平均余命のこと

食品化学新聞2019年7月11日掲載

木幡 守  技術士(生物工学部門)木幡技術士事務所

定年後の人生は? 

 まだ50歳半ばのころ、当時の男性の平均寿命約75歳、と自分の平均余命約80歳、および健康寿命後の一般的な「不自由生活」約9年間の統計を、自分に当てはめ想定してみた。80歳で死亡、71歳で健康寿命が終わる。とすれば、71歳以降は足腰が不自由になり、75歳代後半は寝たきりになることもありうる。従って、定年60歳以降の約10年間の人生は非常に貴重な時間となろう。そこで定年後の仕事はなるべくせず、のんびりと気楽に過ごそうと考えた。それが一応まじめにやってきた(つもりの)自分への「贈り物」と考えたのである。幸いなことに、夫婦とも健康には恵まれ、家の借金もない。特別なことがなければ年金で何とか暮らせそうだ。

現実には

 それから約20数年過ぎ81歳となった。想定した人生設計は、必ずしも想定どおりには進んでこなかった。足腰はまだ達者な方だが、18年前からの不整脈で息切れしやすく、50数年続けて来たテニスも継続の意欲が薄れつつある。

 一方、貴重な約10年間の健康時間は、想定外に伸びようとしている。定年後何か特に有意義なことを体験したとはいえないが、年に数回の旅行などで精神的には豊かに送ってきた。特筆したいのは、旧東海道、旧中山道、旧甲州道中などの徒歩旅行と、71歳で完歩した四国のお遍路であったろうか。

 夫婦ともども話題には、周囲の人の認知症や脳梗塞後遺症、ディサービス、老人ホームなどのことが増えた。一昨年は大学同期の友人が2名も鬼籍に入り、昨年末には義兄の葬式を迎えた。人生の終わりに近づきつつあることは避けられない。

平均余命

 平均余命は当該年齢からの平均生存年数であるので、到達年齢において変わってくるのは当然であるが、統計上は私の場合にどうであったか。平均余命の年次別調査結果では、10歳の時には平均余命が50年で60歳が平均寿命であった。ところが、20歳では平均寿命69歳に、40歳で同74歳に、60歳で同80歳に、70歳で同86歳に、80歳で同89歳に、と自分の年齢が増えるにつれてどんどん高くなるという推定となった。

 ところで、最新(2016年)の統計によると、日本人男性の平均寿命は約81歳である。ただし、個人には 当該年齢からの平均余命が重要である。だいぶ前に見た統計では、80歳の男性の平均余命は83~84歳であったが、前述のごとく、最新の統計では89歳であり、あと8年もあるということになる。

 リニアモーターカーの開業予定は8年後(2027年)、横浜地下鉄の近隣までの延伸と新幹線の札幌までの延伸工事終了はともに11年後(2030年)とのこと。来年のオリンピックは見られようが、それらの乗り物を利用できるかどうか。

多彩な食材の摂取

 さる8月の朝日新聞に、摂取する食品の種類が多いほど、日常生活を支障なく過ごせる「健康寿命」が延びるという記事があった。名古屋学芸大の下方浩史教授(老年医学)らの研究によるものである。同研究によると、国連の食物供給量のデータなどから、世界137カ国の食品の多様性をスコア化して計算したところ、2010年度の食品の多様性スコアは、1位ニュージーランド、2位日本、3位スペインであった。

 健康寿命は、1位日本74歳、2位スペイン72歳、3位スイス、イタリア72歳弱で、食品の多様性が高いほど、健康寿命が長い傾向にあった。また、平均寿命と健康寿命の差である「不健康な期間」は、日本は世界で3番目に短かった。下方教授によると、「食材の種類が少ないと摂取栄養素に偏りが生じやすい。多彩な食材を摂取することが栄養素の充足につながり、疾患を予防している」そうだ。ともかく、偏食せずいろいろな食材を摂取しなさい、ということである

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