調理現場のフライ油適正管理技術

食品化学新聞 2019年3月21日掲載

中谷明浩 技術士(農業部門)中谷技術士事務所

1. はじめに

 フライ油は、フライ食品の熱媒体の役割を持つと同時に、そのおいしさにも大きく影響する。フライヤーを使用する調理現場において、「フライ油をきちんと使えているのだろうか?」と思う方は少なくないと聞く。フライ油を適正に使用できていない場合、そのフライ食品の風味が悪くなったり、早く劣化し廃油量が増えたりと経済性にも良からぬ影響を及ぼす。そこで本稿ではフライ油を適正に管理しておいしく、経済的な使い方について述べてみたい。

2. 適正管理に必要な知識「フライ油の劣化指標」

 日本では、フライ油の劣化指標として色(着色)、酸価AV(遊離脂肪酸含量)、粘度上昇率(重合)が主に用いられる。厚生労働省の「弁当及びそうざいの衛生規範」の中で、「発煙点が170℃未満となったもの」、「酸価AVが2.5を超えたもの」、及び「カルボニル価COVが50を超えたもの」と認められた場合、その油脂をすべて交換するルールとなっていることから、酸価を指標として管理することがよく用いられている。酸価については加熱油脂劣化度判定用試験紙が市販されており、容易に入手し簡便に判定することができることもその一因と思われる。

3. 適正管理に必要な知識「揚げ種によるフライ油劣化度合いの違い」

 揚げ物を「天ぷら」、「コロッケなどの野菜類フライ」、及び「唐揚げなどの畜肉類フライ」の3種類に大別し、フライ油劣化度合いの違いを比較した場合、天ぷらがフライ油を劣化させにくく、コロッケなどの野菜類フライ、次に唐揚げなどの畜肉類フライの順で劣化させやすい。天ぷらはフライ油を多く吸収するため必然的に回転率が上がることにより劣化させにくく、コロッケ等の野菜類フライは揚げかすが多く発生することから天ぷらよりも劣化させやすくなる。そして唐揚げなどの畜肉類フライは揚げ種からのエキスなど溶出成分が多く、それがフライ油の劣化を進めるのである。

4. フライ油の適正管理方法

 上述の揚げ種のフライ油劣化に対する違いから、フライ油の劣化がしにくい揚げ種からフライし、次に劣化しやすい揚げ種をフライしていくといった手順で揚げ種、若しくはフライ油をローテーションする。例えば、上述の例でみると、天ぷら、コロッケなどの野菜類フライ、唐揚げなどの畜肉類フライの順で揚げた後に廃油とする。この間、任意の時間での「劣化指標」によるチェック、こまめな「差し油」や揚げかすを除去する「ろ過」も劣化を抑える手段として有効である。その他、空加熱の状態で長時間高温加熱していると劣化が進んでいくため、この状態を避けることも大切である。例えば、油温度が170℃~180℃で空加熱状態が保持されるのであれば、油温度設定を110℃~130℃して保持させることで、劣化の進行を抑えることができる。そして複数台のフライヤーを使用する調理現場では、日々の揚げ物の量の変動を考慮に入れ、フライヤーの適正台数を検討し、例えば、フライ調理が少ない日には使用台数を減らすなどの施策も有効である。

 他方で、劣化しにくいフライ油を選択することもできる。例えば、食用油脂製造・販売している各社で劣化しにくいフライ油をコンセプトとして提供されている油脂製品の採用を検討することや、ヨウ素価(脂肪酸中の不飽和度(二重結合)を示す)などの油脂化学指標や物性を考慮したフライ油を検討するなどがあげられる。この場合、フライ食品の風味との相性やフライ油使用実態に合わせ、さらにコスト面を十分に考慮しフライ油を選択することが大切である。

 これらの管理を実行するにあたっては、現状を十分に把握した上で、目標と実行計画を立て、さらにPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回しながら推進していくことが効果的であると考える。

5. 最後に

 フライ油の管理不足によってそのフライ食品の品質が好ましくないために消費者が離れ、売上額などに影響するということは必ず避けたいものである。そのようにならないためにも、そしておいしいフライ食品を安定して提供していくためにもフライ油の適正管理は必要であると考える。

食品化学新聞社の許可を得て掲載しております。