国際デビューのウィーン万博1973

食品化学新聞2019年4月4日掲載

横山 勉    技術士(農業部門)横山技術士事務所

  2018年11月、万博(国際博覧会)の2025年大阪開催が決定した。嬉しく思うとともに、関係者のご努力を称えたい。万博には大規模な登録博(旧一般博)とこれに次ぐ認定博(旧特別博)がある。近年、前者は5年ごとに開催されてきた。開催地は2005年・愛知、2010年・中国上海、2015年・イタリアのミラノだった。1975年・沖縄海洋博、1985年・つくば科学万博、1990年・大阪花博は認定博である。大阪における大規模な万博は1970年以来になる。

 会場は大阪湾の埋立地「夢洲」である。現在は夢舞大橋がかかっているが、海中トンネルで大阪メトロも乗入れる予定だ。ミラノ博日本館の人気が高かったことはまだ記憶に新しい。待つことは大嫌いなイタリア人が入館まで8時間並んだことが話題になった。2020年はアラブ首長国連邦ドバイが予定されている。同年の東京オリンピック・パラリンピックとともに成功させたい。

 また、夢洲へのIR(統合型リゾート)誘致も実現させたい。海外カジノの失速例を研究・解析して、日本独自のコンテンツを充実させる必要がある。亡くなったが、江波杏子氏のような美女賭博師による花札やサイコロを挙げておこう。ギャンブル依存対策は現行案に加え、パチンコに焦点を当てて進めるべきだ。出玉や景品の三店方式を徐々に規制したい。大阪にはそのものの魅力に加え、周囲に京都・奈良・神戸と集客力のある観光地が控えている。国際観光の拠点として発展することを願っている。

 さて、万博はずいぶん昔から開催されている。初回は1851年のロンドン万博とされている。今回は1973年オーストリアで開催されたウィーン万博に注目したい。明治政府が国際デビューした場といえるのである。「たばこと塩の博物館」(東京都墨田区)では開館40周年記念特別展として、「ウィーン万国博覧会」(2018年11月3日~2019年1月14日)を企画した。関心があり、足を運んだ。

 当時、明治政府は輸出振興を目的に、実に多様な物品・文化を出品した。指導に当たったのは外国人コンサルタントやオーストリア公使館員である。出品物は陶磁器、漆器、絵蝋燭、皮革、和紙、織物、浮世絵などがある。また、1,300坪の敷地に日本庭園を造り、神社や神楽堂、池、反り橋などを配置した。東洋風で大きな展示がよいとの意見もあり、名古屋城金鯱、鎌倉大仏模型、直径2mの大太鼓なども加えられた。

 当時、フランス美術界でジャポニズムのうねりが起きていたが、ウィーン万博はその流れを強力に後押しした。欧州人の間で大きな評判となり、販売物は飛ぶように売れたという。明治政府から派遣された技術者は「紙巻たばこ」製法を含む先進技術や文化を学んだ。これらを日本に持ち帰るとともに、特許や商標登録といった国際ルール導入に貢献した。

 記念特別展博の出品物で異彩を放っていたのはパンフレットを飾っていた大型の陶磁器である。入館口のパネルでも目立っていた(写真01)。当時の記録写真なども興味深かった。日本以外の美術品も展示されていた。いくつかの喫煙具の精巧な装飾には目を見張ったものだ。また、ジャポニズムの影響を受けたウィーンの画家グスタフ・クリムトの作品も素晴らしかった。展示品は写真撮影不可だったが、鮮明にまぶたに焼き付いている。

 筆者が注目していたのは、「大豆」に関する情報である。残念なことに、展示品の中に認めることはできなかった。見栄えする対象ではないので、やむを得ないだろう。世界が大豆に注目するきっかけとなったのが、このウィーン万博である。ドイツの科学者が成分を調べ、「畑の肉」と称賛したと伝わっている。食肉並みにたんぱく質と脂質含量が高かったためである。その後、欧州における栽培は土壌細菌の不適合により失敗する。現在、大豆は重要な油糧作物として、米国、ブラジル、アルゼンチンで大量に栽培されている。なお、ブラジルにおける大豆生産は日本が深く関与していたことに触れておきたい。同国の中央高原は熱帯サバンナ「セラード」が広がっている。ここに注目し、資金・技術で協力して共同事業を立ち上げた結果、米国と同レベルの大生産地になった。2018/19年のデータでは生産・輸出ともに米国を抑えて世界一になっている。

 

 博物館の常設展示室では、たばこと塩に関する収蔵品を観ることができる。たばこはマヤ文明で宗教的儀礼に用いられていた。15世紀、コロンブスにより欧州に伝えられ、それが世界に広がった。たばこを吸うマヤ神のレリーフ(写真02)、江戸時代のたばこ文化コーナーは見応えがある。喫煙しないので関心がなかったが、重要な作物であることに間違いない。塩展示室の入口には50cm角ほどの褐色の英国産岩塩が鎮座し、存在感を放っている。内部では縄文時代の製塩土器から最新式の製法・設備模型が紹介されている。瀬戸内海の入浜製塩のジオラマ(写真03)は圧巻で、小人国のガリバーになった気分を味わった。本記事を記すこともでき、満足度の高い時間を過ごすことができたのである。

 

 

 

 

 

 

 

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