食と健康 ―魚油・植物油の機能性―

食品化学新聞201★年★月★日掲載

水道 裕久 技術士(農業部門)  

 2013年に「和食」がユネスコの無形文化資産に登録された。「和食」とは日本人が昔から食べてきた「一汁三菜」の食事、つまり、ごはんにみそ汁、焼き魚に煮物、青菜等、季節の旬の食材で作られた料理のことである。

 農林水産省では、和食の特徴として、①多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重、②健康的な食生活を支える栄養バランス、③自然の美しさや季節の移ろいの表現、④正月などの年中行事との密接な関わりの4つを挙げている。この中でも、健康面からの特徴である②については、一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスであり、また、「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現しており、日本人の長寿や肥満防止に役立っていると評している。

 今回は、動物性油脂の少ない食事を実現している和食の主要な食材である魚類と植物に含まれる油脂類の種類と生体調節機能、とくに多価不飽和脂肪酸の機能について紹介する。

1.多価不飽和脂肪酸とは

 脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、飽和脂肪酸は二重結合を持たない脂肪酸の総称であり、代表的なものとしては、パルミチン酸やステアリン酸がある。一方、不飽和脂肪酸は二重結合や三重結合といった炭素間の不飽和結合を持つ脂肪酸の総称である。二重結合が1つの不飽和脂肪酸は単価不飽和脂肪酸とよばれ、オレイン酸がその代表である。二重結合が2つ以上は多価不飽和脂肪酸とよばれ、2つはリノール酸族、3つはリノレン酸族、そして4つ以上は高度不飽和脂肪酸族と呼ばれる。このうちリノール酸、リノレン酸、アラキドン酸の3つは動物の体内で生合成されないので必須脂肪酸といわれる。多価不飽和脂肪酸の末端メチル基のCから最初の二重結合の位置をn‐3(オメガ3)、n‐6(オメガ6)などで表し、系列別にまとめる場合がある。n‐3系の高度不飽和脂肪酸の代表としては炭素数20、二重結合数5のエイコサペンタエン酸(EPA)、および炭素数22、二重結合数6のドコサヘキサエン酸(DHA)がある。

2.魚油に多く含まれる高度不飽和脂肪酸

 EPA、DHAなど高度不飽和脂肪酸は植物油には含まれず魚油に多く、いわし、さば、さんま、まぐろ、かつおなど背の青い魚に多く含まれる。また、ヒトの体内ではn‐3系の必須脂肪酸であるα-リノレン酸より体内代謝経路を経て作られる。

 高度不飽和脂肪酸は、生体内で多様な役割を果たすプロスタグランジン類の中間体として体内に存在する。また、細胞膜など生体膜の基本構造を構成する脂質二重層において、脂質の脂肪酸の不飽和結合が多いほど膜の結晶性が減り流動性や透過性が高まる。水温が低いところでも青魚が速く泳げるのはこのためである。この性質から高度不飽和脂肪酸の生理活性作用が注目されている。

①EPA

 EPAには血液中のコレステロール値の低減、トリグリセリド(中性脂肪)の低下、血栓の形成抑制などの効果が見いだされている。

②DHA

 DHAは、人間の体内では、脳内の海馬にある神経細胞と目の網膜細胞並びに母乳に多く含まれている。学習機能、網膜反射能、神経系の改善あるいは発達にとって必須の成分といわれている。また、血中脂質低下作用、抗血栓作用、抗アレルギー作用なども期待されている。

3.植物に多く含まれる不飽和脂肪酸

①α‐リノレン酸

 えごま油には、n‐3系のα-リノレン酸が豊富に含まれている。α-リノレン酸は血管に柔軟性をもたせ、血液の流れを改善する作用があるといわれている。また、前述したようにα-リノレン酸は生体内でDHAの材料となる。DHAには脳内でうつ病の予防と改善作用があるといわれているセロトニンの合成を促進することから、えごま油の日常的な摂取により、うつ病の予防や改善作用が期待できる。

②リノール酸

 コーン油や大豆油、ベニバナ油には、n‐6系のリノール酸が豊富に含まれている。n‐6系の脂肪酸の欠乏により、肌の乾燥や髪のパサつきなどのほか、創傷治癒の遅れが見られるといわれている。リノール酸には血中コレステロール値や中性脂肪値を低下させる作用が期待できる一方、その過度の摂取はアレルギーを悪化させたり、大腸癌などのリスクを高めるといわれているため、注意が必要である。

 このように魚油や植物油の適切かつ日常的な摂取は、ヒトの健康維持に役立つものである。

専門分野は、食品の機能性、口腔衛生および労働安全衛生(化学・保健衛生)。

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