豊洲市場 見学会記  平成31年2月16日

 食品技術士センター恒例の見学会、今年度は開業まもない豊洲市場の見学会となった。見学会は、例年は秋に行っているが、豊洲市場は、開業が遅れ2018年10月に開場となったので2月の見学会となった。当日は、冬だが天気も良く風も少なく良い日よりとなった。築地に比べて2倍近い敷地面積となり、21人の参加者は広い市場を巡る長距離歩行の見学会となった。(Fig.1地図)

豊洲市場の平面図

地図には棟内でのルートは書かれていないので、見学全体ではずいぶんと歩きました。見学の順路は、管理棟・水産卸売場棟 → 水産仲卸売場棟 → 青果棟 → 加工パッケージ棟 → 現地解散。朝8時15分からの見学会で、見学の終了する昼にかけて一般見学者もどんどん増えて、棟を結ぶ連絡通路は、混雑、というほどの人出となり一般の方々も強い興味を持っていることを感じた。

全く新しく建設された市場なので、当たり前だが83年を経て老朽化した旧築地市場と比較にならないきれいさ、衛生的、加えて最新のレアウト設計と設備。食品を扱う市場として完全閉鎖型の空間を実現しているのが大きな特徴である。外からの汚染を防ぎ、かつ温度コントロールを可能としている。市場と見学者の見学コースは、ガラス窓できっちりと区分けされており、大勢訪れる見学者が汚染源にならないよう、かつフードディフェンスの観点からも安全な仕組みになっている。

市場内での物流は、特殊車両であるターレとフォークリトが用いられるが、旧築地市場ではガソン車が使われていたが、豊洲市場ではすべて電動に切り換えられた。ターレ約2千台、フォークリフト約500台が働いている。

施設管理棟の入場広場にひときわ目立つ大きなマグロのオブジェが設置されている。これは、旧築地市場で扱った最も大きなマグロとのことで1986年4月に鹿児島県種子島沖でマグロはえ縄漁船が漁獲した重さ496kg、長さ2.88m、胴回り2.36mがモデルとなった。我々は、ここで記念撮影(写真1)。

マグロの模型の前で記念撮影

豊洲市場の特徴として、見学者向けのサービスがあること、中でも近年急増している海外からの見学者にも配慮があった。市場の随所に設置されている見学者用の案内版は、4か国5言語対応している。これは、オリンピック向けの都の基準で、この基準を最初に導入したのが豊洲市場とのこと。5言語以外の言葉へのサービスもあって、紹介パネルにはそれぞれQRコードがついており、海外の見学者が自分のスマホをあてて読み取ると自国語で説明文が見られるようになっている最新技術。

 

 

随所に設置されている見学者用5言語対応案内板

1.水産卸売場棟

 水産物に関しては、豊洲市場は、都の95%の取扱量であり、1日の取扱高4500億円で国内ダントツの1位。2位大阪の2倍以上にもなる。とくに良い魚が集まってくることも大きな特徴で、これは東京の経済力によって成立している。

 1Fは、大物(マグロ)、鮮魚、活魚の取引が行われる。通常、マグロは、1日で生が400本、冷凍で1000本ほどの取引がある。競り場は、10.5℃に制御できるようになっており、とくにマグロ競り場の床の色は緑で照明は暖色系のLEDとマグロが見やすく設計されている。すべてのあつかいが室内となったで、外の気候の影響を受けず安全性を確保している。完全閉鎖型かつ高床式となって旧築地市場には無かった衛生的環境で、当然マグロの品質保持にも大いに役立っている。

 活魚も扱っており、3千トン/日の濾過海水設備もある。活魚用の水槽の水温はその時々の魚種等の条件で設定している。活魚は、温度だけではなく、塩分の影響も受けやすく担当の会社がそれぞれのノウハウで調整している。

 水産棟だけで約100機の冷凍機が稼働しており、大きな建屋を仕切ったブロック毎に異なった室温温度コントロールが可能となっている。なお運転費用は入居している卸会社が支払っている。セリ場の温度は、これから迎える夏の状況をみて条件を決める予定とのこと。

