HACCPでは、危害要因分析が最も大切

食品化学新聞リレーシリーズ No.65  2002年3月7日掲載

西川研次郞  技術士(水産/総合技術監理部門) 西川技術士事務所

世間にはHACCPの7原則の解説書はたくさん出版されている。しかし、自分の製品について HACCPを進めようとした時、具体的にどのような手順で進めたらよいかとなると戸惑うケースが多いのではないかと思う。

筆者は1997年から大日本水産会で「米国FDAトレーニングカリキュラムによるHACCP講習会」の講師をしている。本来この講習会は、米国FDAが内外の水産食品の製造業者に1997年12月18日よりHACCPシステムによる製造を義務付けたことを受けて、米国に輸出する我が国の水産食品の製造業者を対象に、HACCP の実施方法を講習することが目的であった。従って当初は、輸出製造業者が一通り受講し終れば講習会は終了する予定であったが、その後も輸出製造業者外の方からの受講の希望が多かったので毎年5回程度実施し、2002年の2月で27回を数え、受講者も1,000名強となっている。何故この講習会が人気があるのか、一つは受講料が格安なせいかもしれないが、最大の理由はHACCPを実施する際の具体的手順がよくわかるような講習内容になっているためであろうと考える。

一口にHACCP 7原則というが、7原則は2つのグループに分けて考えると理解しやすいと思う。第1のグループは、HA (Hazard Analysis 危害要因分析)を行う第1原則と、その結果に基づいてCCP (Critical Control Point /必須管理点) を決定する第2原則の2つで、HACCPの文字そのものである。第2のグループは第3原則から第7原則までで、第2原則でCCPに決定された原料または工程についてのみ実施するのである。即ち、もしある製造工程の中にCCPに該当する原料または工程が存在しなかったら、第3原則以降の作業は実施する必要はないのである。従って、HAが正確に見落としなく実施され、CCPがきちんと決定されればHACCPは80%完了したといってもよかろう。もし、HAに失敗してCCPの決定が不適切な結果、危害要因の存在が見過ごされたままの製品が市場に出ることになれば、たとえ第3原則以下の作業がいかにきちんと実施されようともHACCPは失敗に終る。その好例が、一昨年のY乳業の黄色ブドウ球菌による食中毒の発生である。

では、危害要因とはどのようなものか。前記力リキュラムに記述されている英文を使えば reasonably likely to occurのものである。これを日本語に直せば、普通に考えて起りやすい、発生しても不思議はないよ、という意味である。それ故、ほとんど起ると考えられないものは除かれることになる。このreasonably likely to occur かどうかの判定は誰が行うか、それはその製品の製造業者自身である。従って、その判定のために危害要因についての知識を勉強して身につけておくことが必要となる。

1997年発行のCODEXの一般原則には、「第1原則について「全て」の潜在的危害要因をリストアップして危害要因分析をする」と書かれているが、実際にHACCP を進める際には、この全ての潜在的危害要因をリストアップすることが難しく、ともすれば見落としが起るのである。 見落としを防止するためには、このリストアップをきちんと行う手順を習得することが必要となり、その手順をわかりやすく きちんと記しているのが、前記のトレーニングカリキュラムである。

人への健康被害の発生をHACCPにより防止することは今後ますます重要になって行くが、その際に危害要因分析に失敗しては何にもならないので、大切なところをしっかり行うHACCPを今後も普及して行きたいと考えている。

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得意分野は水産加工工場における経営・製造・品質・衛生についての管理技術・開発などであるが、工場導入を含めたHACCPの普及にも力を入れている。

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