「無添加」を選ぶ?

食品化学新聞 2017年5月11日掲載

東 剛己  技術士(農業(農芸化学)、総合技術監理)

 添加物の「危険性」については、書籍、雑誌、報道、インターネット等でよく指摘されている。一方、科学者や科学ライターたちは「正しい」情報を知ってもらおうと、書籍、セミナーなどで反論するが、残念ながら旗色は悪いようである。結局、危険情報は面白く、話題性があり、人々の印象にも残る。
 そのこととは別にして、私は個人的に「無添加」の製品を選ばない。なぜか? 理由が四つある。

一つは開封後の安全性
 メーカーは不必要なら保存性をあげるためだけの添加物は使いたくない。コスト高だし、一般にイメージも悪い。そこで、工場内の衛生度や殺菌工程、包材の工夫などで、添加物を使わなくても日持ちさせられるように努力する。
 ところが、このような工夫の製品は、比較的開封後に劣化しやすい。メーカーは開封後の製品は保証してくれないので、開封後の保管は自己責任。少量買ってすぐに使い切るような人なら良いが、食べきるまでに時間がかかる人にとっては、無添加が実は危険にもなる。

二つ目は味や品質
 特定の添加物を使わない場合や一切の添加物を使わない場合は、その代替となる「何か」を入れなくてはならない。保存料の代わりにpH調整剤や乳化剤、乳化剤の代わりに卵黄や澱粉、など、技術者はいろいろな工夫で添加物の代替品を探す。
 ただ、そもそも添加物があってこそ製品が成り立つものであれば、代替品を用いても味も物性も良くならない。無味無臭の保存料を少量入れる代わりに酸味の強いPH調整剤を大量に添加しては味が悪くなる。乳化剤なら少量で均一の物性が得られるのに、替わりに乳化作用のある食品素材を大量に使えば、おいしさも安定性も落ちてしまう。おいしくなくて品質の悪いものを、あえて選びたいとは思わないではないか。

三つ目は価格
 無添加を実現する方法として、「食品」扱いで添加物と同じ物質を含むものや濃縮したものを使う例がある。たとえば香料の代わりに香気が強い発酵素材。色素の代わりに色の濃い食品粉末などである。これらは化学的な成分は添加物とほぼ変わらなくても、作り方や処理法の違いで「食品」扱いとなる。
 添加物の成分を含むこのような食品は、添加物と同じように使用しても「無添加」といえてしまうが、かなり割高だ。入っている物質が大きく変わらないのに、「無添加」と称するだけで価格が高くなるのである。

最後は企業姿勢
 そもそも「無添加」とは何だろう。国は特に定義を決めていないようだ。一般社団法人日本食品添加物協会は平成14年に以下の見解を示している。
 「無添加」とは、食品添加物が、原材料の産地から最終加工食品完成までの全工程において、一切使用されてないことをいう。即ち、加工食品において表示が免除される加工助剤、キャリーオーバー、強化剤などの食品添加物も添加されていないことをいう。なお、「不使用」、「無添加調理」等も「無添加」と同じことである。(抜粋)」。
 これはなかなかキビシイ。たとえばグラニュー糖は製造時に加工助剤として食品添加物の「活性炭」を使用している。植物油脂も同様に「苛性ソーダ」「活性白土」で精製して製造する。これら加工助剤は製品品質の維持にとても重要である。加工食品メーカーはどうやってこの難題を乗り越え「無添加」と称しているのだろう。たとえば自社独自の「無添加」ルールを作っているのかもしれない。つまり「キャリーオーバー・加工助剤は気にしなくてよい」「○○は天然だから無添加でよい」「無添加とは添加物のうち〇〇が入っていないことである」など。または通常添加物を使用することのない食品について「無添加」としているのかもしれない。こういう手法はどうにも企業姿勢として疑問に感じてしまうのだ。

 もちろん、しっかりした考えを持って「無添加」を表示している優良企業もあると思う。しかし、以上四つの点のどれをとってもメリットを感じないので、私はできるだけ「無添加」を選ばないようにしている。もちろん、人によって考えはそれぞれだろう。

 ちなみに、食品と添加物の違いは、法律上の区分にすぎない。国によっても違うし、時代によっても変わる。似た物質、又は同じ物質でも区分が異なることがある。区分される根拠が「安全性」などでは無く「使用目的」だからである。

食品化学新聞より許可を得て掲載しております