成功・失敗事例から学ぶ商品開発、市場開発とそのポイント ⑫ 時間との戦い  (成功事例・・・PBドレッシングの商品開発)

食品と科学 VOL.56.No.10 平成26年10月10日発行

鈴木修武技術士事務所 鈴木修武

1. 商品開発の経過

 30数年前のことで正確には覚えていないが、会社生活ではこんなことがあった。読者の皆様も将来あるかどうかわかりませんが、本当にびっくりした。

 ある日突然に隣の研究室の後輩が顔色を変えて部屋に入ってきた。PBドレッシングの開発の責任者をやってくれとのこと。その後から先輩が来ていろいろな説明をした。人事異動があり彼は本社に行くので後を頼むとのことであった。1年前より開発していたことは知っていたが、私が担当になるとは考えていなかった。後輩に詳しく聞くと唖然とした。販売は暮れで、処方箋が決まっていなかった。ハタと考えて、あと7ケ月しかなく、賞味期限をどのように決めて証明するか。取りあえず基本的な処方の保存試験を指示した。

 少し時間が経過して、所要があり営業部に行くと、親しい営業課長が寄ってきて話があると別室に連れて行かれた。そこで驚いた。油脂会社で微生物対策は大丈夫かと問われた。課長は2~3年前に焼肉のタレで微生物のトラブルから発売中止になった商品を挙げて説得された。その商品は私の担当ではなかったから、詳しい経過が知らないが、委託先の製造工程の配管の不備が原因であった。配管が直角で前日の商品が角にたまり、洗浄しても製品に微生物が残り、夜中に繁殖し、翌日の製造時に微生物が多数混入しクレームになった。営業課長から「君が断ればこの開発は中止になる」と助言された。しかし私が断れば、大切な顧客にも迷惑がかかる。非常に悩んだがもう船は港を出ており、委託先も違うし、学生時代や環境計量士で微生物を学んだと腹をくくった。

 そこで、専門家の意見を聞き助言を求めることが良いと考えた。業界では有名な洗浄殺菌剤を売っていたT製薬会社に頼んで「微生物対策」の講義を受けた。

 先生は「トータルサニティーション」を提唱していた。この講義はあとから非常に役立った。また、研修先での同郷の味噌の先生にもアドバイスを求めた。微生物の測定にはその商品を希釈して培地に入れてそこに生育する菌の環境を整えろと助言された。餅は餅屋で作れとは人脈は金脈で、日頃より複数の専門家に親しくする必要がある。自分で微生物の本を何冊も読んでも時間だけがかかるが専門家は瞬時に優先順位を決めてくれた。

 PBを作成するのに大方のフローを表1に示した。これは商品、会社、食品業界の分野によって違うかもしれませんが参考になれば幸いである。

 表1 商品開発の手順       
内容 具体的な内容
1.自社の準備 他社リスト作成
単価、入れ目、納入条件、品種、セールスポイントの一覧表、デザインなど
自社の処方リストおよびストック処方、品種
2.委託会社と打ち合わせ 企画の方向性⇒数案
商品化する品種の決定⇒試作
3.企画案の絞り込み 試食⇒品種決定
4.商品設計 コスト計算(セット、単価)
価格帯、荷姿
推定販売数量⇒資材、生産の可能性確認
賞味期限(業界、自主規則など)
返品、配送、在庫の取り扱い
生産設備の確認
製造委託契約、製造品質基準、工程フロー
5.製造準備 試作、本生産スケジュール
瓶、ラベル、化粧箱、ネーミング、販促物など
6.販売 販売マニュアル
原明弘の資料を鈴木改変 95.9.30 食品工業より

2.ドレッシングの開発と製造

(1)ドレッシングの分類と商品開発

 ドレッシング類の分類は、多岐に渡り明確に分類できない。マヨネーズもドレッシング類の一種で、油と酢を含む調味料がすべてドレッシングで、状態によって半固体状、乳化液状、分離液状の3つに分かれる。全国マヨネーズ・ドレッシング類協会の資料を筆者が改変した表を表2に示した。 マヨネーズは食用植物油脂、醸造酢.果汁、卵が、必須原料で、着色料は使用できない。サラダクリーミードレッシングはマヨネーズ原料以外に澱粉が必須条件で、半固体状で、昔はマヨネーズの代替え品であった。最近では低カロリーのマヨネーズ的な存在である。また、食用油脂を使用しないものや加工油脂を使用するものもあり多種多様である。 

