新型コロナウイルスをめぐるデマ・便乗商法

食品化学新聞「食品技術士リレーシリーズ」2020年5月14日掲載

 木幡 守  技術士(生物工学部門)(木幡技術士事務所)

 中国で始まった新型コロナウイルスによる肺炎騒ぎは世界中に蔓延し、日本でも患者が急激に増えている。政府は遅ればせながら4月7日、東京など7都府県に緊急事態宣言を発令し、さらに数県が追加されそうである。1年先送りとなった東京オリンピック2020も、実現可能であろうか。

デマ・便乗商法に注意

 先日の朝日新聞に、消費者庁が3月10日づけで、「新型コロナウイルス予防に効果あり等の広告表示に注意!!」として、当該業者に表示に関する改善を要請し、一般消費者への注意喚起を呼びかけた、という記事が出ていた。

 ネットで探索したところ、消費者庁の要旨は「今般の新型コロナウイルス感染症の拡大に乗じ、インターネット広告において、新型コロナウイルスに対する予防効果を標ぼうする健康食品、マイナスイオン発生器、空間除菌商品等に対し、緊急的に景品表示法(優良誤認表示)及び健康増進法(食品の虚偽・誇大表示)の観点から改善要請等を行うとともに、SNSを通じて一般消費者への注意喚起を行った」とあった。

健康食品

 食糧庁の改善要請によると、健康食品(カプセル、錠剤、粉末等)では下記の40商品が、それぞれの「効果」とともに掲げられていた。すなわち、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、亜鉛、マグネシウム、セレン、α-リポ酸、N-アセチルシステイン、グルコサミン、β-グルカン、梅肉エキス、オリーブ葉エキス、マヌカハニー、タンポポ茶、タンポポエキス、あおさ、スピルリナ、霊芝、ポリフェノール、天然藁納豆、などお馴染みの商品があり、それらの「効果」はまとめると、「新型コロナウイルスへの感染予防、症状軽減、ウイルスの活動抑制など」であった。

 新型コロナウイルスが世の中に登場して間もないことであり、その特性はまだ明らかになっていないし、誰でも自由に取り扱える段階ではない。民間企業が予防効果をうたうなどはまったくの「でっち上げ」にすぎないことは自明である。

マイナスイオン発生器とイオン空気清浄機

 また、マイナスイオン発生器3商品の「効果」は、「新型コロナウイルス対策、新型コロナウイルスに有効、新型コロナウイルスはマイナスイオンで死滅する」であり、イオン空気清浄機3商品の「効果」は、「身に付ける、あるいは首にかけるだけで空間のウイルスの除去・除菌に、新型コロナウイルスの除菌 殺菌 消毒に、新型コロナウイルスなどの予防に、塩素成分で空間の除菌に」であった。こんなことで解決するなら誰も苦労しない。

 マイナスイオンは何かと利用・宣伝されることが多いが、物理学者は科学的根拠ナシとその存在を認めていない。消費者は、マイナスイオンや「ナントカ水」はエセ科学領域において代表的な案件であることを認識してほしいものである。

消費者庁の姿勢

 消費者庁は、現時点で、当該健康食品、マイナスイオン発生器、空間除菌剤等の商品については、当該ウイルスに対する効果を裏付ける根拠は認められていないのでご注意ください、と注意喚起している。消費者庁の要請を受けて上記の健康食品40商品では、表示がほぼ改善されたとのこと。取りあえずは解決したものの今後も起こりうることであり、消費者庁は監視指導を続けるとのこと。

 消費者庁が注意喚起した例以外にも、SNSでは、「新型コロナウイルスは熱に弱く、26~27℃のお湯で死滅するのでお湯を飲めば良い。」、「トウガラシやニンニクが予防にいい。」、「アイスクリームなどの冷たい食べ物を避けると感染しににくくなる。」、「花崗岩の放射線は当該ウイルスを死滅させる。」など、さまざまのニセ情報が飛び交っているようだ。

 NHKで、いわゆる「振り込め詐欺」あるいは「ニセ電話詐欺」に対する注意喚起の放送をよく見るが、紹介される詐欺の巧みさには、犯人達がよくぞそこまで考えるのか、と驚かされることがある。今回の新型コロナウイルスの予防効果を標ぼうする商品等の不当表示も、同様でただただ「商魂のたくましさ」にはあきれるばかりである。

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