現代の食性は縄文の食性に向かっているって、ホント??

食品化学新聞2019年4月18日掲載

鈴木 修武  技術士(農業部門) 鈴木修武技術士事務所 

 昨年、東京国立博物館で「縄文の美」を見た。また以前、世界遺産の候補の青森・三内丸山遺跡、大湯環状列石、是川縄文館などを訪問した。現地に行ってなぜその時代にその地に人が集まり生活していたか。なにかヒントになるか調べた。遺跡の周辺は平地、山、川があり近くに海もあって豊かな自然に恵まれたと推察される。中でも三内丸山遺跡は驚きであった。体育館位の木造の建物、直径1メートル強の6本の栗の巨木があり約500の人達が暮らしていたらしい。しかも約1500年続いたと聞く。縄文の食性と食糧の確保について、歴史学者でない食品の専門家である筆者が色々と調べた。主題はホントであるようだ。

1.縄文時代とは

 縄文人の生活は定住せず、狩猟採取、その日暮らしと学校で学んだ。縄文時代は諸説あるが、約1万2000年前に土器を使い始め、紀元300年前まで続いたと言われている。小山(元国立民族学博物館教授)氏によれば、全国の縄文人口は、早期に約2万人で、最盛期約26万人になり、後期16万人や晩期には7万6000人と激減している。縄文人は頭が大きく額が広く身長155~160cm、骨太で筋肉質でかっちりした体形である。現在のアイヌ人に近いらしい。寿命は男30~34歳、女20~24歳で60歳は約5%以下であり介護もあったらしい。現代人は縄文のDNAが組み込まれている。

2.同位体で縄文の食性がわかるか?

 同位体元素とは、同じ元素でも質量の異なる複数の元素のことである。同位体研究所の展示会での説明で、食品加工用の米偽装表示問題が発生したときに、米の生産地の炭素窒素酸素などの同位体から国別、産地別が判定できると聞いた。魚沼産コシヒカリは数百メートル単位で産地がわかるそうだ。この同位体を使って、南川氏(日本歴史・日本人の食性、敬文舎2014年)は、現代から先史時代までの骨を分析し食性を調べた。縄文時代から弥生に水田稲作によって食性が変わり、江戸時代まで変わらず植物食であった。明治から平成で肉食に変化し、最近では段々と植物食と肉類、魚介類の混合利用になり同位体で見ると縄文時代へと向かっていると述べている。詳細は本参照を。この話をある仕事仲間、ボランティア仲間、学校の先生などに話したら「ほんとかな?」の反応だった。

3.縄文時代の食性と食糧の確保の仮説

 三内丸山遺跡の販売本(東奥日報社・2006年)では、食糧として、クリやクルミが大量に利用され、ヒョウタン、ゴボウ、エゴマ、マメ類などの栽培されていた。ノウサギやムササビなどの小動物の骨が多く、魚は50種類以上でブリやサバが多く、頭の骨がないのは別の場所で加工処理されたと考えられる。南川らによれば、縄文人は、一日当たり70gの蛋白質を食べていた。概算内訳は約40%魚介類、約30%獣肉、約30%のC3型植物(野生のイモ類、ドングリ類など)と分析している。カロリーベースでは炭水化物約80%、草食動物約9%、魚介類約11%である。約500人の食糧を概算すれば、縄文の成人男性を1800㎉/日必要と仮定すると、年間の炭水化物のみをクリ、クルミ、トチで計算すれば、クリ(1800㎉/kg)で約182トン(廃棄率30%で261トン)、オニグルミ(1680㎉/kg)約195トン、トチ(2431㎉/kg)で約135トンである。単一では大きな数字になる。

 また、上記のカロリーベースに加えたんぱく質も考慮すれば、500人/1日で換算すれば、クリで500人×1日×1800㎉÷1800クリ㎉÷0.7廃棄率30%×0.8炭水化物80%=約571kgである。草食動物としてムササビ平均体重1kg(上野動物園調べ)廃棄率50%・500gで(146㎉/100g×5ウサギを転用)1匹あたり730㎉/kgである。500人×1日×1800㎉÷730÷0.5廃棄率×9%草食動物≒222匹。魚介類11%を魚介類(食部6割で700㎉/kg)と貝類(可食部約2割程度700㎉)半々と考えるとそれぞれ可食部だけで70kgであった。

 スーパーのない時代に、季節を考えて効率的に集めるには驚異的な数字である。多いに疑問に思ったのでさらに調べた。生態系の森、林など広範囲にわたる実学の知識がある樹木医の実地講習会に出てヒントを得た。百合の根、わらび、山草など広範囲な動植物も含め周りにある手に入るすべての食糧を土器に入れて煮炊きして食べたのではないか。日本人の鍋好き文化は縄文に生まれたと言う学者もいる。「縄文の美」より、日本の土器は世界的な発明であり、四大文明の比較展示土器と比べても優れていると実感した。食品開発にヒントにならないか。皆様どのように思われますか

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