揚げ物に繰返し使用するのに適している油とは?

食品化学新聞 2012年3月15日掲載

                中谷明浩 技術士(農業部門) 

 昨今の経済状況を反映し、消費者は外食から内食へ、つまり「家ごはん」率が上昇している。また、節約志向の表れなのか、当社の調べによると家庭内での揚げ物に使われている食用油は、平均で3回繰返し使用しているという。

 このような消費者の動向を背景に、当社の家庭用油脂開発陣に対して、ある課題が投げかけられた。「揚げ物に繰返し使用するのに適している油」とは?

1. 揚げ物に繰返し使用した油の3大欠点

 消費者調査と開発陣の議論の中から導き出した欠点は3つあった。それは、揚げ回数を重ねるごとに、①揚げ物が油っぽくなり「おいしく」なくなっていく、②不快な油臭さが増す、③揚げ油の色が濃くなっていく、である。

 これらについては諸説あるものの、主に加熱調理による油脂の劣化により、油脂中の過酸化脂質、遊離脂肪酸、及び重合物が増加し粘度が上昇するなどの影響と、同じく油脂の分解による揮発性成分の増加があげられる。

 油脂の加熱時の揮発性成分は、低分子のアルデヒド、ケトン、アルコール類があり、これらの中には「油臭さ」感じさせるものがある。知られているものとしてあげられるのは脂肪酸分解由来の揮発性成分であるヘキサナール、2,4-ヘプタジエナールなどである。加熱よる着色もこれらの影響によるものが大きい。

 この3大欠点を克服した家庭用油脂商品を開発し、家庭での節約術とおいしい「家ごはん」に貢献できないか?このとき、開発陣の思いは1つになった。

2. 欠点を克服するためのアプローチ

 欠点の克服には2つのアプローチがある。①加熱劣化がしにくい油脂レシピの確立、②繰返し使用するのに適することを確認する評価方法の確立、である。

 ①の「加熱劣化しにくいレシピ」では、キャノーラ油に加熱劣化しにくい「パームオレイン」を採用することとした。パームオレインとは、常温で固体であるパーム油(融点36℃前後)から冷却法によって分別された液状油である。その酸化安定性の高さから、加熱劣化に強く業務用油脂には広く使われており、国内でも伸長している。この油脂を使用することにより、加熱劣化をしにくくしようとしたのである。

 しかし、ここで大きな問題があった。たとえ分別された液状油であったとしても、常温で固体脂肪酸成分であるパルミチン酸が多く含まれ、キャノーラ油のような液状油と比較して、低温での流動性が悪く「冷所で固体脂肪酸成分が析出」するのである。これは商品を開発する上で致命的といえる。そこで、高度に分別されたパームオレインを使用し、各種配合を検討した結果、問題を解決するに至った。

 ②の「評価方法の確立」では、繰返し機能を実感していただけるよう、家庭での使用を想定した評価方法を立ち上げた。その特徴は、家庭内の揚げ物に代表される「コロッケ」と「鶏唐揚げ」を揚げ種とし、調理とオイルポットでの保管を3~4回繰返すもので、調理品の食味は官能評価で、油脂は化学分析、官能評価とGC-MS分析法(揮発性成分)によって評価した。

3.「揚げ物に繰返し使用するのに適している油」の誕生

 上述の諸検討を重ね、苦心の末、完成したのが当社家庭用油脂商品「AJINOMOTOカラッとフライオイル」である。

 この商品は、評価の結果、当社従来品キャノーラ油と比べ、①酸化安定性で1.4倍、かつ4回揚げを繰返しても着色しにくい。②調理品と油脂臭気の官能評価では、「油っぽさ」「劣化した酸化臭」少ない。更に、③GC-MS分析における揮発性成分では、3回繰返し使用した油脂において、17%(検出揮発性成分総面積比)少ないことを確かめた。

4. 最後に

「AJINOMOTOカラッとフライオイル」は誕生後、ご購入頂いた多くの消費者からその機能が実感できるという消費者調査結果を得ている。本商品については、当社ホームページから詳細を閲覧することができるので、ご興味があれば是非ご覧いただきたい。

 ただし、油脂の加熱劣化により、繰返し使用できる回数は、揚げ物の種類や量、油の温度、揚げ時間により異なる観点から、通常使用する回数より1回多い程度に使うことをお勧めしている。

専門分野は、油脂化学、食品化学、特許管理、商品開発、油脂生産技術、熱利用設備のエネルギー管理(エネルギー管理士)

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