日本ワインの幕開け ~本当の挑戦が始まる~

鷹野 ひろ子氏
フジッコワイナリー株式会社 
ワイン事業課 チーフワインメーカー

 国内のワイン市場の動向そしてフジッコワイナリーのこだわりについて講演された。日本のブドウ 世界一コストの高いブドウを使って!
フジッコワイナリーは創業30年を迎えた。フジッコ初代社長山岸八郎さんの思いで始めた。日本の食卓に合うワインを製造する、ことを目指している。

 ブランド名は、フジフレールワイン、フレールとはクリアという意味で、澄んだ色と味と気持ちを表現している。ブドウは、すべて契約農家で栽培し、収穫している。それぞれの畑に毎週出向いて、ブドウの木の状況を目で見、サンプルを採って、ワイナリーに持ち帰り種々の分析を毎週行って、生育状況を把握して、いつが収穫の最適日かを決めている。 
 機器分析だけでなく、果汁にして飲んでみて評価する。ブドウの実をつまんで食べるのと果汁にして飲むのとはわかるものが違う。そしてアルコール発酵させての変化を想定する。
 27軒の契約農家のブドウである。契約農家で収穫して、その日のうちにワイナリーに持ち込み仕込み作業へ移る。このフレッシュ感が、良いワインを作るための重要な要素でもある。
 もし契約農家を使わずに農協などを通して購入すると、ワイナリーに入ってくるのは収穫後4日くらい後になる。ここでの収穫済みブドウの変化は何も良い変化はないので、採れたてのフレッシュな仕込みは品質アップの一要素である。

 日本ワイナリー賞には、毎年出品して審査してもらっている。2003年から2012年までで金賞は1回、それ以降昨年までで8回の金賞を受賞を得ており、その結果直近5年の金賞受賞実績は日本で6番目と他からの目でも品質が良くなっていることをわかって頂けるでしょう。
年間生産量は、24万本。すべて国産、山梨県産である。
「日本ワイン」と名付けるための規則が厳しくなった、地域の名前をラベルに書くにも85%以上名前の土地からの収穫でないとならなくなった。かつては75%であった。そうなると、何が起こっているかというと、大手ワイナリーでも個別の土地に新しくワイナリーを作って対応している。メルシャンでおいてもそうで、山梨の長野側の傾斜の桔梗ヶ原で育つメルローを「桔梗ヶ原メルロー」と名付けたいがために新しい醸造所を作った。すなわち、より小ロット化へと向かっている。
 単にメルローでなく、山梨産だけでなく、さらに狭い桔梗ヶ原と特定してストーリーを作って行く戦略なのだ。高価になってしまう日本ワインを濃いストーリーを付けて売り込んで行こうというものだ。
 フジッコワイナリーでも、山梨県産の勝沼産で、さらに絞って等々力産のブドウだけを使ったワインも作っている。絞り込んだスト理性である。
 日本では、ワイン用のブドウは上手には育ちにくい。雨が多く湿度が高いのでカビに犯されやすい。雨が地表をぬらすので根が深く入りにくい、さらに、雨のために実が割れてしまうことも多く、多々困難がある。
 日本のブドウの種類は、甲州とマスカットベリーAが良く育つ、いずれも日本だけの品種でもともとワイン用ではない。ワインへと発酵させると薄っぺらい味になっておいしいワインにはしにくい。
 それでも何とか良いワインを作ろうと考え、畑ごとに分けて小仕込み発酵を繰り返して、畑ごとの個性を理解できるようなると可能性もわかるようになった。畑ごとに異なった取り扱いを行った。千本から二千本という小ロットのワインだが、マスカットベリーAを使っても赤のニュワンスがでているワインを醸造することができるようになった。
 日本ワインは、糖濃度が足りず補糖する。糖濃度はそのままアルコール濃度に反映されるのがアルコール発酵である。糖が低いとアルコール濃度も低くなる。10%を切ってしまうとワインとしての味のバランスが悪くなってしまう。薄っぺらい果汁という感じになる。
 一方、糖濃度の低い日本のブドウは、低アルコール酒にむいているともいえる。単に低アルコールだとバランス悪いのだが、2次発酵させてスパークリングにすると、二酸化炭素の酸味の味が加わり、バランスが良くなる。日本のブドウはスパークリングワインには適しているともいえる。日本らしいスパークリングワインの醸造に努力している。

会場からの質問に対して
Q:最近FTA協定改正で、例えば二炭酸ジメチルのような静菌、殺菌剤なども国内使用が可能になったが、御社では使っておられるか?
A:ヨーロッパとの規制の違い。ワインの分野に限っても使用できる添加物は他にも異なっている。FTAの更新に伴ってワインの関税は下げられたが、一方で使用できる添加物のハーモナイゼーションも進んでいる。ヨーロッパのワイン作りと日本の食品衛生法とのハーモナイゼーションだ。添加物規制枠が拡大されて、日本でも使用可能になったものも多い。
 フジッコワイナリーでは、可能性の広がりを適切に判断して日本ワインに活用する姿勢だが、一つ一つの物質について小仕込み試験をして、それぞれの効果を確かめ、そして必ずテースティングをして使用の可否を決めて行っている。ブドウ品種によっても違いを試験している。
 例に挙げられた二炭酸ジメチルは、使用していません。日本とヨーロッパのワイン醸造は、ブドウの違いから来る技術の違いが多く、新規技術にも目配りして、より良い醸造法を常に目指しています。
 ヨーロッパとの差を申し上げましたが、市場の変化もあります。かつては、濁っているワインは消費者には受け入れられなかったが、現在の市場は替わってきており、まさに多様化が進んでおり、濁ったワインも認められるようになってきた。

Q:酵母についてのこだわりは?
A:酵母の話はプレゼンの中には入れませんでしたが、とてもこだわっております。先ほどと同じスタンスで、種々の酵母を使って仕込み試験をして一つ一つ評価しております。使用する酵母は、乾燥酵母です。それは、ブドウのフレッシュさをより重視しているので、収穫に応じて一気に発酵をスタートできる乾燥酵母がより良い品質を達成できます。

                                  以上
                       (文責:食品技術士センター)