 表2 ドレッシング類の分類と範囲  平成26年当時 
ドレッシング 備考
ドレッシング

食用植物油、食酢、かんきつ類の果汁

半固体状ドレッシング

{粘度が30Pa・s(パスカル・秒)以上のもの}

マヨネーズ 卵黄、全卵(必須原材料)食塩、砂糖類など品質表示基準で原材料が決める:食用植物油重量割合:65%以上
サラダクリーミードレッシング 卵黄、でん粉または糊料(必須原材料)砂糖類など品質表示基準で原材料が決める:食用植物油重量割合:10~50%未満
半固体状ドレッシング 上記以外のもの
乳化液状ドレッシング 乳化液状(油と水が混ざった状態のもの)で粘度が30Pa・s未満のもの
分離液状ドレッシング 分離液状(油と水が分離した状態)のもの
ドレッシングタイプ調味料 食酢、かんきつ類の果汁に食塩、砂糖類などを加えた調味料でサラダに使用するもの(食用植物油不使用)
サラダ用調味料 食酢、かんきつ類の果汁に食塩、砂糖類、加工油脂などを加えた調味料でサラダに使用するもの
全国マヨネーズ・ドレッシング類協会を鈴木が改変

 PBドレッシングを作る場合はなにを作るか。どんな機械、方法があるのか、最初に決める必要がある。当初、赤、黄、緑、白、ナッツの乳化の5種類と分離の2種類加えた7種類のドレッシングをつくりこれらを組み合わせて化粧箱に入れて販売された。配合(処方)を決めるために、女性2名を男性1名には製造を担当させた。

(2) ドレッシング類の配合をどうするか

 ドレッシング類の製造では簡単なようで難しいのは、配合(処方)を決めることである。風味や外観を考慮し、基本配合を決めてドレッシングをつくり、風味試験をするにはレタスで試食する。おいしいドレッシングをつくれば、保存性が悪く、保存性を良くすれば特徴のない製品になる。良く乳化すれば味が変わるが容器から出なかったりして配合変更した経験がある。実験室での配合が製造現場では出来ず、見栄えを良くするために殺菌時間や温度を甘くすると微生物が多数検出されて大失敗したこともある。

 その後、他の店舗からも依頼されて種類も多くなった。ドレッシング類の配合例を表3に示した。これらの配合は意図的に数字を丸めており、配合比率を変更している。これらの配合から原材料、食酢、調味料、ガム類や澱粉の使い方や酸化防止剤の使い方を分かってもらいたい。例えば、イタリアンドレッシングはサラダ油 40%で、食酢、卵黄、砂糖、食塩を使い、香辛料で香りを付け、ガム類の組み合わせで乳化を安定化し、トコフェロールの添加で、油の酸化を防止をしている。

    表3 各種ドレッシングの配合例  
    マヨネーズ* サラダ フレンチ イタリアン 和風 中華 ハーブ ハーブ 果汁 フレンチ
      ドレッシング コールスロー
サラダ油   72 30 40 55 40 20 35 46 42 40
食酢   10 14 20 30 12 15 17 28 20 12
果汁           3   6   29  
卵黄   12 14   2 醤油16 醤油15        
砂糖   1 5 5 1.5     3.5 2 2  
糖類                     2.5
食塩   1.5 5 4 4 1 1.3 3 2.8 1.9 2.3
調味料   0.2   0.2   4 14     0.4 0.6
香辛料   3.3   0.3 0.5 0.1 5.5   0.1 4  
エッセンシアルオイル           0.2 ゴマ油 8 5 0.5 0.4  
香味野菜           2 ラー油2 5.5 1    
ガム類 ガム     0.5 0.3     0.1 0.1 0.1 0.3
  ペクチン               0.1   0.2
  澱粉   ジェルコール                
色素A-10                 0.1  
酸化防止剤 トコフェロール       0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1
  香辛料粉末               0.1    
  アスコルビン酸               2    
    27 30 6.6   19.1 24.8 19   42
    ジェルコール(J-オイル製):加工澱粉            
    *香料の事典より   鈴木修武ら:ドレッシング製造と植物油 より

