身近な商品開発品ヒント

食品化学新聞リレーシリーズ 2003.8.7

中山正夫 技術士(中山技術士事務所)

“変化”からの発想

ロシア生れの抽象画家であるカンディンスキーのカラフルな絵は、素人の私にとっては難解至極。しかし、肩を張って見ないで一枚の絵柄と受け取れば、なにか判ったような気がしてくるから不思議だ。

ある日、この画家が目分のアトリエに入った時のこと。素晴しき絵が置かれていたのに驚いた。が、よく見ればその絵はなんと!!自分が描いたもので、それを横にして壁に建て掛けただけのもの
―との話がある。

これは“縦のものを横にしたら”との“発想の素”の好事例といいたい。ピカソの人物画でも正面と横向きが共存している絵がある。辞書を引くと、“ART” なる言葉には “芸術”だけでなしに、”技術”の意味もあり、共用させての応用が望ましい。

いまや、家庭用の洗濯乾燥機でも縦型から横型、そして洗濯物投入も“横”から“斜上部” に移った機種が開発されたほど。つまり、使う人、 洗濯物、の身になって考える時代なのだ。天動説、地動説で揺れ動いた昔を思いつつ、自分の目を固定して物事を見ないフレキシブルな発想法が求められている。

“動き”からの発想

20数年も前になるか、アラスカのデナリ国立公園を旅した時、現地のガイドが遙か遠くの山の斜面に遊ぶ熊の親子を見つけた。“点”以下とも思える遠くでも確認できたのは、彼等が動いていた。ことによる。静止していたら恐らく見つかるまい。

今日の量販店の棚には、同種の競合商品がズラリと並べてある。そのなかでどれを選ぶかはお客の自由。いままでは色や形を変えての目立ちの差別化が主。しかし、“動き”の要素はあまりない。

動く商品、とはアイデアはよいが実用は無理
――とのご意見も当然出てこよう。かってカナダの土産店で特徴ある木彫りのインディアン人形を買った。手細工の人形を手に取って、左右に回してみると、いずれもこちらを見ている。つまり、目に”動き”があるのだ。

”商品が動く”のではなく、“見る人が動く”状況を作り、あたかも“商品が動く”ように 仕掛けるのも一法なのだ。

地方で有名な庭園内を歩くにつれ、刻々と風景が移り変わるのを知る。『物の見方』として、いろいろな位置や角度でのビューポイントを持つことを教えてくれる。

テーマパークでは車や船に乗せて移動させながらショーを見物。回転寿司は、寿司を動かせ客を固定する。過日、北陸の土産店内で見たのは、試食サンプル台の回転寿司方式。試食台の前を占拠する団体さん問題の解消には好評と聞いた。

要はケースバイケースで“動き”をいかに活用するかなのである。

食品加工の原点発想

“自然に帰れ!!”とはルソーの言葉だが、食品加工も原点に戻ってみることが大切。原料の性質や製法を十分に学び取り、それに適した、また、それを生かした加工法の開発が必要だ。前出の両画家の絵も、基礎の上に立った表現と思いたい。

また、なにを造るのか? 冷凍食品かレトルト食品か、チルド食品か? めざす客層は? どこでいつ売る商品か? 等々のターゲットを決め、その間を優れた加工法により結びつける。

実はこの5月、『食品加工活用術』なる拙著を幸書房より出した。この本は筆者が30余年前、『食品と科学』誌に一年間連載した内容に少し手を加えたもの。読み直してみると、基本の加工術は変わらず、今でも十分に通用し、現に筆者の技術士業務に役立っている。

5月より農業関係の新聞を毎朝読み、異なる分野の考え方を学び、食品加工や開発に活用したいと願っている。

◇  ◇   ◇
得意な分野は、現場対応の技術士として『工場における問題解決技術』、『商品開発』、『異 物対策』、『食品衛生』、『特許技術』など。

食品化学新聞社の許可を得て掲載しております