作業者向けの安全HACCP?

食品化学新聞リレーシリーズ 2004.2.26

中山正夫 技術士(水産・農業部門) 中山技術士事務所

先に筆者は、本紙の本シリーズで『“HACCP風”ものの考え方』というテーマで、HACC Pの方向を変えた応用について書いた (2001・4・9)。その内容は、食品製造における衛生面からの危害防止対策が専門(?)であるHACCPの考え方を、それ以外の場に移して応用し てみること。そこでは商品開発の手法に当てはめてみたわけだ。

たとえば、常識的にHACCPを直訳し、HA(危害分析)、CCP(重要管理点)に分けてから、両者を少しアレンジして、HAを特徴分析、CCPを重要対応点とか重要PR点の意味に変える。そうした発想でHACCPの考え方を発展させれば、新商品づくりの手法として役立つことは確かだ。

さて、本稿は前記HA CCP応用編のパート2ともいえるもの。 めざすHACCP対象を前出の新商品開発からさらなる異次元に変え、現場で働く作業者の“危害防止”。 つまり、安全対策に移して考えてみた。本稿を書いているうち、これまた基本的に適合するところ 多く、実際に活用すべきシステムになり得るし、成果も期待できると思えてきた。

ではどのように進める。べきか?との質問に対する答は簡単。HAやCC Pの和訳も危害分析と重要管理点のそのままでよい。ただ望むべきは、その和訳語の冠言葉として“作業者の安全のための”と入れていただければ理解しやすくなろう。

その目的は、毎日の出社から退社までの仕事中、作業者が怪我をせず、健康な状態を維持でき、無駄なエネルギーを使わず、不安感を持たずに伸び伸びと明るく働ける環境づくりにあるのだ。

まずは本来のHA (危害分析) と同様に、作業者や外部の専門家を集める。そして自分らの職場での問題点はなにか?、ここを改善すれば事故も減るのでは? 等々、作業工程を中心に生産の周囲を眺めながら、フローシートと現実とをつきあわせて皆で問題点を洗い出 す。その対策をディスカッションしてCCPを決め、改善や管理を行い継続させる。

たとえば、床がウエットな工場では、作業者が滑って怪我をしやすいはず。その安全管理対策としては――――
・床面に細粒を固着させ凹凸をつけ、滑りにくくしては? (しかし、充分な清浄ができなく、なるとの反論あり)
・作業者の長靴の底に“滑り止め”をつけてはいかが?
・台車の軽量化、車輪の径を大きくするなどして無理なく押せたら?
・冷蔵庫や冷凍庫のドアが軽く開閉しにくいので、吊り戸構造の『リニア式自動扉』にして は?
―等々、作業者のスッテンコロリン原因を予想して検討を行う。次いで対策案を、いかに、いつ、誰が行うかなど、5W1H方式での実施プランニングを続く会議で決め、実施すればよい。

また、温度差による疾病危害にもー
・エアコンからの冷風が直接、作業者に当たらないようソックスタイプを利用しては?
・冷凍庫内の作業用防寒衣を脱着しやすいデザインにしては?
・製品の性質上、低温作業が求められる場合、ヒートプレートや保温発熱材の支給は?
―等々の意見も出よう。そのほか、機械装置から発する騒音・快適さから見た照明、食材からの異臭など、職場毎の問題はいろいろありそうだ。

広義のHACCPとは、お客や製品だけに目を向けるのではなく、工場で生産に携わる作業者に対しての“危害”を防ぐ考慮まで加えたい。実はそうもしないと狭義(本来)のHACCPの成功もむずかしいから。

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特意な分野は、現場対応の問題解決技術、商品開発、異物対策、食品衛生、特許技術など。日本惣菜協会・技術顧問。

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