食品への“光と影”

食品化学新聞 リレーシリーズ 2005年7月7日掲載

中山正夫 技術士(農業・水産部門) 中山技術士事務所

旅は”感動の発見”

今年4月、筆者も入会している調理加工食品懇談会では、大谷丕古磨技術士を団長に、ベルギーの食品スーパーや専門店、アイスクリー工場などを見学、そしてデュッセルドルフ (ドイツ) で開催されたインターパック (国際包装展) を視察してきた。総勢8名の少人数で気の知れたメンバーのため、和気あいあいの“グルメの旅”ともなり楽しく“食”を学んだ。

工場見学や展示会で得たことは多かったが、それは別にしてベルギーで食べた名物、バケツいっぱい出された殻付きムール貝のワイン蒸し、また、旬のワイトアスパーラガスのスープのおいしさは忘れられない。

ホワイトアスパラと聞けば、それに充填してある細長い円筒状缶詰を連想しよう。トロリと溶ろけるようなテクスチャーでマヨネーズをかけて食べるのが普通。これがご当地での生鮮素材を使ったスープとなると、さらに風味豊か。舌の上を静かに滑っていく流動感も加わり、今まで以上にアスパラ・ファンになった次第だ。

ホワイトの保持

たまたま今回の旅に出かける数日前の日本農業新聞 (2005・4・14)で簡単なホワイトアスパラの栽培を開発した奈良県農業センターの記事を読んだのも、なにかの縁か。従来のホワイトアスパラ栽培法は、若茎が日光に当たると硬めのグリーンアスパラになるため、土寄せで遮光し軟白化させるとあり、筆者はその方法しかないように思ってきた。

ところが、このセンターの発想は面白い。内径 40mmの塩化ビニールパイ プを約25cmほどにカット。上部を厚さ0.15mmの黒色ポリフィルムで包だ遮光パイプをアスパラ若茎にかぶせればよい、とのこと。実際には4cm以下の若茎にかぶせれば、3、4日で収穫できるという。また、アスパラの成長により、上部のポリフィルが穂先で突き上げられる時が収穫期の目安になるそう。しかもこの遮光材一本の製作費は80円と安い。

成果として、収穫時に必要な培土崩しの重労働が省け、収穫時間は4割減。立茎時を含めた長期栽培が可能、遮光材使わずにグリーンアスパラにするのもご自由とある。地中深く伸びる山芋をガードするのに穴あけビニールパイプを用い、生青物を地中より折らずに抜きやすくした栽培法はすでにある。両者の関係は地上対地下という方向を変えた逆転発想のヒ ントになるか。

“光と影”の活用を!!

前出の記事から思い出したのは35年ほど昔の体験だ。顧問先の『あんみつ』メーカーの製品にクレームがあった。この商品は、“あんみつ諸材料”がそれぞれ透明プラスチック袋にパックされ、カップに詰められたもの。そのうちの“シロップ漬けみかん”が真白であったという。話を聞いた時は信じられなかったが、送られてきたクレーム商品内のみかんは、老人の白髪のようで気味がわるいほど。

みかんの黄橙色易カロテノイドが光に弱いことは知っていたが、まさかこれほどまで!!と早速テ ストを行った。

夏の日ざしが強い工場の屋上で、①みかん袋の上を黒い紙で覆ったもの、②透明の紫外線防止フィルムで覆ったもの、③袋内のシロップにビタミンCを溶解させたもの、④そのままのコントロール試料、の4種を並べて置いた。

数時間後、④のコントロール群内のみかんのみが真白に退色し、他は いずれも黄橙色を保った。改めてみかん色素に対する紫外線の影響や、ビタミンCの効果を目の当たりにした。

昔から海水浴やスキーに行く時はサングラスが必要、また、耐光性の弱い薬品は褐色壜に入れるなどの対策がある。逆に、近年では“光触媒”による殺菌など、紫外線の活用も盛んだ。

子供の頃に遊んだ科学教育玩具ともいえる日光写真 (透明な薄紙などに描いた絵をネガとして印画紙に重ねあわせ、日光で焼き付ける玩具)は、まさに“光と影”によって生ずるコントラストの利用だ。また、表面に薄黄色の寿文字を浮かび出させたお祝用の赤いリン ゴも同じメカである。

さらに光を可視光線や紫外線に限定せず、電磁波に広げたのが、近赤外線による果実熟度の非破壊試験、またX線による果物探知法であり、この“光と影”の次なる活用を考えたくなってきた。

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得意分野は、現場対応の問題解決技術、商品開発、果物対策、食品衛生、特許技術など。

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