特許の技術から学ぶこと

食品化学新聞リレーシリーズ 2004年12月16日掲載

中山正夫 技術士(農業・水産部門) 中山技術士事務所

今年の3月まで本紙に連載していた『特許アイデアシリーズ』につい て、友人、知人より、なぜ続けて書かないの!! と聞かれることが多い。振り返ってみれば、1978年2月から8年間、月に1~3回のペースで計600回弱にもなった。シリーズのタイトルに“続”とか“新”の冠言葉などをつけるなどして 気持を一新させ、これまで書き続け得たことにわれながら驚く。

これらの連載のうち、1999年頃までに書いたアイデアは、食品化学新聞社の許しを得て、既に『特許にみる食品開発のヒント集』(幸書房) としてPart 1~3に分けて発刊。お陰様でいずれも版を重ねており、特許アイデアの活用法を読者に知っていただいている。

現在、毎年多彩な発明の出願が公開されているのに、筆者がなぜシリー ズの執筆を止めたかの理由はいろいろ。が、主には、同じパターンで書くと、どうしてもマンネリ化を感じてしまうからだ。恐らく読者サイドでも同じではなかろうか。

それよりも新しき切り口を探し、特許も含めて広い範囲の加工技術の内容にしたいと、現在は熟考中。果たしてよい方向を見出せるかどうか? その結果いかんで執筆したいと思っている。

そこで本稿では、従来にも増した特許の重要性とその活用術について述 べてみる。

学会の研究報告や総説などを読むと、その末尾には引用や参考とした文献が並び示されている。これに加えて、特許公報や公開公報の番号が記されていることもある。

本来の特許制度は発明者の権利を守り、産業を受け止め、自分ならばこうする、との考え方の検討材料に使えば生きてこよう。

公開公報を詳しく読み、隠された発想のヒントを発見した時は、思わずわが意を得たりと共感できるのは嬉しい。また、素晴しきアイデアでも過去に同様な発明があり、本発明者が知らなかったらしきリピート・アイデアも少なくない。この場合も、“技術の復習”と思って読めば、忘れやすきわが脳への刺激に変わり、決して無駄にはなるまい。

要はマイナスに思ったことでも、考え方を反転させればプラス方向に変わり、次なる応用力の土台を強めてくれるのだ。

開発者としての注意点は、狭い専門分野だけの勉強に止どまらないこと。たとえば、農産加工が専門と思っている開発者が、その分野だけを見ていただけでは視野が広がらず、発想拡大はむずかしい。そこで上流の農業生産、下流の流通までの基礎知識を持つことや、できれば実際の体験も望ましい。さらに、上下方向だけでなしに、その周辺(たとえば畜産加工、水産加工など) 技術まで広げて学ぶ努力こそ、成功する鍵になるか。

特許の重要性は、最近の食社会の変化により高まっている。それは特許製法の権利を持つ企業以外では、不正使用がむずかしくなったことだ。その理由は、メーカーが製品を二次加工企業や流通業者に販売する場合、製品の製造フローシートや使用原料がなにかを書面で求められる時代になったからだ。また、家庭用包装食品でも使用原料の完全表示に近づいている。これらは食品衛生法やJAS法などに関係しているので、イザという時は、特許の不正使用の証拠になりかねない。そのうち、食品関連の法律集に、特許法ものるかもしれない(?)

ともあれ、本紙に特許に関する執筆を続けたお陰で多数のアイデアを知り、応用術まで学べたことは、読者諸氏以上に得たところ大と感謝している。『毎朝、牛乳を飲む人よりそれを配達するのが健康によい』との教えを、ふと思い出した。

◇  ◇   ◇
得意分野は、現場対応の問題解決技術、商品開発、異物対策、実用HACCP対応、特許技術など。 日本惣菜協会・技術顧問。

食品化学新聞社の許可を得て掲載しております