 和風ドレッシングは配合に醤油を使い、中華ドレッシングではゴマ油、ラー油を使えば中華風になり、香味野菜(ハーブ類)を添加してエッセンシャルオイルを使えば、ハーブドレッシングになる。

 フレンチコールスローはキサンタンガムとペクチンの併用で出来た。香料、香味野菜やエッセンシャルオイルの中で、油溶性の香料と水溶性の香料の使い方が難しいと考える。身近な例だがオレンジジュースを飲むときに、初めに外観でオレンジらしい色で認識して、栓を開けるとオレンジの香りがプーンと香る。これが油溶性の香料で、飲んだ後に口の中で味と共に香るのが水溶性の香料である。ドレッシングでも全く同様で家庭で作ったのがなにか物足りないのは、これらの香料などの使い方と思われる。

 処方を起こして製造する場合の優先順位を付ければ、風味、外観(見た目を含めた)、微生物対策、賞味期限、酸化安定性、耐寒性、製造方法など多岐にわたったが、ほぼこの順序で実験した。

 乳化ドレッシングは乳化状態の安定性を見るために、1Lの装置、5リットルの装置と徐々に大きくして安定性を見た。

 また、経験者はご存知と思われるが、乳化は念入りに行えば、白くなる傾向にあり、少しであれば安定性が悪くなる。

 果汁の透明感のある赤にするためには、乳化の粒子を大きくするときれいな赤になる。きれいな赤では翌日には分離している。また、増粘多糖類の使い方は難しく、2~3種類の配合で解決した。粘度を高くすれば処方後時間と共に固くなり瓶より出なくなった。乳化は難しく時間経過と粘度、乳化状態で決まった。

 緑色のラビゴットドレッシングの処方の経過には苦労した。コンセプトは野菜類をたくさん使った緑色を出すことであった。野菜類は微生物が多く殺菌すれば良いが、加熱殺菌すれば緑色がなくなる。野菜を購入して菌を測定した結果、一般性菌数、大腸菌、真菌がかなり測定された。投入前に殺菌する方法を考えて、アルコール、次亜塩素酸ナトリウムで殺菌を考えて試験した。アルコールは効果がなく、次亜塩素酸ナトリウム100PPM程度で効果があったが残量塩素の判定をどうするか判断に困った。いろいろと考えた結果、殺菌用に高酸度酢が販売されていることを思い出して試験した。パセリを作業先日に購入し高酸度酢に浸漬すれば解決することが分かった。30年後コンサルタントになり他社の技術者が同じ方法で殺菌しているのでホットした。その測定結果を表4に示した。

 表4 サンプル名:YYXXの原材料パセリ(一例)
  一般生菌数(ケ/ml) 大腸菌群数(ケ/ml) 真菌類(ケ/ml)
カビ 酵母
原料パセリ市販品 陽性 10×1010 10×10
高酸度酢(10%)1日浸漬 ND 陰性 ND ND
次亜塩酸ナトリウム(100PPM程度) 1日浸漬 ND 陰性 ND ND
9%アルコール1日浸漬 10×10 陰性 10×10 10×10
ND…なし。微生物測定(30ケ以下と表現されるがNDする)
 鈴木修武ら:ドレッシング製造と植物油 より

 また、野菜としてパセリ、オニオン、トマト、ピーマン、オリーブなど具類がたくさんでこの分散には苦労した。CMC(カルボキシメチルセルロース)を使って分散する方法があったがイメージが悪く、ガム類の組み合わせで解決した。

