惣菜に学ぶ

食品化学新聞リレーシリーズ 2002.6.27

中山正夫 技術士(中山技術士事務所)

惣菜との出合い

 東京・銀座に、マクドナルド・ハンバーガーショップの第1号がオープンしたのが1971年。前後して多くのファミリーレストランも出現し、わが国の外食産業の幕開けになった。

 その1年前、技術士事務所を開いた私にとっての幸運は、関与したクライアントに惣菜製造の依頼が入ってきたこと。お陰で、それまでは『惣菜屋さん』の領域に過ぎなかった業界から、新しき流通を伴う薬商品の生産に向かうべく研究開発の技術を磨く機会を得た。

 惣菜の製造や流通には、それぞれのユニットプロセスをいかに有効活用させるかが基本。これが弁当を含めた今日の中食産業に通じる。従って惣菜関連の技術と考え方は、他分野においても幅広く役立つノウハウになる。

 惣菜の『惣』は、“心を持って物をつくる”との解釈もあるほか、『総菜』(すべてのおかず) の意も含め、広辞苑には両者が掲げられている。つまり、惣菜をつくるには“広い知識と技術“の結集によらねばならぬと思いたい。

 事実、惣菜商品には、蒸しもの、ゆでもの、煮もの、揚げもの、炒めもの、焼きもの等々の加熱調理品、それにまぜあわせ調理の和えものも加わる。さらに、単一の加熱だけでなしにー
揚げ⇒焼き、蒸し⇒揚 げ、焼き⇒煮
―等々、ダブルやトリプルの異種調理法の組みあわせもあり、おいしさを創り出している。

 そこにはたん白変性、でん粉の糊化と老化、アミノカルボニル反応による褐変と焼き香の生成、調味液の浸透など、食品の化学や科学に関係深い技術の世界の背景を持つ。

惣菜の面白さ

 不特定多数のお客に売る惣菜商品は、家庭の主婦やレストランのシェフがつくる“おかず ”や“料理”とは、見た目は同じでも異質なものと考えたい。その理由は、調理量と生産量の違い、商品であるがために求められる均一性、流通から消費までの保存性、非加熱摂取商品が多いので厳重な衛生管理などが必須なのだ。

傷みやすい惣菜の日持ちをいかに延ばすか――
とは一つの矛盾の解決にほかならず、現場における手法を究明、対処するのが大切だ。

その解決策は外部 (表面処理、包装、環境など) から見るほか、内部、つまり惣菜自体の体質改善を忘れてはならない。たとえば組織のタイト、水分活性低下、pHの活用などで、おいしさを維持しつつ保存性を高めるべく、レシピまで考え直す“攻め”なのだ。

一方、商品開発においても、加工度に限界がないのが面白い。たとえば、辛子しょうゆで、そのまま食べる蒸しシュウマイから―
・蒸しシュウマイの空揚げや、パン粉付けフライとした揚げもの
・さらに、これを甘酢で和えれば南ばん漬け
・また、揚げものを調味液で煮れば煮物
・この煮物をご飯の上にのせれば丼もの
―等々、とどまるところを知らない発展がある。

ポテトサラダでも、パン粉をつけてフライすれば、“ポテトサラダコロッケ”に変身できる。つまり、完成された惣菜のサラダを原料として使うところがユニーク。そのため、次の一手は?という商品開発の訓練として ピッタリの対象となり、
惣菜、を“総才”と書き直したくなってくる。

◇  ◇  ◇
特意な分野は、現場対応の技術士として『工場における問題解決技術』、『商品開発』、『異 物対策』、『食品衛生』、『特許技術』など。

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