食と健康 ―香辛料の機能性―

食品化学新聞2018年2月8日掲載

水道 裕久  技術士(農業部門)   

 香辛料(スパイス)とは、飲食物に芳香や風味をつけるために用いられる植物性の食品群をいう。香辛料となる植物の種子、果実、花蕾、葉、樹皮、根茎などを乾燥したものが利用され、こしょう、しょうが、とうがらし、わさび等多くの種類がある。

 日本では昔から薬味ともいわれてきており、民間伝承的に薬用として用いられ、身体の組織や器官の働きを調節する機能(生体調節機能)を併せ持つものもある。今回は、香辛料の飲食物への使用によりその嗜好性を豊かにする基本的な機能と食品保存機能、並びに我々が日常摂取している代表的なものの生体調節機能について紹介する。

1.嗜好性を豊かにする基本機能

①賦香作用

 食品そのものの持ち味を引き出すとともに、香りをつける作用で、アニス、オールスパイス、シナモン、セージ、バジル、パセリ、ナツメグ、ミントなどにこの作用が大きい。

②矯臭(マスキング)作用

 肉や魚の生臭さなど不快なにおいを抑え、消臭する働きで、ガーリック、ジンジャー、セージ、タイム、ローズマリーなどにこの作用が強い。

③呈味作用

 香辛料には辛味の強いものが多く、辛味成分には食欲増進、唾液分泌、消化促進、発汗作用などの生理機能がある。代表的なものとしては、こしょう、さんしょう、しょうが、とうがらし、わさびなどがある。また、酸味を呈するものにはスイバ、タマリンド、かんきつ類があり、苦味を呈するものにはタラゴンやチコリーがある。

④着色作用 

 食品の着色に用いられるものとしては、カレー粉の黄色はターメリック(ウコン)、ブイヤベースやピラフの橙黄色はサフラン、その他赤色の着色にはパプリカが用いられる。

2.食品保存機能

①抗菌作用

 香辛料には、微生物の増殖を抑制して腐敗を防ぎ、食品の保存性を高める働きを示すものがある。代表的なものとしては、からし、しそ、しょうが、セージ、ローズマリー、わさびがある。
②抗酸化作用 食品の品質低下の原因のひとつに食品中の脂質の酸化がある。この酸化を抑制する作用があるものとしては、オレガノ、ごま、セージ、ナツメグ、ローズマリーなどがある。香辛料の抗酸化性は主な含有成分であるフェノール性化合物に起因している。

3.代表的なものの生体調節機能

【しょうが】

 昔から血行をよくして胃腸の冷えをとるものとして重用されてきた。とくに根しょうがは体を温める作用が強く、寒い時期の体温の維持や、寒気がする初期のかぜに対して発汗作用による熱の低下や、関節の痛みの緩和などによいとされている。これらの作用の主体は辛味成分であるジンゲロールやショウガオールというポリフェノールである。また、これらには細菌やウィルスを抑制する作用や、魚肉に対する解毒・消臭作用があるとされている。

【とうがらし】

 血行を促進して体を温め、発汗を促し、体内にこもった熱を発散する作用があることから、南米やインドなど暑い地域を中心に日常的に摂取されてきた。日本には十六世紀頃に伝来したとされている。とうがらしの刺激は胃腸を刺激し、消化液の分泌を促して消化を助け、食欲を増進させる働きがある。近年では、辛味成分のカプサイシンに中枢神経を刺激してアドレナリンの分泌を促し、体脂肪の燃焼を活発にする作用があることがわかってきた。

【わさび】

 日本特産の野菜で、水のきれいな冷涼な渓流に育つ沢わさびと、畑で栽培される陸(おか)わさびがある。辛味の主成分であるイソチオシアネートには抗菌・消臭効果があり、生魚の臭みを消して食中毒を防ぐ効果が高いため、さしみや寿司の薬味として使われている。また、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートという成分には血小板が凝集するのを抑制する働きがあり、血栓ができるのを防ぐ作用や血流を改善する作用があるとされている。その他、わさびには抗酸化作用や抗アレルギー作用などがあると報告されている。

 このように、香辛料の中にはヒトの健康に役立つ成分が含まれているものがあり、これらをうまく食生活の中で活用し、健康を保ち健康寿命を延ばしていきたいものである。

専門分野は、食品の機能性、口腔衛生および労働安全衛生(化学・保健衛生)。

食品化学新聞社の許可を得て掲載しております。