気候高温化の米加工への影響一考  ~蒲原平野から~

食品化学新聞 2018年11月8日掲載

江川和徳 技術士(農業部門)  江川技術士事務所 

 小生は新潟で技術士事務所を蒲原平野が見下ろせる高台に、地元農業法人に仮設を置いてもらい、入居開設している。米の加工が専門で管理より開発を得意としている。
 稲作平野に暮らす技術屋として、原料米の性状に変化を感じている。ちょうど、新潟の平均登熟気温が25度のラインを越えた頃からなので温暖化がもたらした影響と予想するが、断定できる資料はない。以下に小生が温暖化が加工のあり方に影響すると思われる点の一つを記してみたい。

1気候温暖化と米加工上の問題

 小生が感じている温暖化がもたらしたと推定する問題の一つは菌相の変化である。かつては、原料米の菌相はイエローシュ―ドモナスとエルウィニアヘルビコーラといわれる黄色菌のみで、グラム100万個レベルで存在した。逆に言えば、この2菌種が米の鮮度指標になり、貯蔵期間この2菌種で占められる米が鮮度が高く、収穫・乾燥・貯蔵が適正に行われた証と言えた。しかし、現在は収穫直後からカビや耐熱性菌、ミクロコッカスが検出されたりすることがあり、古米化が進んだ時の菌相が現れる確率が高くなってきた。
新米時の玄米の発芽率は、通常であれば糯米で90%はあるはずだが、70%台だったりする場合がある。餅加工でイエローシュードモナスとエルウイニアは熱に弱いため、かつては20分の蒸しでよかった。

 それが今では40分と倍の時間を要して澱粉の糊化と殺菌を兼ねるのが通常化した。まだ加熱時間で対応できているが、今後は原料自身の除菌技術も必要と予想される。まず、精白工程で糠と共に一次汚染菌を極力除去する。原型精白に留意し89%以下の精白歩留まりに仕上げ、ただちに洗米工程に入るなどの管理の徹底が必須となろう。さらに洗米工程で極力米に付着する菌を流去する工夫も必要となる。
 菌は埃と違い、バイオフィルムで固着していると考えてよく、単に水で流すだけでは減少しない。バイオフィルムごと流すための菌数低減の洗い方は、小生ホームページにも示したが、ぺクチンなどの多糖類を10ppm以下の濃度に調整した溶液で洗米し、最後に水で米に付着するペクチン水を流す。これで、ほぼグラム1ケタ台には低減できるはずである。
洗米は米を水に漬けてから水を切り、濡れた米を研いで摩擦、すすぐ。この操作が重要で、水中撹拌では効果は低い。各社工夫の洗米対応が必要な時代になると想像される。

2温暖化がもたらす利点
 温暖化と決めつけたが、米の菌相変化や加工条件の変化等の問題だけでなく、利点もある。それは、従来栽培が不可能だった作物の栽培が可能になるということで、新潟県においても刃豆や八升豆の栽培が始められた。八升豆は小生も利用を進めている。現在、新潟に八升豆の会が結成され、普及が始まった。小生が興味をひかれているのは、八升豆にドーパというアミノ酸が存在し、豆の渋切り水に溶出される点だ。


 一粒約1gの豆に100mlの水を加えて煮だすと煮汁のORPは小生の簡易な測定器で70~100mvと、完全にカビの一般的生育電位250mvを下回る。これは今話題のマイタケの煮汁のメラニン色素液?より低い。ドーパはメラニン色素の原料で、煮汁を放置すると次第に空気中の酸素と結合し、黒くなる。 白髪染めなどには、合成のドーパ誘導体が使われているのではないだろうか?この八升豆の渋切水を、寒天で固め蒸米に混合して餅を搗くと、明らかに一次汚染の黴を抑えて風味もよくなる。色もいい。これを氷にして魚の鮮度保持やすり身の高品質化など新潟県水産海洋研究所スタッフに持ち掛けている。日本中の食品の鮮度保持や、農と海の連携などの進行が期待できる天然の可食性脱酸素剤である。また、消化器系の電位を下げて健康寿命延伸にも役立つ食品開発など、進めたくても進められない技術屋の限界に侘しさも感じるのも温暖化のせいか?

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