2.水産仲卸売場棟

 この棟は、水産卸売棟と地上1階部分が連絡通路でつながり、ターレで鮮魚を運搬できる構造になっている。連絡通路も閉鎖型で、外部からの汚染を防ぎ、温度コントロールを可能にした施設である。

棟を結ぶ運搬用道路。ここも完全閉鎖型で温度コントロールされている

 水産仲卸の各企業は、豊洲に移転したことで衛生度が格段に向上したので、より現実的にHACCP対応が容易となった。HACCP、ISO22000、FSSC22000の取得に前向きな企業が増えている。
食品を載せるパレットに関しても衛生度を高める活動をしている。プラスチック製のパレットを推奨しているが、産地から木製のパレットが持ち込まれることもまだまだ多い。管理やコストの問題があるが、プラスチック製パレットの移行を目指している。

 一般の見学者も購入可能なエリアのうち水産仲卸売場棟の4階は約70店舗の専門店が構えており、乾き物、玉子焼き、漬け物の食品に加えて、包丁、調理器具、長靴、雑貨等のお店がありいずれも市場で働く人々がすぐに購入できるようになっている。むろん一般の方も購入可能である。水産仲卸売場棟3階は約20軒の飲食店が出店しており豊洲市場の中で最も飲食店が集中するエリアとなっている。いずれも高級飲食店となっている。

両脇に店舗が並ぶ

 

 水産仲卸売場棟2Fはウニの取引が行われ、3Fは干物、冷凍魚、水産加工品の取引が行われ、4Fは市場に届いた荷物の仕分けや、他市場への転配送が行われる。各階をつなぐエスカレーターもあり見学者サービスが充実している。

3.青果棟

 築地が平面的運用であったのに対して、豊洲では立体的運用となり、さらに物流が一方方向となるように配置されて、単に敷地面積が約2倍になった以上の機能的な仕組みとなっている。青果棟も立体的配置、自動立体低温倉庫となっており青果の鮮度保持能力が向上して高付加価値の商品を出せる市場となった。

 青果の取扱量は1位が大田市場、2位が豊洲市場である。新市場となって卸売場は場内温度を22℃まで下げられ、一貫した鮮度保持ができる。鮮魚と全く異なるのは、青果は仕入れ後1か月かけて売るものも多いという商品の特徴がある。長い期間の鮮度保持が求められている。

 

4.加工パッケージ施設(青果棟)

 食品を専門とする技術士という専門家集団の見学を配慮いただき、特別に案内に応じていただいた。加工パッケージ施設では、野菜などをパック詰めなどに加工する手順、稼働状況など間近に見学した。環境温度は年間15℃にしている。さらに、室内はオゾンで殺菌できるようになっている。次亜塩素酸Naのほうが殺菌力はあるが、残留を嫌う業者がいるので、一時的な殺菌としてオゾンにしているとのこと。

5.加工パッケージ棟での卸売業者の見学と意見交換

 ここでも技術士としての専門家見学として、水産加工企業の見学および意見交換も行うことができた。6社の加工企業にご協力いただくことができ感謝申し上げます。

水産物加工企業の個別スペースでの説明

 各社とも市場から割り当てられたスペースを自社の考え方で手を入れ、扱う魚の種類や加工品の性質、扱い量などから、パーティションを加えて、作業をゾーン化し、さらに製氷設備、冷凍設備なども新たに加えて独自の加工場とされていた。各社とも相当の投資を行っておられる。
ある加工場では、新鮮な魚の鮮度を落とすこと無く加工を行い、速やかに出荷する体制となっていた。高級料亭や高級レストランなどが顧客として名を連ねているとのこと。

 午前中の見学会も時間延長にもなって、昼過ぎの終了のころには、野外の棟をつなぐ通路は一般見学者であふれるほどになっていた。豊洲市場からは、景色も良く、すぐ西側には、東京オリンピック村、旧築地市場を見ことができ、さらにレインボ-ブリッジそして遠くに富士山も見える印象深い場所でした。

(文責:食品技術士センター)