(3)賞味期限の設定と実験 

 賞味期限の設定は顧客・営業および企画、開発と意見が分かれるところであるが、営業は12ケ月を希望し、開発は技術的に限界として6ケ月としたが、妥協して9ケ月の暫定規格にした。賞味期限を設定するために保存試験をする必要がある。40℃と常温保存した分離と乳化ドレッシングを選んで試験し一部の結果を表5に示した。

表5 各種ドレッシング類の保存性試験
品種 保存日数 官能試験 過酸化物価
外観 風味
酸味 香味 うま味 総合  
バジル 40℃ 1W 4.7 3.9 3.1 3.4 3.8 分離
40℃ 3W 5 4.1 3.7 3.8 4.1  
室温3ヶ月 4.9 4 3.5 3.7 3.8  
室温6ヶ月 5 3.5 2.7 3.2 3.3 4.3
チャービル 40℃ 1W 5 4.9 3.9 4.1 4.4 分離
40℃ 3W 4.9 4.2 4 4 4.2  
室温3ヶ月 4.9 3.9 3.7 4 3.9  
室温6ヶ月 4.8 3.4 3 3 3.3 4.11
ナッツ 40℃ 1W 4.2 4.4 3.9 4.2 4.2 乳化
40℃ 3W 3.9 3.4 3 3 3.2  
室温3ヶ月 4.9 4.5 4.5 4.3 4.5  
室温6ヶ月 4.2 3.7 3.5 3.7 3.5 1.24
ブラック※ 40℃ 1W 2.6 3.4 3.1 2.6 2.8 乳化
40℃ 3W 食用不可  
室温3ヶ月 3.4 3.2 2.8 3 3.1  
室温6ヶ月 2 3 2 1.8 2 0.97
対照 冷蔵庫保存 n=6 5点法 ※ブラックカーラント
鈴木修武:食品と科学 ㈱食品と科学社(2014)より

 各種ドレッシング(綿実油使用)でトコフェロールなどの酸化防止剤添加で、室温散光下、6ヶ月でも過酸化物価が約0.27~4.3前後と心配のない値であった。赤系統のブラックカーラントは40℃、室温保存でも外観や風味で合格点ではなかった。品質劣化の原因である果汁を減らし他の果汁を加える試みをしたが、適当な果汁はなく苦労した。他のカシスやボウセンベリーなどを検討した。天然色素も探して赤キャベツ、エンジカイガラムシ系などを試したが、色が悪く、表示のイメージも悪くある果汁で妥協した。今ではリンゴやイチゴの赤い果肉の商品があり自然に目が行くのは職業柄かもしれない。

 黄系統のオレンジの処方では時間の経過とともに液面の上部の部分が褐変するので、その原因を試みた。いろいろな試験をした結果、空気による褐変ではないかと推測し、脱酸素剤を入れて試験した結果、褐変が防止された。この解決には色素と果汁の変更で解決した。

 実際の流通しているドレッシング類の過酸化物価を図1に示した。

原 弘幸:食の科学 より

 通常の流通期間では過酸化物価が、高い製品は見られず、流通期間との相関関係がなかった。ドレッシングに使用される植物油は不飽和脂肪酸が多くても大丈夫と思われる。しかし、フレンチドレッシング(乳化)は流通期間を経ると過酸化物価が高くなる傾向にある。ドレッシングは、直射日光などの間違った保存方法を取らなければ、マヨネーズで禁止されている酸化防止剤を使用することが出来るので、通常の流通期間では酸化の心配はないと思われる。

(3) ドレッシング類の耐寒性の設定と実験

 ドレッシング類の耐寒性は通常サラダ油を使用するが、サラダ油のJAS規格では、0℃、5時間30分以上清澄であることがサラダ油の合格である。しかし、が冷蔵庫でしばしば凍結したと言うクレームがあり、これらの試験した結果を図2に示した。

