、サクセスフルエイジング(美しく年を重ねること)に努め、ぜひとも、「高齢」者ならぬ「幸齢」者を目指したい。

食品化学新聞より許可を得て掲載しております