HACCP解きほぐし4 記録(原則7)はウンコと思うとHACCPが理解できる

食品化学新聞2019年3月21日掲載

浅野行蔵 技術士(生物工学/総合技術監理部門)

 各企業は、種々のコンサルも入れて経営強化を図っている。良いコンサルなのかそうでないのか、見分け方は難しいものである。習う方はわからないからコンサルを雇うので、コンサルの価値がなかなか見抜けないのだ。そんなときに使うのが、リトマス試験紙である。簡単に善し悪しが判定できる。今回はHACCPのコンサルの善し悪しを見分ける、簡単なリトマス紙があるので紹介する。

 「記録が大切」だと、記録をとることと保存することをとても強調するコンサルは、HACCPを理解できていないまゆつばコンサルである。記録 (原則 7) への態度は、コンサルの資質を見分けるリトマス試験紙になる。今回は、なぜリトマス試験紙なのかを解説する。

 「万が一のことが起こった時に記録は重要だ」などと記録を作ることに力を注ぐコンサルがいたら、完全にアウトである。食品企業で万が一のこと、食中毒、が出たら会社はつぶれることを意味する。その時、経営者にとって記録は無価値である。調査に入る保健所が、原因解明に役立てるのだ。

 つまり、目線が違うのである。「記録が大切」と記録を強調する目線は、監視者の目線なのだ。目線の違う位置から指導されても、企業としてはちっとも役に立たない。企業が求めているのは、万一のことを起こさないシステム作りなのだ。そのためのHACCP導入である。

 HACCPは、従業員の一人一人が自分の商品を大切に思う気持ち、お客様に安全な良質の商品を届けたいという製造者魂がないと上手く動かないのである。

 私のHACCP講座では、「記録 (原則7) はウンコ」だと考えるとよく理解できる、と話しており、この例えはとても良くわかってもらえる。私どもヒトは、ウンコを作るために食 事をしているのではない。健康な生活、成長のために食事を摂る。正しいバランスの食事を摂って、正しい運動を行っていれば、自然に良いウンコが排便されるのである。そうでなければ病気が隠れている訳だ。便秘薬で無理やり出しても健康は得られない。

 HACCPの記録 (原則7) もウンコと同じである。正しい HACCPが行われていれば、 自然に良い記録 (原則7) が無理なく出てくる。「記録をとるのは大変だ」などとウンコばかりに目を向けるのは誤りである。記録の出かたに問題があったときは、正しいHACCPが行われているか?製造工程に病が隠れていないか?を考えないといけないのである。

 「(原則7) 記録」だけを取り出して重要視するのが間違いなのだ。HACCPの7つの原則で最も大切なのは、原則1の危害要因分析である。2番目は原則2のCCPの決定だ。記録 は原則7で、7つの原則の中で重要性は一番低い原則である。

 良いウンコは、健康体の証の一つである。ウンコだけを無理矢出しても意味がない。HACCP原則7の記録は、まさにウンコなのだ。記録が出ていなかったら、それは原則1~6の HACCPが正常に働いていない証拠ではないか。

 記録 (原則7) を重んじるもう一つ重要な間違いは、記録がHACCPだと受け取ってしま う誤解を生むことだ。原則7 は、それ以前の原則ができている場合のみが有効であって、原則7は、それ以前の原則が出来ている場合のみが有効であって、CCPでの記録以外はHACCPではない。この種の誤解は、あっても無くても良いような記録までたくさんの記録を要求してしまう。従業員が、なぜその工程の数値が重要なのか?を十分に理解していたら、自然に正しい記録を残してくれる。大事な工程を自分はやったのだ、という誇りとともに情報が記録される。訳がわからぬまま記録!記録!と要求されると、記録の質は、とたんに悪化してしまう。

 筆者は、腸内細菌の研究に携わった経験も長く、ウンコがもたらす情報は大変奥深く、ウンコを作る腸内の環境に関して、腸内細菌や腸管免疫などいくつもの大きな研究分野に育っている。ウンコだけを見ても意味が無く、ウンコを作る環境を研究することに将来性があるのである。

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