HACCP風のものの考え方

食品化学新聞リレーシリーズ 2001.4.19

中山正夫 技術士(中山技術士事務所)

 いまやHACCPが流行語のような時代になってきているが、初めてこの用語の意味を聞いた時、『記録』は別にしても、その思想はすでに以前から製造現場で実施していることではなかったか?――と感じたのはあながち私だけではあるまい。

 たとえば、製造工程のなかで、『加熱温度と時 間』それに『冷却速度』については規定条件を絶対に守ること!! と、自分なりの(今でいえば) CCPを顧問先の製造責任者に厳守させたものである。

 さて、そういう話は別にして、HACCP風の考え方は、いかなる仕事をする時でも、共通にして応用できるものと信じたい。私自身もHACCP以前から、この考え方をベースに、新商品開発や異物対策などの解決に応用してきたからこそ、生きてこられたと思っている。

商品開発の発想法の一つに交換の法則がある。たとえば、チョコレートのピーナッツ入りの代りにマカデミアナッツを入れ、少し高級ムード化するように。また、人間様用のチョコスナックの販売対象を変えて、ドッグ フードにしたら?!―といった手法なのである。 それと同様に、食品衛生における危害対応が専門 (?) のHACCPの考え方を、それ以外の場に移して応用してみると、 結構当てはまる。

 まずは常識的にHACCPを直訳すれば、HA (危害分析)とCCP (重 要管理点)に分けられるのはご知のとおり。 そこで、H(危害)と、CCPの二番目のC(管理) とを、それぞれの目的にかなうように置き換えてみる。
たとえば、―
『H』…新商品開発に関するリスク、毛髪一
混入危害等
『C』…PR、対応等
――というように。もちろん、時には『C』を『管理』とそのまま使ってよい場合もあろう。

『危害』なる用語は、前記のように商品開発においても使える。なぜならば、商品開発にはリスクがつきもので、不成功の場合、企業は損害を受ける。つまり、この不成功は企業自体の『危害』となるからだ。また、商品への毛髪混入でも、人に対する食品衛生的危害がほとんどないにせよ、お客からのクレームにより、企業にとっての『大きな危害』にもなりかね ない。

 本物のHACCPは『危害をいかに防ぐか?』というシステムであり、『危害』防止というマイナスに対する手法である。そこでHACCPの考え方をプラス方面に向けるのも面白い。たとえば、『H』を『特徴』の意味に置き換えれば、『H A』は『特徴分析』となり、新商品にいかなる特徴を持たせるかの発展的分析と変わる。

 HAの良さは、企業の各業務の当者が集まって、ダイヤグラムを見、現場を見ながらディス カッションするところ。 衆知を集めての論議だから、いろいろの意見も出るからよい。

 こうした会議の参加者は皆同列であり、部長、課長や平などの格付けがあってはならない。そして多種多彩な『ものの見方』や『考え方」が自由に出されるので、相互の教育と一体感も生れて好 ましい。 また、そのような方向に会議を進めなければ意義が生れない。

 食品製造において大規模な装置産業となった工場でも、基本はそこに働く人達であること。従って、これらの人々が責任感を持って楽しく働けるような場づくりにも、HACCP風手法を使うべきだ。

 食品技術士として、前向きの『HACCP風ものの考え方』を大いに活用し、現場に起きる種々の難問を、効率的に解決したいと願っている次第である。

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専門分野は食加工技術、商品開発、食品衛生、工場計画などの実際的指導。日本薬協会および日本パン科学会・技術顧 問、ほか団体委員など。

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