ものごとを両面から見ては!!

食品化学新聞リレーシリーズ 2006年11月8日掲載

中山正夫 技術士(農業・水産部門) 中山技術士事務所

お天気と景気の裏側

今年の夏は記録的な猛暑が続き、家電製品ではエアコン、扇風機、冷蔵庫など、食品関係では冷やし中華、そうめん、西瓜、かき氷、ビール系飲料、ミネラルウォーター、またサングラスまでよく売れ、プールも大入りであった由。その反面、衣料や洋菓子などは売り上げが落ちこみ、泣いた業種が少なくなかったことも知って欲しい。

このように、それぞれの業種の景気はお天気次第。たとえば屋根付き設備を持たないプロ野球場に供給する弁当メーカーでは、天気予報の精度が気になるところ。試合直前になって急に天気が崩れて大雨が降り続けば、野球は中止。この場合、駅前で多量の弁当を投げ売りせざるを得ず、損害は大きい。一方、雨による安売り弁当を期待する庶民もいるのだから、ここにも表裏の立場が構成される。

台風の功罪

数年前になるが、沖縄・那覇市で開催される伝統食品研究会セミナーに参加した。せっかくの与えられたチャンスを生かし、本島南部の静かな海岸から小さなグラスボートに乗り、美しき海中の風景や生物をのぞき見た。透き通るような淡いブルーの海水のなか、珊瑚礁の間をゆったり泳ぐ魚の姿は、見る者の心を安らげてくれた。しばしばTVで放映される海中 での生物間の争いも知っているが、それをまったく感じさせないのどかな環境に思えた。

船底のガラス窓を通して海中の動きを見ながら、船長兼操船係にいろいろの質問と会話を続けるうち、興味深い事実を聞くことができた。それは5年ほど前か、台風の通り道とまでいわれるこの地に、大きな台風が1度も来なかった年があった。結果として、この地の海底に1年分の汚れが溜り残ってヘドロ化したためか、死滅した珊瑚礁も多かった由。時を経た今日、完全とまではいかないが、ようやく回復してきたという。

一般常識として、台風は家を破壊し、大雨で川を氾濫させる『悪い奴』。しかし、『海底の掃除役』として世に貢献していることは意外!!  同様に漁港がある湾内に設置された魚の養殖場でも、網目を通して海底に落ち積った魚糞や飼料残渣が腐敗し、環境悪化が起きて養殖魚に病気を発生しやすくする。それが台風一過で洗い流されたとの事例もあった。

また、山が多く広い平野を持たない四国各県では、毎年のごとく水不足の悩みが続いている。もちろん、高地の至るところに貯水池をつくり、渇水対策を立ててはいるが、まだまだ水量の心配は尽きない。そのため、大雨を運んでくれる台風の来襲を、時には望まざるを得ない苦しい立場にあるようだ。水を特定量使い、十分な洗浄が求められるご当地の食品工場 においても、不足は食品衛生上、死活問題となる。『思ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず』との平重盛の心境を思い出した。

変化時点での注意

旧日本軍隊で見回りチェック時によく使われた
『異常なし』との言葉がある。『変わりなきことはよいこと』であるが、今日の食品企業では常に
『異常あり』――つまり、工場の新設や改築、ラインの改良、新商品の開発なども『常とは異なる』範囲に入れたい。

たとえば、スピードアップを図るため、従来のポンプを高速ギアポンプに替えて、食材搬送を行う。その発想はよいが、食材の種類によってはテクスチャーの変化を招き、歯ざわりが変わってしまう。また、煮豆を通常の冷却から、装置内で強力な冷風により凍結すれば、衛生面では生菌数低下に有効。が、一方、表皮の乾燥度が進んで硬化し、歯が立たなくなる恐れもある。

作業者の服装にしても然り。食品への毛髪混入なきよう宇宙服のごとき密封?タイプでは、身動きも不自由な上、体温の逃げ場がないので暑苦しい。こうした状態では意識朦朧として、毛髪混入以上の大事故を起こしかねず、どこで妥協するかだ。

ともあれ、『変化がある時』― つまり、工場改築でも新商品開発でも構わない。進歩を一つの 『異常』?と考え、その設計ではどのような欠陥が潜在してくるのか? との『欠陥予想分析』を行って対応したい。ただし、一つの欠陥を発見し、これを改善すれば、さらに新しき欠陥を生ずることを忘れずに!! また、ものごとは一面だけでなしに多面から見たいものである。

食品化学新聞社の許可を得て掲載しております