食品工場でのミスを防ぐには!!

食品化学新聞リレーシリーズ 2007年5月24日掲載

中山正夫 技術士(農業・水産部門) 中山技術士事務所

お詫びとお知らせ

現代用語集にのるようなこのタイトルを新聞広告で見るたびに、食品に携わる者として他人事でないと痛感する。どんな几帳面な人でも勘違いや物忘れを起こす可能性は零ではない。最近、また増えてきた『お詫び広告』にも、人による単純なミス、つまり、ヒュー マンエラーに起因するものを見かける。特に食品の期限表示の間違いが多い。わずか印字ひとつの誤りのチェックミスのために、お詫び広告、商品回収、廃棄処理などと続く経費や手間がかかる。企業のイメージを損ない、時には致命的打撃を受けることにもなりかねない。日々の現場でもヒヤリ、ハット現象はよくあること。たまたま運に恵まれて大事件まで至らなかった陰の事例も意外に多そう。

では、こうした人間ミスを防ぐ対応はいかにすべきか? 単に『ミスをなくせ!!』と担当者に厳命したり、チェック人員を増やしただけで済むわけではない。その仕事に携わる作業者サイドに立っての解決策が求められてくる。

『現場の作業状況は現場の人間が一番よく知っている』とは、筆者の経験から得たもの。これを生かすにはHACCP手法をアレンジして、HA (危害分析)をMA (ミス分析?) に置き換えてから始めるのがよい。現場関係者を集めて、なぜ、どこでミスが起きるのか?を一緒になって考え、現場の作業を体験した後でディスカッションする。

いままで起きた事故やヒヤヒヤ体験を披露してもらい、それをベースに『地に足の付いた』 実効ある対応にまで発展させることが望ましい。 ミスを予測し実行を!! 誰しも気付かずに頭の中がボーッと『無』になることがある。その時点で不運の要因と重なるとミスが起きる。これを防ぐ対策としては、ミスを起こしにくいような作業周辺整備が必要だ。

朝日新聞 (2007.2.2) で航空管制室とパイロットの無線交信時の便名の交信ミスによるトラブルを防ぐため、国土交通省は同時間帯に発着する航空機が似た便名の場合、あらかじめ便名を変えることで航空各社と合意したと報じていた。たとえば、1007便と1707便の発着が間近な時間帯にあるのは怖い。が、このニュースを読み、安全を守るべき航空関係者が、こんなに簡単なことをなぜいままで考えられなかったか? と驚いた次第。担当者が気付いていなかったか、上司に報告しなかったのか、また、上司が受けても動かない組織であった か? 等々。現実にはよくあることなのだ。
人的ミスの防ぎ方

家庭内の調理で砂糖と塩を間違えて使ってしまった――との話を聞くが、食品工場では許されないミスだ。特に多種の食材を加える調理加工食品の場合、配合ミスはアレルゲン問題にも触れることさえある。

添加物の扱いでも同様なミス事例――

A漬けものメーカー ではクエン酸ナトリウムをpH調整剤として使っていたが、社内およびいつもの食材問屋に注文する時は、略して『クエンサン』と呼ぶのが慣例であった。たまたま問屋の当者が不在で代りの者が注文を受けたため、クエン酸が納入され、工場側でもチェックされず、酸味強き不良品ができてしまった由。この笑い話では済まされない出来事 には前項の航空管制の話と相通じる点があろう。

一昨年、デュッセルドルフ (ドイツ) で開かれた関係展示会『インターパック』を視察した時、会場の隅々に置かれたゴミ箱は、紙、プラスチック、ガラス壜、などを外装で色別け分類
――ここまでは周知の工夫といえるが、実はその中に広げて入れられたポリ袋まで、ゴミ箱と同じ色が着けられていた。ゴミいっぱいの袋を箱より取り出した後まで、分類ミスを起こさない『先を読んだ』発想と見た。

ともあれ、作業者にわかりやすいよう周辺までの工夫が必要。前出の印字ミスを防ぐにも――

・チェック場所の照度、光の色調、照射角度
・印字の大きさ、書体、太さ
・印字インキの色調、印字面包材の色調
・作業者の疲労と休憩

――等々を考慮、そして作業者本人の適性も勘案すべきだ。一方、電車の運転手が行う『指さし呼称』もミスをなくす一法 だ。指をさし、目で確認し、大きな声で皆に伝えることは、単調な作業を引き締め、眠気を駆逐する上、本人の健康にもよい。ミス防止に向けて『出発進行』といきたい。

食品化学新聞社の許可を得て掲載しております