図2 各種植物油の0℃における耐寒性
鈴木修武ら:ドレッシング製造と植物油 より

 0℃(370時間以内)保存では、なたね油、コーン油、サフラワー油、ひまわり油などは、ボケ(冷却したときに濁る現象)も凍結も出なかった。その反面、大豆油、綿実油、米油などはボケや凍結が出た。これらより、冷蔵庫内では、0℃付近で連続して冷却されれば、クレームの対象に成りうる。5℃付近では、オリーブ油以外ボケ、凍結はなかった。これらの油種の違いによる差は、主に脂肪酸組成や不ケン化物などの違いと考えられる。ドレッシングの場合は、油相に水が若干あるので油のボケなどとは違い少し早いと思われる。

(5)本生産の前の仮生産

 処方を確定し、本生産に入る前に販売するための原材料で生産し、品質基準をクリアするために仮生産をする。生産後、瓶詰めや段ボール詰めをし、原材料の購入から生産、包装、保管まで順調に推移し流れが正常かどうか確認した。

 ところが予定にない問題が起こった。企画部から品質基準、特に微生物測定して基準に合格すれば顧客に出荷したいという指令が来た。品質基準を満たしており出荷しようとしたときに、もう一度商品を見てから出荷することにした。保管倉庫に行き、段ボールを開けて調べたが異常はなかった。時間が経たので帰ろうとし、もう一度見ようと思って調べた結果、浮いていた野菜の上にカビの塊があった。この商品は委託先の処方にはなく、独自の商品であった。カビや酵母を含めた真菌類は菌数が少ないので通常の微生物測定では検出されないことが考えられる。微生物対策の再検討することが必要になった。

3.ドレッシング類の微生物対策

 試作品からカビ類が出たことから微生物対策をすることになり購入の原材料、保管場所、生産現場の微生物を測定した。

(1) 原材料類の衛生評価の具体的な方法と測定

 使用している原材料は納入業者から品質規格書をもらい、原材料の性状などを把握するが、商品にはバラツキがあるので、微生物測定は必要な項目である。測定項目と種類は品質規格書と同等であるが、菌数がない材料がほとんどないので、品質を下げずに殺菌や静菌することが望ましい。

 具体的には、生野菜は加熱すれば、色や味が変化するので、加熱殺菌条件と品質劣化をあらかじめ試験して把握しておく必要がある。

 それでも菌数が減らない場合は、殺菌剤や高酸度酢で浸漬して殺菌・静菌をする方法もある。下記に一例を示したが、初発菌数や真菌などの種類が違えば効力も違う。

 各種原材料の測定結果を表6に示した。一般的には原材料は微生物が多く存在するが、香辛料、各種香料、乾燥香味野菜、酢漬け野菜は、殺菌、除菌済製品を購入すれば、少し高いが便利である。また、加熱により著しく風味劣化するものは、最終段階での添加が望ましい。

 表6 原材料の微生物の測定結果
     サンプル名:YYXXの原材料
  一般生菌数(ケ/ml) 大腸菌郡数(ケ/ml) 真菌類(ケ/ml)
カビ 酵母
ガム ND ND ND ND
食塩 ND ND ND ND
香辛料 ND ND ND ND
砂糖 ND ND 14 ND
生アーモンド 10 ND ND ND
煎りゴマ 7 ND ND ND
ローストアーモンド ND ND ND
調味料(ビーフ) ND ND ND ND
調味料(カツオ) 42 ND ND ND
鈴木修武ら:ドレッシング製造と植物油 より

 酢、砂糖、食塩、調味料など加熱してもあまり加熱劣化しない材料は、十分加熱すれば良いと考える。  

(2) 製造工程の洗浄・殺菌と衛生評価の具体的な方法と測定

 製造工程内の環境微生物測定を行うときに、あらかじめ計画書を作り重要なポイントを測定する必要がある。その時に測定場所、測定項目(空中浮遊菌、フキトリ法、菌の種類など)を決定する。

 具体的には測定場所は資材置き場、乳化機、予備加熱器、配電盤、流し台、作業台や充填機などの付近の空中浮遊菌の測定が必要である。

 また、フキトリ試験は作業台、資材置き場の台、乳化機や充填機の内部、タンクの出口などを10×10cmをフキトリ測定する必要がある。

 菌の種類は一般生菌数、大腸菌郡数、真菌類(カビ、酵母)や必要に応じて他の菌を測定する必要がある。具体的な空中浮遊菌の測定結果を表7に示した。この基準によれば、資材置き場の真菌は改善を要し、他は、総て合格である。このように空中浮遊菌を測定すれば、カビなどの汚染から免れることが出来る。具体的なフキトリ試験の測定結果を表7に示した。

