食品特許の用途発明とその動向

食品化学新聞 2017年7月20日掲載

中谷明浩 技術士(農業部門)

1. はじめに

 2015年4月1日施行の食品表示法のもとで導入された「機能性表示食品」制度から1年後の2016年4月1日、従来認められていなかった「食品特許の用途発明」が特許審査基準の改訂のもと認められ、運用が開始された。審査基準改定の「食品特許の用途発明」とは何か、そして機能性表示食品と食品用途特許について述べてみたい。

2. 食品特許の用途発明とは

 食品特許の用途発明とは、いわゆる「食品の健康・栄養機能性」に係る発明で、例えば請求項が「成分Aを有効成分とする歯周病予防用食品組成物。」や「成分Aを有効成分とする歯周病予防用グレープフルーツジュース。」(*1)が挙げられる。用途発明については、ある物の知られていない性質や特徴を発見し、その性質、特徴により新たな用途を見出して完成した発明であるが、医薬等の他分野では認められており運用されていた。食品特許においては、これまで用途以外の点で「物」として従来の食品と差別化できないとして、認めていなかったのである。しかし、①機能性表示食品制度の導入と運用、②食品業界での食品機能性に関する研究開発の活発化等の変化と、開発した機能性食品の権利保護を要望する機運が高まりを見せ、審査基準の改訂と運用に至った。

 上述のように、食品の用途(機能性)を特許にすることができるようになったが、一方で認められない場合もある。それは、権利対象が「動物又は植物」そのものである場合は、植物・動物の有用性を示しているに過ぎないから用途発明として認められない。例えば、「○○用バナナ。」、「○○用生茶葉。」、「○○用サバ。」、「○○用牛肉。」(*1)は動物及び植物そのものと見なされ認められない。対して、用途発明として認められる例としては、「○○用バナナジュース。」、「○○用茶飲料。」、「○○用魚肉ソーセージ。」、 「○○用牛乳。」(*1)のような加工がされた食品に認められる。この点については注意が必要である。

3. 機能性表示食品と食品用途特許

 機能性表示食品制度が開始してから2016年12月9日時点で、届出公表件数は559件に上る。(*2) そしてその市場規模は2015 年度 446 億円、2016 年度は 1,483 億円と見込まれており(*3)、著しい伸び率であることが伺える。このように市場が活況を呈しつつあるなか、一方で、届出た製品は消費者庁のホームページにおいてその内容の詳細が公表されることになるため、自社製品を模倣等から保護し、しっかりとビジネスにつなげていこうという発想は必然的に生まれるものと考えられる。その対応策の一つとして、上述の食品用途特許の活用が挙げられ、研究開発と同時に検討され権利化を目指すことにより、より良いビジネス環境の構築の一助となることが期待されている。

4.おわりに

 本稿で述べた内容も然り、開発とビジネス構築における知財の役割は、機械に例えると「潤滑油」のような役割ではないかと考える。機械はそれがいくら優れていても、潤滑油がなければうまく動かない。「適切で有効な知財活用」がこれからも求められていくものと思われる。

引用文献
*1 特許庁ホームページ「食品の用途発明に関する審査ハンドブック事例」
https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/new_shinsakijyun10_shiryou/10.pdf
*2 消費者庁ホームページ「機能性表示食品制度の現状について」
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/iryou/20161214/161214iryou04.pdf
*3 (株)矢野経済研究所プレスリリース「健康食品市場に関する調査を実施(2017年)」
http://www.yano.co.jp/press/pdf/1644.pdf

食品化学新聞より許可を得て掲載しております