食品鮮度保持関連技術の動向について

吉田 存方氏 
三井化学株式会社
フード&パッケージ事業本部企画管理部

はじめに
 平成28年度の日本の食品廃棄ロス(食べられるのに捨てている食品)は643万トンと多く、その削減は社会的な課題である。(図1)このためには、食品製造工程改善による賞味期限の延長、新機能を有する容器包装材料の開発やパッケージ構造の工夫又はこれらの組み合わせによる技術開発が果たす役割は大きい。農林水産省では、食品ロスの削減につながる容器包装の高機能化に関する事例を集め、鮮度保持、賞味期限の延長、小分け・個包装、内容物の分離性向上、輸送時の損傷軽減などに区分して紹介し、ホームページに公表している。
 この事例や国内外の情報から、食品ロスの削減に資する食品の鮮度保持技術について、包材関連とそれ以外に分けて動向を説明するとともに、三井化学グループとして、開発した商品が紹介された。

図1 日本の食品廃棄物等の発生量(平成28年度推計)

1.青果物等の鮮度保持包材の開発状況
 MA(Modified Atmosphere)フィルムとして、ミクロンオーダーの微細な孔を設けたフィルム(住友ベークライト・P-プラス)が有名。このフィルムは、結露防止による腐敗防止効果に加え、青果物の種類、重量、流通環境等に応じた最適な酸素のフィルム透過量を微細孔の数量で設定することで野菜や果物の呼吸を抑制するのが特徴。
 また、適度なバリア効果で青果物にとって最適な酸素状態を保ち、変色を防止。また、結露発生を防止し、包装袋内の清浄化と鮮度保持を特徴とする袋(三井化学東セロ・スパッシュ)がある。
 ホタテ貝殻粉末を配合した抗菌シート(王子キノクロス・ぬらすと抗菌シート)など、抗菌性のものが紹介されている。事例紹介全体としては、エチレン吸収や分解能を持つもの、防曇・結露防止機能を持つものに大別される。
 抗菌フィルムは、銀イオンの練り込みタイプがほとんどで、銀イオンとゼオライトを組み合わせた無機抗菌剤(シナネンゼオミック)が主流である。有機系の抗菌剤としては、わさびに含まれるアリルイソチオシアネートを用いたもの(三菱化学フーズ・ワサオーロ)以外は普及していない。現状、抗菌フィルムの効果は限定的である。これは、その効果が抗菌剤に直接触れた部分のみに現れるためだ。海外(イスラエル工科大学他)では揮発性抗菌剤を用い食品全体に効果が及ぶ、安全性の高いエッセシャルオイルを使用した抗菌フィルム(NanoPack)の開発が進められており実用化が期待されている。(図2)
 欧州では、すでにこうしたアクティブパッケージ(AP)の定義や規格が制定されている。日本では食品衛生法が改正され、食品用器具・容器包装の原材料のPL法制化は決まったが、APの定義・衛生規格はなく、法施行に向け厚労省が制定を急いでいる。

図2 ナノテクノロジーによる抗菌剤

2.包材以外の鮮度保持技術
 エチレン分解吸収、アルコール徐放剤などがあるが、植物抽出物による青果物のコーティング技術として、これまでにないタイプの技術開発も進められているのが興味深い。これは、Edipeelと言い、これをコーティングされた野菜や果物は、酸素による劣化、水分ロス、病害から守られ鮮度を保持すると言う。今後はアカデミアと産業界が連携し、より効果的な技術・製品の開発が望まれる。

3.三井化学グループの取組み
 食品包材を中核とする鮮度保持トータルソリューションとして、生鮮品の出荷から消費までを見据えた複合技術・ソリューションの開発に取り組んでいる。例えば、青果物の収穫・貯蔵段階では、予冷・前処理や洗浄・消毒技術を、包装段階では、エチレン除去・抗菌・呼吸湿度制御技術を、輸送段階では、衝撃吸収技術を、小売りから消費檀家では、冷蔵・冷凍・CA輸送などの鮮度保持ソリューションを提供し、フードロス削減や品質向上、食の安全・安心に貢献する。
 ・鮮度保持フィルム「パルフレッシュ・スパッシュ」開発により、もったいない大賞・農林水産大臣賞受賞。
・地域戦略プロジェクトとして、日本から東南アジアに青果物を輸出する企業向けに、シンガポールR&Dセンターを開設し、現地環境同等の品質評価支援サービスを提供。
・無孔MAフィルム「アドフレッシュ」の開発。樹脂の組成、厚みを制御することで、適度なガス透過性をもった孔のないフィルムを開発。青果物の呼吸を適度に抑制し、休眠状態を作ることで鮮度を長期にわたり保持するもの。特に炭酸ガスを系外に排出しやすいのが特徴。このフィルムを使用した①シャインマスカット②富有柿③津軽(りんご)④王林(りんご)⑤マンゴーなどの長期貯蔵試験での有効性が紹介された。

                                  以上
                       (文責:食品技術士センター)