 表7 工場内の空中浮遊菌の測定結果
サンプル名:Y工場の環境測定(空中浮遊菌)    
  一般生菌数(ケ/ml) 真菌類(ケ/ml)    
カビ 酵母    
A(入り口) ND ND ND    
B(乳化機) 1 1 ND    
C(作業台) 1 2 ND    
D(作業台) ND 1 ND    
E(流し台) ND 3 ND    
F(資材置き場) 13 31 ND    
G(資材置き場) 13 22 ND    
9cmのシャーレで、10分間放置    
ND…検出されず。微生物測定では、30ケ以下であるがNDとした。
(以下同様)鈴木修武ら:ドレッシング製造と植物油 より

 

 表8 工場内のフキトリ測定結果
サンプル名:Y工場の環境測定
  一般生菌数(ケ/ml) 真菌類(ケ/ml)
カビ 酵母
A(バケツの内側) ND ND ND
B(充填機の出口) ND 1 ND
C(パイプの内側) ND 2 ND
D(資材の作業台) 15 1 ND
E(流し台) 765 ND 450
F(タンクの出口) 2370 375
G(制御板の上) 10920 3195
H(工場内作業台)  ND 60 ND
10×10 cmをフキトリ30倍希釈
鈴木修武ら:ドレッシング製造と植物油 より

 食品機械や器具などは作業終了後水洗したり、煮沸水洗したり、取り外しが出来る器具・部品など煮沸水に入れて殺菌して終了する。しかし、微生物学的には、作業開始前にもう一度洗浄すれば、効果があがることは、周知の事実である。

 器械・器具を使かわないと取り外しが出来ない構造は、作業員の負担が増し、手抜きされる場合があるので、手でも出来る簡単な構造に改善出来ることが望ましい。また、微生物のたまりやすい構造は、改造を考えることも必要である。

4.おわりに

 PB商品があまりなかった時代に、私たちは植物油の販売促進のためにつくった商品を紹介した。その後、多くの顧客より依頼されたので一応成功と言えよう。かなり時間が経てからある雑誌社からドレッシングの原稿を頼まれ公表したときに、多くの営業マンからこの原稿や処方箋を頼まれて送った。また、実際食品製造者にも説明に行った。食品の展示会でその会社がドレッシングを販売していた。ドレッシングを売っていた専門製造者だけでなく、どこの食品会社でも製造できるようになった。

 私たちの先に述べた商品は同業他社へも普及しているので、技術の広がりを実感した。他の開発者には、オリジナル商品とコピー商品と品質や性能が違うかと問われるとコピー商品はオリジナルに勝てないと言っている。オリジナル商品はやはり一日長があるが常に改良することが大切である。開発者の端くれとしてはオリジナル商品をつくりたい気持ちを持っている。PB商品が世の中に数多く流通しているが、私にとってドレッシング類は油以外に水を使うので異種文化であり非常に勉強になった。
 最近、ある国から技術指導の要請があり私たちが開発したコピー商品を頼まれたが断った。今年の国際食品工業展で顧問先のブースで説明員をしていたが、韓国、中国、台湾、インドネシアなどの訪問客があり、グローバル化を肌で感じた。ある国はコピー食品で、今苦境に立たされているが、会社もオリジナル商品の開発で開発者自身が考える仕事を促す必要性を実感した。皆様どのように思われますか。

 

参考文献
鈴木修武・加藤昇:ドレッシング製造と植物油 杉山産業化学研究所年報(1999)
鈴木修武:ドレッシング油の上手な使い方 NO.536 p36 フードリサーチ(2000)
原明弘: 95.9.30 食品工業 株式会社 光琳 (1995)
原弘幸:食の科学 通巻143 p83 株式会社 光琳 (1990)
全国マヨネーズ・ドレッシング類協会:ホームページより