農から食への応用を!!

食品化学新聞リレーシリーズ 2004.7.29

中山正夫 技術士(中山技術士事務所)

他分野からの発想を!!

商品開発の一法として“視点を変えてみる”とか“異分野からのアイデ ア活用を”といった考え方がある。ひとつの業界では周知の技術でも、違った業界ではまったく新規という事例は多い。それはお役所の縦割り組織と同じで、横の連絡が悪いことを物語っている。

この2年間ほど、大手流通業の依頼で各地域の“こだわり品”の発掘や審査の仕事をしたお陰で、農産品の実際を学ぶことができた。その結果、いままで気づかなかったこの分野の関係者のご苦労や発想法を知り、それを食品加工技術に結びつけたくなった次第だ。本稿では、そのなかで応用ヒントになるような話題を提供したい。

マルチングの活用

英語の、マルチング (mulching) は“根覆い”のこと。日本語では“マルチ栽培”、略して “マルチ”と呼ばれる。畑表面にわらや刈った草を敷く昔からの方法で、現在はポリエチフィルムが代りに利用され、農場でよく見られる光景となっている。

このマルチは意外に器用もので多くの効果を示す。たとえばー
・畑地の地温の温度調節
・地温の水分調整
・雑草防除
・降雨時の土粒流出防止
・降雨時の泥はね防止による果実の病害抑制
――等々、よいことづくめ。しかも透明、黒色、反射シートなど多様で、それぞれに使い道がある。

チョッと考えてみれば、これらの効果が一枚のシートを土面に覆うだけで達せられる理由はわかろう。つまり、カバーリング効果なのだ。“たかがシート、されどシー ト”ともいえる上、変法として、地表を軽く耕し、 地中の細管構造を覆うことで水分蒸発を防ぐ“ソイマルチ”(土のマルチ) があるのも面白い。

食品加工分野でのポリシートの利用は、製品や仕掛かりの食品自体を落下細菌から守るための覆いとして、また、材としての利用が一般的であったが、このマルチ技法を別の目的で応用したいところは少なくないはず。たとえば・・・・はやめて、読者諸氏にそれぞれの応用を考えていただきたい。

変わった害虫除去法

常識として農業における害虫除去法は、農薬とか天敵の利用と思っていたが、それだけではない。K県とS県の機械メーカーが共同開発した機械は、茶の害虫を水圧で洗浄するアイデアによるもの。開発者がヒントを得たのは、毎年台風後の茶園では、虫が吹き飛ばされていなくなるのに気付いたこと。そこで乗用型摘採機を改造し、茶畝をまたいで茶株内をかきわけるように走らせる。

改造ポイントは横一列の散水ノズルと空気吹き出し部を並ばせ、害虫を洗い落とす方式だ。ダニが入った荒茶の茶湯は赤色を呈するが、この処理により得た茶湯は変色していないことが確かめられたという (日本農業新聞2004.6.1記事参考)

一方、ハウス内の農作物にも強風をかけ、昆虫を網袋中に追いこむ捕虫法もあり、共に品質は上々。防虫農薬の使用を抑えられる。

イソップ物語の“北風と太陽”は、旅人のコートを脱がすのに、強い北風よりも暖かな太陽がまさったとの話だが、除虫に対しては暴風雨も威力がありそう。食品工場の入室時、作業者にエアシャワー掛けを義務付けるところが多いが、あの程度の風力で頭髪や昆虫を衣服から除去できるかと疑わしい弱風のところもある。

ここで“風”というシーズに加える要素をあげると、風速、風向き、風流、風温 (熱風、冷風) 等々の項目が並び、それぞれの用途に組み入れるのも一法か。風もいろいろなのだ。

農業とは“気ままなお天気”と共存し、それをいかに活用していくかという仕事ゆえ、実体験のなかから常時の対応が求められる。異業種として見習うべき点は多い。

◇  ◇   ◇
得意な分野は、現場対応の問題解決技術、商品開発、異物対策、食品衛生、特許技術など。日本惣菜協会・技術顧問。

食品化学新聞社の許可を得て掲載しております