バングラデシュの食品産業

食品化学新聞「食品技術士リレーシリーズ」 2020年1月30日 掲載

江本三男 日本食品技術株式会社 代表取締役 
技術士 農業部門(食品製造)

キーワード:バングラディッシュ、食品工業、食品流通、バリューチェーン、日本の商機

はじめに

 今回、バングラディッシュを訪問して、食品加工企業を見学する機会を得たので報告する。同国は、今後の経済の発展が大きく期待されており、なかでも食品業界は、産業の基幹である農業との関連で、最も可能性を秘めている業界といえる。ところで、筆者は、現在までに国内での完全栄養食品の開発と商品化の業務を長年経験してきたが、これらの国内商品の海外展開として、台湾・タイ・インドネシアへの商品開発と工場設備立ち上げを行ってきた。さらに、近年では、インドとカンボジアでレトルト食品と菓子の商品化を行った。今回の、バングラディッシュの訪問は、筆者の今までの経験の延長線上の業務で、食品技術者としてプロジェクトに貢献できる領域であると考えている。

バングラデシュの国情と食品産業

 バングラディッシュは、国の面積が日本の約4割、人口は日本の約1.3倍の1億6,365万人(2018年)である。首都は、ダッカでベンガル人が大部分を占めており、言語はベンガル語でその識字率72.9%といわれる。宗教は、イスラム教が88.4%である。食品産業の概況として、加工食品市場の規模は、年率17%の成長により、2018 年には 212 億ドル(約 2.3 兆円)に成長すると見込まれる。一方で、日本の加工食品市場は22兆円程度であるから1/10の規模といえるが、バングラデシュの人口は、日本の1.3倍であり急成長が望める市場といえよう。市場は、伝統的な精米や小麦の製粉、からし菜の搾油などがあり、輸出用として冷凍エビ・魚がアパレル製品に次いで大きな輸出品目になっている。近年は拡大する国内市場に向けて、乳製品、果実・野菜の加工品、肉・魚の加工品などが生産高を伸ばしている。他に、国産のアイスクリームに新規参入が相次いでおり、麺・パスタ、ビスケットやチップス類、ジュースなどの国内需要も高まっている。

 食品加工産業が拡大にするに伴い、野菜や肉などの原材料の品質と安定的な調達が必要となる。バングラデシュでは、農村部における農水産物を保存・保冷する倉庫などのコールドチェーンのインフラが未整備で、輸送時における保冷車も普及していない。このため、生産地でのポストハーベスト・ロスが大きく、コールドチェーンの構築は喫緊の課題となっている。現在、食品加工業各社で自社のコールドチェーン構築に取り組んでおり、全国にコールチェーンを展開する計画を遂行中である。

 バングラデシュでは、国民が食品に品質と安全を求めるようになり、各社とも製造の品質管理や安全面に、戦略的に取り組むようになってきている。上位の会社は、いずれも国際標準のISOの認証、BRC(英国小売協会)の認証、HACCP(危害要因分析重要管理点)の認証などを取得し、国際スタンダードであることをアピールしている。また、製造においては、大手ではオートメーション化が進んでおり、欧米の設備を導入し、国際水準の管理手法を取り入れる傾向にある。

まとめ

 バングラデシュの1.6 億人の胃袋を狙う食品加工市場は、日本企業にとっても自社製品の新市場となる。すでに欧米で認証をとっている企業と組み、バングラデシュで生産された製品を日本を含む海外へ輸出するビジネス拠点としても可能性がある。また、食品加工用の機械や計量機器メーカーなどにとって、拡大する食品加工産業は自社 製品を売り込む好機である。バングラデシュでも品質を重視する傾向が強くなってきてお り、日本メーカーに対する現地企業の期待は大きいので、日本企業にとっての大きな商機といえる。今回、著者が日本からの訪問ということもあり、日本への製品輸出に熱意を感じた。また、バングラデシュは、イスラム教徒の国であり、加工食品は原則的にハラールの規格を満たしており、筆者のハラール監査員の立場としても、日本のようにイスラム教徒の滞在者や、拡大するムスリム観光客に提供するハラール仕様食品として輸出することが考えられる。

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